おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第6話

街を出て20分ぐらいの所にある平原の所にやって来た俺は、周囲を見渡しながら辺りをうろうろと歩き回っていた。

(訓練所で教わった事が確かなら、目当てのモンスターはここら辺に生息してるはずなんだが……まったくと言って良いほど遭遇しないな。)

(そうですねぇ……運が良いのか悪いのか分かりませんが、とりあえずここで休憩をしながら様子を見るって言うのはどうですか?この場所なら、何処から奇襲されても問題なく対処できますからね。)

(あぁ、そんじゃあ買ってきた武器の扱い方を復習しながら待つとしますかね。)

俺は腰に差してたブレードを抜き出すと、軽く振り回しながらちゃんと手に馴染むのか確認してみた………うん、やっぱ初心者用ってだけあって扱いやすいな。ただ、あんまり使いすぎるとすぐ使い物にならなくなるらしいから注意しておかないとな。

(……それにしても、こうやって何かを殺す為の武器を振り回す日が来るなんて想像してなかったな。)

(まぁ、これまで普通に生きて来たご主人様には無理もない事だと思います。ですが生活していく為には仕方ない事だと思ってください。)

(一応、努力はしてみるけどさ………こっちに来てまだ数日だぞ?そんな簡単に割り切れたら苦労しないっての。しかもいきなり実践って………色々と怖すぎるわ。)

(それじゃあ斡旋所に戻ってパーティを募集しますか?)

(いや、そっちの方が断然怖いので却下だ。)

(はぁ……ご主人様の怖い物の基準が分かりませんよ……)

(何言ってんだ、俺の怖い物なんて物凄く分かりやすいぞ。)

(……それじゃあご主人様は、一体何が怖いんですか?)

(若くて美形のリア充が怖い。)

(まったく……どうしてそんなに怖いんですか?)

(まぁ簡単に言っちまえば、学生の頃にぼっちだった時のトラウマって感じだな。
そんでそれは社会人になった後も変わらなかった………要するに、俺は人付き合いが物凄く怖いんだよ!特に若い奴らは何を考えてるのか全然分からないからな!それに加えて何故だかあの街に居る若い奴らは何故だか全員美形だし、パーティもハーレムみたいな感じで構成されてるし……とにかくそんな奴らとは関わりたくない!!)

(な、なんて情けない事を堂々と宣言してるんですか……)

(やかましい!そん訳だから俺はパーティを組む気はない!)

呆れた様子のマホのため息を頭の中で聞きながら武器を振り回していると、小さな唸り声が微かに聞こえて来た!?

(……マホ、聞こえたか?)

(は、はい……間違いなく……)

つ、ついに来たのか……よーし…慌てず騒がず冷静になって………大丈夫だ、俺はやれば出来る子だ!気合を入れて行くぞ!!

ブレードを握る手に汗を感じながらゆっくりと周囲を見渡してみると、少し離れた場所で牙をむき出して唸っているモンスターの姿を発見した!………うわぁ、殺す気満々って感じで物凄く睨まれてるんですけど!?

(マホ!のモンスターの特徴は3匹の群れで行動してるって事だったよな!だったら残り2匹が何処かに潜んでるはずだ!見つけたらすぐに俺に教えてくれ!)

(わ、分かりました!お気をつけて!)

(あぁ!)

ブレードを握り直して次の行動に移りやすい様に姿勢を低くしたその直後、眼前の
モンスターが牙を剥き出しにして一直線に向かってくると俺の足首を目掛けて即座に飛び掛かってきやがった!

なるべく無駄のない様にその攻撃をギリギリの所で避けた俺は、入れ違い様に歯を食いしばりながらブレードでモンスターの体を斬り付けた!!

その瞬間、小さく鳴き声をあげたモンスターは地面に力なくぶつかると血を流してそのまま動かなくなった………や、やったのか?

(ご主人様!他の二匹が姿を現しました!前後から同時に向かって来ます!)

(チッ!落ち着く暇もねぇのかよ!!)

そう言えばこのモンスターは最初の1匹の足止めが失敗した場合、狙ってる獲物を一気に仕留める為にまとめて襲い掛かって来るんだったな!

俺は挟み撃ちの形になるのを避ける為にブレードを構え直して目の前から向かって来るモンスターを目掛けて走って行くと、喉元に飛び掛かって来た瞬間を見計らってスライディングをしてモンスターの下を潜り抜けた!

そしてその勢いのままバッと振り返ってモンスターが揃っているのを確認すると、2匹が離れない内に魔力を込めながら地面に両方の手の平を叩きつけた!その直後、モンスターの真下に魔方陣が出現してそこから土で造られた無数の槍が射出された!

………その後に地面に横たわった2匹のモンスターを目の当たりにした俺は、浅い深呼吸を何度も繰り返しながらゆっくりと立ち上がった。

「………はぁっ!!!あーマジで怖かったんですけど!ってかマジで死ぬかと思ったんですけど!!あぁーやべー!!」

全身に緊張から溢れ出した汗を感じながら一気を息を吐き出した俺は、感じた事を全力で声に出してぶちまけていった!

いやぁ、訓練所でモンスターの特徴と戦い方をしっかりと教わったんだけどやっぱ実際に命を懸けて戦うとなるとメチャクチャ怖いな!でもなんとか体も動いてくれたから、良かった良かった!あーマジで良かった!!

(ご主人様!お怪我はされていませんか!何処か痛い所はございませんか!!)

(ぐぁっ!?お、お前の大声が頭に響いてくらくらするが……まぁ、とりあえず怪我はしてないよ。)

(ほ、本当ですか?)

(あぁ、宿屋に戻ったらバレるよな嘘を吐く必要が無いだろ。)

(そ、それもそうですよね……はぁ、本当に良かったです……命懸けの戦闘を初めて経験する人は足がすくんだりして動けなくなるって教わってましたから、ご主人様がそうならなくて一安心です。)

(あぁ、本当にな……さてと、それじゃあ倒したモンスターをさっさと納品所に送るとしますかね。)

ブレードを鞘に納めてモンスターの亡骸に近寄って行った俺は、腰にぶら下げてた袋の中から少し大きめの黒いネットを取り出して亡骸の上にそっと被せてみた……‥するとほんの数秒で亡骸は霧散して、納品所に送られて行くのだった。

(うーん、初めて使ってみたがやっぱ便利だなこのネット。魔力を込めれば伸縮自在で上から被せただけで自動的に納品してくれるもんなぁ。最初は自分で剥ぎ取ったりしなきゃいけないのかと思ってたけど、こりゃ楽で良いわ。)

(一昔前まではそうしてたらしいですけど、やっぱり専門の方が処理した方が効率が良いですからね!こういう所の技術は本当に凄いと思います!)

(まったくだな……よしっ、そんじゃあ次のモンスターを探しに行くとしますかね。ある程度は命懸けの戦闘に慣れていく必要があるからな。)

(はい!それじゃあさっそくいきましょうか!)

……それから数時間掛けてモンスターとの戦いを何度も経験した俺は、陽が傾いてきた頃になってようやく街に戻って行くのだった。

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