《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
28-5.終幕
長い、戦いだった。
バトリが殴り付けてきて、ロンが炎で焼き付くす。
一方で、ノウゼンハレンとディヌも争い続けていた。
はじめてバトリに出会ったのは3年以上も前のことだ。たしか都市竜クルスニクで、休暇を堪能しているところに、ハマメリスから命令を受けたのだ。そして、バトリと戦うことになった。
あのときからもしかすると、長い夢を見ていたのではないか――と、思った。
ずっと、ずーっと、バトリと戦い続けていて、卵黄学園に行ったことや、帝都竜ヘルシングに避難したことや、地上都市で暮らしていたことなど、すべては夢のなかの出来事だったのではないか、という錯覚すらあった。
そんな錯覚を感じたのも、《不死の魔力》がロンの体内に入っているから、かもしれない。いずれはロンはゾンビになる。
時間はもう、あまり残されていない。
シャルリスのもとに行けば、治癒してもらえるだろう。が、今はこの場所を離れるわけにもいかない。
都市竜ダンピールはすでに老いているが、最後の死力をふりしぼったのか、ドラゴン・ゾンビにかぶりついていた。
2匹の巨大なドラゴンが争う姿は、凄まじいものがあった。まるで大陸と大陸の衝突である。
その勢いでバトリが、ドラゴン・ゾンビの頭部から落っこちてきた。
好機。
落っこちたバトリに、ロンはかぶりついた。バトリのカラダを咀嚼して呑みこんだ。
(やったか?)
「やったか、と思ったじゃろう」
と、すぐ近くで声がした。
ドラゴンになっているロンの腹から、バトリが顔を生やしていた。
「オレに、寄生したのか」
「はじめから、これが出来れば良かったんじゃがな。ドラゴンの血を攻略するのに、時間がかかったわ」
やれやれとでも言いたげに、バトリは頭をふっていた。
「やってくれる」
ひきちぎったのだが、今度は翼から顔を生やしてきた。
「いひひっ。ムダじゃ。ムダじゃ。こうなったワシは、そう簡単には引きはがせん」
「いちおう地上都市には、分離する薬が残されているがな」
「それまでには、ワシはオヌシを殺せるぞ」
「なるほど。オレの負け、ってわけか。いちおうバトリの望みを聞いておこうか」
「何度も言うてるじゃろうが。ワシの望みはドラゴンと人類の滅亡。この世界に真の終焉を与えることじゃ」
「世界の幕引きってか」
「オヌシをゾンビにして、ワシの手駒にしてしまえば、もうそれも叶ったようなものじゃがな」
そのときだ。
ウォリャァァァ――ッ、と獣の咆哮が聞こえてきた。
ディヌのカラダが空中に投げ飛ばされていた。ノウゼンハレンが跳びあがって、ディヌの腹にコブシを叩きこんだ。
そのまま落下していく。
落下したさきには、ドラゴン・ゾンビのカラダがあった。
ディヌのカラダが、ドラゴン・ゾンビの背中に叩きつけられていた。ドゴォ、と大地が揺れるような音が響いた。
そしてディヌのカラダがはじけ飛んでいくのが見えた。
ノウゼンハレンのコブシは、イーヴァルディの大槌に匹敵するほどの破壊力がある。人類に勝利をもたらすコブシである。
弾けとぶのはディヌのカラダだけかと思いきや、その土台となったドラゴン・ゾンビもろとも飛散していた。
「あやつ、とんでもないバケモノじゃな。ワシのドラゴン・ゾンビを粉砕しおった」
と、バトリがドンビキしていた。
「オレを育ててくれた人だからな。そりゃ強いさ」
「オヌシの親というわけか」
「ディヌとか言ったか。あの男も死んじまったようだぜ」
「構わん。もう話は出来た」
そうは言うがバトリはどことなく寂しげだった。
「ならもうやり残したことはないんだな?」
と、ロンが尋ねる。
「なにを言うておるか。まるでワシが死ぬみたいなことを言うではないか。状況がわかっておるのか?」
「やり残したことはないのかと尋ねてるんだ」
「じゃから、人類に滅亡という大仕事が残っておる。それからシャルリスともすこし話がしたい」
「そんなもんか」
「変なことを尋ねるではないか。死ぬのはオヌシのほうだと言うのに」
「どうだかな」
ロンには、切り札があった。
まさか、これが――こんな間の抜けた名前のヤツが、切り札になるなんて思いもしなかった。
ポケットに手を入れた。
黒い丸薬。
その名も《オネムチャン》である。
バトリのみを眠らせることが出来ると聞いている。本来は、分離する薬を注射するさいに、バトリが暴れないようにと用意されていたものだった。
まさか、こんな使い方をすることになるとは思わなかった。
「お疲れさま、バトリ。もうユックリと休め」
丸薬をかみ砕いた。
苦い。
すぐに唾液といっしょに飲みこんだ。
「なにを言うておるか、オヌシ……」
バトリが眠りに落ちたようだ。
ホントウに効果があるのか疑問だったが、杞憂だったようだ。
バトリが殴り付けてきて、ロンが炎で焼き付くす。
一方で、ノウゼンハレンとディヌも争い続けていた。
はじめてバトリに出会ったのは3年以上も前のことだ。たしか都市竜クルスニクで、休暇を堪能しているところに、ハマメリスから命令を受けたのだ。そして、バトリと戦うことになった。
あのときからもしかすると、長い夢を見ていたのではないか――と、思った。
ずっと、ずーっと、バトリと戦い続けていて、卵黄学園に行ったことや、帝都竜ヘルシングに避難したことや、地上都市で暮らしていたことなど、すべては夢のなかの出来事だったのではないか、という錯覚すらあった。
そんな錯覚を感じたのも、《不死の魔力》がロンの体内に入っているから、かもしれない。いずれはロンはゾンビになる。
時間はもう、あまり残されていない。
シャルリスのもとに行けば、治癒してもらえるだろう。が、今はこの場所を離れるわけにもいかない。
都市竜ダンピールはすでに老いているが、最後の死力をふりしぼったのか、ドラゴン・ゾンビにかぶりついていた。
2匹の巨大なドラゴンが争う姿は、凄まじいものがあった。まるで大陸と大陸の衝突である。
その勢いでバトリが、ドラゴン・ゾンビの頭部から落っこちてきた。
好機。
落っこちたバトリに、ロンはかぶりついた。バトリのカラダを咀嚼して呑みこんだ。
(やったか?)
