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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第1話

「そ、そうだ!とりあえず外に出てここが何処だか確認しねぇと!」

俺は持っていた手紙を床に放り投げると、近くにあった扉を開けると急いで部屋の外に飛び出していった!

「……おいおい、マジで何処なんだよここは?」

目の前に広がる西洋風の造りをしてる玄関っぽい場所を見渡して顔をひきつらせた俺は、外に通じる朽ちた木製の扉を見つめてそれに駆け寄って行った!

「だ、大丈夫だ……そう、きっと大丈夫だ………」

自分に言い聞かせる様にそう呟いた俺は、グッと力を込めて扉を押してみた………とりあえず外から塞がれてるとかって事は無かった様で、そんな事にホッと胸を撫で下ろしながら俺は外に出てみたんだが………

「う、嘘だろ……」

俺は周囲を見渡してここが森の中である事を認識して思わずそう呟いた後、さっきまで居た建物を外から眺めてみた……うん、どっからどうみても立派な廃屋だよな。

「はぁ……マジでどうなってんだよ……まさか本当に異世界に来たって言うのか?」

膝に手を置いてがっくりと肩を落とした俺は、そのままの状態でしばらく動く事が出来なかった……だってあんな適当なノリで願った事が実際に叶うなんて、誰が予想出来んだよ!!しかもあの手紙の事務的な文面!思い出しても腹が立つ!何が存分に異世界生活をお楽しみくださいだ!冗談じゃねぇっての!楽しめるんだったら……?

「あれ、そう言えばあの手紙に確か………そこそこの好条件って!」

ハッとした俺は急いで建物の中に駆け込んでいくと、床に捨てた手紙を拾い上げて書いてある文面をもう一度確認してみた!

「や、やっぱりそこそこの好条件って書いてある!…………でも、そこそこの好条件ってのは一体何なんだ?……まさか既にそれらしい変化が俺の体に!?」

……うん、いつも通りだらしのない腹の出たおっさんの体ですね!……だとしたらもしかして、宝箱の中にそこそこ好条件になる何かがあるのか?よしっ、とりあえず中身を全部出してみるとするか。

俺は宝箱の中から布製の袋と服の様な物や靴を取り出すと、近くにあったテーブルの上に並べて置いてみた。そして他にも何かないかと宝箱の中を覗き込んでみると、手紙の様な紙が入っていたのでそれを手に取って読んでみた。

「えーっと、袋の中に入ってるそこそこ好条件になる為のアイテムの説明書?
袋ってのは……多分これの事だよな……中には……スマホと財布と……気色悪い色の液体が入った小瓶………意味が全然分かんねぇな。」

袋の中を全部取り出して服の様な物の上に置いた俺は、使い方を知る為に説明書に書かれて事に目を通してみた。

【袋の中に入ってるそこそこ好条件になる為のアイテム説明。

①『スマホ』 これにはこの世界の基本情報やチュートリアルが入っています。

②『小瓶』 これにはこの世界で得られる経験値が10倍になる為の液体が入っています。他にも肉体を変化させステータスを上昇させる効果と、異世界の文字や言語を理解する為の効果も含まれています。
※副作用により体に少し痛みが走る恐れがありますが、ほんの一瞬ですのであまり気にしないでください。

③『財布』 これにはこの世界の通貨であるG《ゴールド》が10万円分入っています。更に財布の中に入っている小切手を街にある銀行に持っていけば、100万Gが入った通帳を貰う事が出来ます。

それではそこそこ好条件の異世界生活をお楽しみください。】

「……そいやっ!!」

俺は読み終わった手紙を思いっきり握りつぶすと宝箱の中にぶち込んだ!あぁもう何がお楽しみくださいだこのバカ野郎!あんな軽いノリの願いを叶えるじゃねぇよ!マジで願いが叶うなら異世界転移するよりハーレム的な事を願うわちきしょう!!

「って、今更後悔したって遅すぎるよなぁ………はぁ、しゃあない!異世界物で元の世界に戻れる事なんてほとんど無いし、諦めて腹をくくりるしかないか!」

俺は両頬をパンパンと叩いてふっ息を短く吐くと、自分自身に気合を入れた!
だっていつまでも悲観してクヨクヨしていると、何だかシリアス多めな展開が待ってそうな気がするからな!別にアニメとかラノベで見てる分には嫌いじゃないんだが、自分がその当事者になるのは絶対に御免だからな!絶対にだ!

「よーし!そんじゃあとりあえずスマホでも確認すっか!」

俺はテンションを無理やり上げてスマホを手に取ると、近くにあった3本脚の椅子に座って電源を入れて表示された画面を確認してみた。するとそこには、俺の名前とステータスらしき項目が幾つか表示されていた。

「うーん、こういうのがあるって事はやっぱゲームに近い異世界なのか?」

そんじゃあモンスターとか普通に存在してんのかねぇ……あー戦いたくねぇな!
この齢になると傷の治りとか本当に遅いんだよ!若い頃とは色々違うんですから!
だから絶対に傷跡とか残したくねぇ!だって俺にはマジで似合わない気がするしな!

