《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
28-4.ドラゴン・ゾンビ
ダンピールの人たちを避難させる必要があった。ハマメリスを通じて、地上都市クルスニクに連絡を取ってもらって援軍を要求した。
ダンピールでもすでに脱出の手筈は整っていたために、竜騎士たちが人を木箱に乗せて運搬していた。
木箱――というのはドワーフたちを地上都市へ運んださいに実用したものだ。
逃げる人たちを襲おうとするドラゴン・ゾンビを誘引しているのは、ロンだ。
ドラゴンの姿になって獄炎を吐きだした。ドラゴン・ゾンビのカラダをたしかに燃やせるのだが、焦げ付いた肉はすぐに再生していく。
惹き付けたいのだが、ドラゴン・ゾンビはロンのことを意にも介していない様子だった。
「ムダじゃ、ムダじゃ。こやつはもうゾンビになっておるからのぉ。いくら傷ついても、核にダメージが通らぬかぎりは、いくらでも再生するぞ」
と、バトリが勝ち誇ったように言う。
「ちッ」
ドラゴンがゾンビになるなんて、これ以上に厄介なことはないだろう。ドラゴンの強固なウロコと、ゾンビの再生力が合わさっているのだ。
「相手はそっちだけでは、ありませんよ」
ディヌがロンの背後を狙って肉の腕を伸ばしてきた。カラダを急降下させて、どうにかその腕を回避した。
ドラゴン・ゾンビの相手だけでも大変なのに、ディヌとバトリという始祖を相手にするのは骨が折れる。
(さすがにオレでも、対処しきれねェぞ)
と、苦戦を強いられていた。
「ほれほれ、どうした。世界最強の個体も、こうなれば負けを認めるしかなかろう。大人しくワシの《不死の魔力》を受け入れるが良い」
と、バトリも腕を伸ばしてくる。
「誰が、ゾンビなんかなるかよ」
と、伸ばしてきたバトリの腕をかわした。
バトリにだけは、特に注意をはらう必要がある。バトリはリーの細胞を利用して、ドラゴンへの攻略に成功している。
バトリの攻撃をすこしでもくらえば、ロンだってゾンビになる可能性が大きい。
いひひひ――とバトリの笑い声が不気味に響いた。
「あの時とは、形勢が逆転じゃな」
「いつのことだよ」
「はじめてオヌシと出会ったときじゃ。あのときからワシは、どうすればオヌシに勝てるのか試行錯誤しておった」
バトリはクチを縫いつけている赤い糸を解いた。
赤い糸が、舞い上がった。
バトリのクチが大きく開いて、そこから白蛇の大群が吐きだされた。
ロンは獄炎で対抗した。白蛇と黒炎が、空中にて衝突した。相反する二つの意思が、ブツかりあっているかのようだった。
「オレが黒で、お前が白とは、面白いめぐり合わせだな」
「ふんっ、偶然であろう」
「どうだろうな」
こういうめぐり合わせは、ときおりあるものだ。
ロンはそう感じている。
チェイテの白銀とアリエルの黄金。シャルリスの赤にルエドの青。そして地上を覆う赤い瘴気に、真っ青な空。
後ろですよ――と、声がした。
ディヌだ。上半身をあらわにしていた。腹に赤い縫い目がついている。その縫い目が開かれた。腸のようなものが、ロンに跳びかかってきた。
その攻撃方法はルエドから聞いていたが、咄嗟の事で反応が遅れた。ドラゴンと化しているロンの足首に、腸がからみついてきた。
「ちッ」
解けない。
「でかした!」
と、バトリが言って、白蛇を伸ばしてきた。
そのうちの数匹が、ロンの表皮であるウロコに噛みついてきた。ウロコに亀裂が入った。
(噛まれた!)
バトリはすでに、ドラゴンへの攻略を果たしたと言っていた。その証拠にゾンビとなったクルスニクが、ダンピールに襲いかかっている。
「ゲームセットじゃ。ロンよ。ワシの《不死の魔力》が、オヌシの体内に入った。通常の人間よりかは時間がかかると思うが、じきにオヌシはゾンビとなる」
「ちッ」
足首にからみついていた腸が、不意に外れた。
ディヌが地上に叩き落とされていた。地面から激しく砂ボコリが吹き上がっていた。
「手間取っているようじゃないか」
赤いドラゴンの上に、鞍もつけずに立っている人物がいた。黒々とした長髪を、風になびかせている。
ノウゼンハレンだ。
「遅いじゃないですか」
「愚痴を言うな。これでも急いできたほうだ」
「状況は、わかりますか?」
「ハマメリスから聞いている」
「オレも噛まれてしまいました。時間はあまり残されていません」
ノウゼンハレンが目を細めて、ロンのほうを見つめてきた。いったいどういう表情なのかは、マスクもあって、判然としなかった。
「皇帝と貴族たちとの会議が終った。その内容をヘリコニアにも伝える」
「なんですか」
「すべてのドラゴンを、ヒペリカムと6大魔術師の用意した封印術に閉じ込める。始祖の連中は、シャルリスを除いて、ここで駆除せよということだ」
「ヤッパリ封印ですか」
ヒペリカムは、カンオケに詰めてある妻を早く蘇生したいだろうが、まだ帰っては来られないだろう。
「空中戦はあまり得意ではないが、私はディヌを仕留める。お前は【腐肉の暴食】を仕留めろ」