「やったか、と思ったじゃろう」
と、すぐ近くで声がした。
ドラゴンになっているロンの腹から、バトリが顔を生やしていた。
「オレに、寄生したのか」
「はじめから、これが出来れば良かったんじゃがな。ドラゴンの血を攻略するのに、時間がかかったわ」
やれやれとでも言いたげに、バトリは頭をふっていた。
「やってくれる」
ひきちぎったのだが、今度は翼から顔を生やしてきた。
「いひひっ。ムダじゃ。ムダじゃ。こうなったワシは、そう簡単には引きはがせん」
「いちおう地上都市には、分離する薬が残されているがな」
「それまでには、ワシはオヌシを殺せるぞ」
「なるほど。オレの負け、ってわけか。いちおうバトリの望みを聞いておこうか」
「何度も言うてるじゃろうが。ワシの望みはドラゴンと人類の滅亡。この世界に真の終焉を与えることじゃ」
「世界の幕引きってか」
「オヌシをゾンビにして、ワシの手駒にしてしまえば、もうそれも叶ったようなものじゃがな」
そのときだ。
ウォリャァァァ――ッ、と獣の咆哮が聞こえてきた。
ディヌのカラダが空中に投げ飛ばされていた。ノウゼンハレンが跳びあがって、ディヌの腹にコブシを叩きこんだ。
そのまま落下していく。
落下したさきには、ドラゴン・ゾンビのカラダがあった。
ディヌのカラダが、ドラゴン・ゾンビの背中に叩きつけられていた。ドゴォ、と大地が揺れるような音が響いた。
そしてディヌのカラダがはじけ飛んでいくのが見えた。
ノウゼンハレンのコブシは、イーヴァルディの大槌に匹敵するほどの破壊力がある。人類に勝利をもたらすコブシである。
弾けとぶのはディヌのカラダだけかと思いきや、その土台となったドラゴン・ゾンビもろとも飛散していた。
「あやつ、とんでもないバケモノじゃな。ワシのドラゴン・ゾンビを粉砕しおった」
と、バトリがドンビキしていた。
「オレを育ててくれた人だからな。そりゃ強いさ」
「オヌシの親というわけか」
「ディヌとか言ったか。あの男も死んじまったようだぜ」
「構わん。もう話は出来た」
そうは言うがバトリはどことなく寂しげだった。
「ならもうやり残したことはないんだな?」
と、ロンが尋ねる。
「なにを言うておるか。まるでワシが死ぬみたいなことを言うではないか。状況がわかっておるのか?」
「やり残したことはないのかと尋ねてるんだ」
「じゃから、人類に滅亡という大仕事が残っておる。それからシャルリスともすこし話がしたい」
「そんなもんか」
「変なことを尋ねるではないか。死ぬのはオヌシのほうだと言うのに」
「どうだかな」
ロンには、切り札があった。
まさか、これが――こんな間の抜けた名前のヤツが、切り札になるなんて思いもしなかった。
ポケットに手を入れた。
黒い丸薬。
その名も《オネムチャン》である。
バトリのみを眠らせることが出来ると聞いている。本来は、分離する薬を注射するさいに、バトリが暴れないようにと用意されていたものだった。
まさか、こんな使い方をすることになるとは思わなかった。
「お疲れさま、バトリ。もうユックリと休め」
丸薬をかみ砕いた。
苦い。
すぐに唾液といっしょに飲みこんだ。
「なにを言うておるか、オヌシ……」
バトリが眠りに落ちたようだ。
ホントウに効果があるのか疑問だったが、杞憂だったようだ。
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