「……それにしても、こうしてみると俺のステータス貧弱すぎじゃね?まぁレベルも1だし学生時代はずっと帰宅部だったからしょうがないとは思うんだけど……流石にこれは雑魚すぎな気がするんですけど……」

画面に表示されてる絶望的に低い自分のステータスを目にして軽くショックを受けながら適当にスマホを弄っていると、この世界の事や施設に関するっぽい項目が多数用意されている事に気が付いた……ついでにモンスターに関する事も用意してあったので、それを見て更に気分が落ち込む事になったんだけどな………

「……ってか、確かにこういう説明も必要ではあるんだけどマップとかはねぇのか?この場所が何処なのか知りたいし、近くに大きな街がないか確認したいんだが……」

幾つかの項目に軽く目を通しながらスマホを操作して行くと、マップの絵の様なアイコンを見つける事が出来た。何となくそれをタッチしてみると、この場所を中心としたっぽい地図が画面いっぱいに広がっていった。

「よしっ、これで周囲の状況が確認出来るな……おっ、この場所の概要まで用意してあるぞ。どれどれ……ここは新米冒険者がレベル上げをする為の森です……か………それじゃあきっと、モンスターもわんさか出るんだろうな!…………最悪だ。」

概要を読んで軽く絶望しながら地図をあちこちスクロールしていると、森を抜けた先に大きな街らしき場所を見つける事が出来た!

えっと、ここからこの街まで向かうには……徒歩で40分?!そんなに歩いてたら確実にモンスターに襲われる気がするんですけど……ってそうだ!得られる経験値が10倍になって更にステータスが上がる薬があったんだった!

パチンッ指を鳴らして椅子から立ち上がった俺は意気揚々と小瓶を手に取ると……そっと小瓶を机の上に戻してため息を漏らした……

「はぁ……何でこんな濁った色してんだよこの薬……マジで飲む気が失せるわ………でも森の中でモンスターに襲われたりしたら、貧弱ステータスの俺はあっと言う間に殺されて終わりだよな……つうか文字や言語が理解出来ないと、そもそもこの世界で生きてく事なんて出来ないだろうし……あぁもう覚悟を決めるしかねぇ!」

俺は小瓶を強く握りしめると、ギュッと目を閉じて一気に薬を飲み干していった!その瞬間、俺の全身にピリッとした痛みが走った!ぐっ、これから激痛が来るのか!だが、耐えてやるぞ!………そう意気込んでしばらく待っていたんだが、それ以上の
痛みが襲い掛かって来る事は無かった……

「……え、マジで?マジでこれだけ?……拍子抜けにも程があるんだが……それとも薬が不良品だったのか?……とりあえずステータス確認して……うおっ!ステータスがさっきの倍以上になってるんですけど!?ってか俺の体が細マッチョになってる!今までだるんだるんの情けない身体だったのにマジかよ!ひゃっほう!」

腹についていた贅肉が消え去っていて、代わりにイケメン主人公の様なバキバキの引き締まった体を手に入れた俺は嬉しさのあまり何度もガッツポーズをしていた!
いやぁ、もうこれだけでも異世界に来て良かったと思えるレベルなんですけど!

「あっ、そう言えば服の方はちゃんと見てなかったな。」

俺は喜びを押さえつけながらテーブルの上の服を手に取ると、どんな感じの物なのか確認してみた……見た目はゲームに出て来る村人が着る感じの布の服だが、触ってみた感じかなり良い素材を使ってそうだな……それにかなり丈夫そうだよな。

「よしっ、とりあえずこの服に着替えておくか。これが用意されてるって事は、俺が着てる服はこの世界じゃ浮くって事なんだろうしな。」

そう考えて服を着替えていると、ズボンの下に少し大きめの布製の袋が置いてある事に気が付いた。俺はその中に元々着ていた服、スマホや財布を仕舞いテーブルの上に置いて近くにあった割れた姿見で自分の姿を確認してみた。

「………これで街に行く分には問題ないんだろけど、やっぱり武器は用意されてないみたいだよなぁ。」

まぁ、そこそこ好条件って言うのがこういう事ですって解釈ならそう願っちまった俺の責任ではあるんだが………それならちょっと性能が良い武器をおまけで用意してくれても良かった気がするんだけどな。

心の中で誰に言う訳でも無い愚痴をぼやいた俺は、念入りにストレッチを始めた。
いくらステータスが強化されて肉体が見違えるぐらい変化したからって、こっから街まで全力で走るとなると肉離れを起こす可能性があるからな。

もしそんな状態に陥った時にモンスターに襲われでもしたら……異世界に来た初日にデッドエンドを迎えるなんて展開は御免だから、しっかりとやっておかないとな!

………それからしばらくして、ストレッチを終えた俺は袋の紐を肩にかけて部屋を出ると玄関の扉の前で深く深呼吸をした。

「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ…………よしっ!」

頬を軽く叩いて気合を入れた俺は扉をぶち破って外に出て行くと、森を抜け出す為に全速力で走り始めた!森の外までは一本道だからモンスターにだけ気をつけば後はどうとでもなる!!

……そう意気込んで出発してから数分後、俺は自分の体の変化に凄く驚いていた!だってこれまでは1階から3階に上がっていくだけで息切れしていたのに、今は全然息苦しくないからな!しかもこれだけ走ってるのにスピード落ちない!マジで最高!

そんな感じで喜びを噛みしめながら走り続けて更に数分後、あっと言う間に森の外に到着する事が出来ていた!

「はぁ……はぁ……こ、ここが異世界か………」

息を整えながら目の前に広がる草原と青い空、そして遠くの方に見える大きな街を見た瞬間……俺は思わず感嘆の声を出しながら自然と笑ってしまっていた。

「は、ははっ………何と言うか……マジで異世界に来たんだな……」

改めて自分が置かれている現状を再認識した俺は、静かに目を閉じて大きく伸びをしながら深く息を吸い込んだ。

「………よしっ、そんじゃあまずはあの街に行って拠点となる宿屋を探すとするか!そんでその後は……とりあえずスマホにでかでかと表示されてたチュートリアルって項目を見ながら考えるとしますかね!」

俺は袋を担ぎ直すと鼻歌を歌ってのんびりと歩きながら街を目指して行った。
さて、これから俺の異世界生活の始まるぞ!頑張って行くとしますか!!

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