「りょ」
と、ドラゴン・ゾンビの頭部に腰かけているバトリを、ロンは見上げた。
バトリのほうもジッと、こちらを見下ろしていた。
ダンピールでもすでに脱出の手筈は整っていたために、竜騎士たちが人を木箱に乗せて運搬していた。
木箱――というのはドワーフたちを地上都市へ運んださいに実用したものだ。
逃げる人たちを襲おうとするドラゴン・ゾンビを誘引しているのは、ロンだ。
ドラゴンの姿になって獄炎を吐きだした。ドラゴン・ゾンビのカラダをたしかに燃やせるのだが、焦げ付いた肉はすぐに再生していく。
惹き付けたいのだが、ドラゴン・ゾンビはロンのことを意にも介していない様子だった。
「ムダじゃ、ムダじゃ。こやつはもうゾンビになっておるからのぉ。いくら傷ついても、核にダメージが通らぬかぎりは、いくらでも再生するぞ」
と、バトリが勝ち誇ったように言う。
「ちッ」
ドラゴンがゾンビになるなんて、これ以上に厄介なことはないだろう。ドラゴンの強固なウロコと、ゾンビの再生力が合わさっているのだ。
「相手はそっちだけでは、ありませんよ」
ディヌがロンの背後を狙って肉の腕を伸ばしてきた。カラダを急降下させて、どうにかその腕を回避した。
ドラゴン・ゾンビの相手だけでも大変なのに、ディヌとバトリという始祖を相手にするのは骨が折れる。
(さすがにオレでも、対処しきれねェぞ)
と、苦戦を強いられていた。
「ほれほれ、どうした。世界最強の個体も、こうなれば負けを認めるしかなかろう。大人しくワシの《不死の魔力》を受け入れるが良い」
と、バトリも腕を伸ばしてくる。
「誰が、ゾンビなんかなるかよ」
と、伸ばしてきたバトリの腕をかわした。
バトリにだけは、特に注意をはらう必要がある。バトリはリーの細胞を利用して、ドラゴンへの攻略に成功している。
バトリの攻撃をすこしでもくらえば、ロンだってゾンビになる可能性が大きい。
いひひひ――とバトリの笑い声が不気味に響いた。
「あの時とは、形勢が逆転じゃな」
「いつのことだよ」
「はじめてオヌシと出会ったときじゃ。あのときからワシは、どうすればオヌシに勝てるのか試行錯誤しておった」
バトリはクチを縫いつけている赤い糸を解いた。
赤い糸が、舞い上がった。
バトリのクチが大きく開いて、そこから白蛇の大群が吐きだされた。
ロンは獄炎で対抗した。白蛇と黒炎が、空中にて衝突した。相反する二つの意思が、ブツかりあっているかのようだった。
「オレが黒で、お前が白とは、面白いめぐり合わせだな」
「ふんっ、偶然であろう」
「どうだろうな」
こういうめぐり合わせは、ときおりあるものだ。
ロンはそう感じている。
チェイテの白銀とアリエルの黄金。シャルリスの赤にルエドの青。そして地上を覆う赤い瘴気に、真っ青な空。
後ろですよ――と、声がした。
ディヌだ。上半身をあらわにしていた。腹に赤い縫い目がついている。その縫い目が開かれた。腸のようなものが、ロンに跳びかかってきた。
その攻撃方法はルエドから聞いていたが、咄嗟の事で反応が遅れた。ドラゴンと化しているロンの足首に、腸がからみついてきた。
「ちッ」
解けない。
「でかした!」
と、バトリが言って、白蛇を伸ばしてきた。
そのうちの数匹が、ロンの表皮であるウロコに噛みついてきた。ウロコに亀裂が入った。
(噛まれた!)
バトリはすでに、ドラゴンへの攻略を果たしたと言っていた。その証拠にゾンビとなったクルスニクが、ダンピールに襲いかかっている。
「ゲームセットじゃ。ロンよ。ワシの《不死の魔力》が、オヌシの体内に入った。通常の人間よりかは時間がかかると思うが、じきにオヌシはゾンビとなる」
「ちッ」
足首にからみついていた腸が、不意に外れた。
ディヌが地上に叩き落とされていた。地面から激しく砂ボコリが吹き上がっていた。
「手間取っているようじゃないか」
赤いドラゴンの上に、鞍もつけずに立っている人物がいた。黒々とした長髪を、風になびかせている。
ノウゼンハレンだ。
「遅いじゃないですか」
「愚痴を言うな。これでも急いできたほうだ」
「状況は、わかりますか?」
「ハマメリスから聞いている」
「オレも噛まれてしまいました。時間はあまり残されていません」
ノウゼンハレンが目を細めて、ロンのほうを見つめてきた。いったいどういう表情なのかは、マスクもあって、判然としなかった。
「皇帝と貴族たちとの会議が終った。その内容をヘリコニアにも伝える」
「なんですか」
「すべてのドラゴンを、ヒペリカムと6大魔術師の用意した封印術に閉じ込める。始祖の連中は、シャルリスを除いて、ここで駆除せよということだ」
「ヤッパリ封印ですか」
ヒペリカムは、カンオケに詰めてある妻を早く蘇生したいだろうが、まだ帰っては来られないだろう。
「空中戦はあまり得意ではないが、私はディヌを仕留める。お前は【腐肉の暴食】を仕留めろ」
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