《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
28-2.ハマメリスからの連絡
《覚者ヘリコニア。聞こえますか。応答してください》
と、ハマメリスの声が、イヤリングを通して聞こえてきた。
その場に一緒にいたシャルリスとエレノアに断りを入れて、ロンはその場を離れた。
「どうした?」
《覚者ツバキと覚者サザンカの2人との連絡が途絶えました》
「どうせまた、サボりだろ」
ツバキとサザンカは、ゾンビ殺しには実力のある能力者だ。
双子の少女で、ロンによくなついていた。が、たびたびバックレるのだ。
《そうだと良いのですが、今回は住民の避難がかかっていますし、さすがにあの2人でもバックレるようなことはないと思うのですが》
「で、オレに様子を見に行けってことかよ。最近、オレの負担がでかくないか?」
《仕方ありません。ヘリコニアは機動力に優れた能力を持っていますから。それにシャルリス・ネクティリアを監視しておく必要性もなくなりましたので》
「まぁな」
と、エレノアとシャルリスのほうに目をやった。
ふたりは何か話をしているようだった。
シャルリスに付き添う必要性がなくなったことには、寂寥感があった。
子供が自分のもとから独り立ちしていく感覚に似ているかもしれない。もっとも、ロンは子供がいないので、それがどういう感覚なのかはわからない。
でも喜ぶべきことなのだろう、とは思う。これでシャルリスは自由になったわけだし、ロンが監視しているあいだ、【腐肉の暴食】が甚大な被害をもたらすこともなかった。
任務は達成されたのだ。
《シャルリス・ネクティリアと離れたくないのは、わかりますが、次の仕事にとりかかってもらわなくては困ります》
と、ロンの心情を察したかのように、ハマメリスは言う。
なんだかんだ言って、ハマメリスとは長い付き合いだ。こうしてイヤリング越しのヤリトリでも、ロンの考えていることが読めるのかもしれない。
「べつに離れたくないなんてことはねェよ」
と、図星だったので、あえてツッケンドンに言った。
《シャルリスやチェイテやアリエルたちとの関係は、ヘリコニアにとっても良い経験になる。ノウゼンハレンはそう言っていました。すこしはヘリコニアも成長したと思いたいですね。もう良い歳のオッサンですし》
「そうだな」
《否定されないのですね》
「そりゃオレも、もう31歳だしな」
まだ若いという矜持もある一方で、もうオッサンになったのだという覚悟もあった。
《残念ながら、髪は無事なようでしたが》
「なんだ? オレがハゲて欲しかったのかよ。まぁ、ハゲの心配はまだなくなったわけじゃないがな」
今のところ、まだ大丈夫だ――と、思いたい。
《ハゲれば、すこしは恋仇が減ると思っていたのですがね》
「は?」
《いえ、冗談です。本題に戻りますが、ヘリコニアの負担が大きいのは、覚者も今は人手不足だからです》
「あぁ……」
と、ロンは声を漏らした。
アジサイにミツマタ。同胞たちは、英雄となって先に逝ってしまったのだ。しかしその意思は確実に引き継がれている。
《なんですか、その気の緩んだ声は》
「いや。寂しくなったもんだと思ってな」
《かつて8人だった覚者は、いまや6人です。ヒペリカムはドラゴンを封印させる魔法のことで手が離せません。私は後方支援が担当なので、動けるのはヘリコニアしかいません》
「ノウゼンハレンは?」
《あの人は、貴族との会議で忙しいみたいです。手が空きしだい、ヘリコニアの手伝いに入るということです》
「了解。ツバキとサザンカは、たしかダンピールの避難作業に行ってるはずだったな」
《ずいぶんと、物分りがよくなりましたね》
「まぁ、オレしかいないなら、仕方ねェだろ。覚者ダンピールまでのナビゲートを頼むぞ」
《了解です》
シャルリスとエレノアに事情を伝えて、ロンは空へ向かって翼を広げた。
空を飛ぶには、心地の良さそうな晴天だった。
と、ハマメリスの声が、イヤリングを通して聞こえてきた。
その場に一緒にいたシャルリスとエレノアに断りを入れて、ロンはその場を離れた。
「どうした?」
《覚者ツバキと覚者サザンカの2人との連絡が途絶えました》
「どうせまた、サボりだろ」
ツバキとサザンカは、ゾンビ殺しには実力のある能力者だ。
双子の少女で、ロンによくなついていた。が、たびたびバックレるのだ。
《そうだと良いのですが、今回は住民の避難がかかっていますし、さすがにあの2人でもバックレるようなことはないと思うのですが》
「で、オレに様子を見に行けってことかよ。最近、オレの負担がでかくないか?」
《仕方ありません。ヘリコニアは機動力に優れた能力を持っていますから。それにシャルリス・ネクティリアを監視しておく必要性もなくなりましたので》
「まぁな」
と、エレノアとシャルリスのほうに目をやった。
ふたりは何か話をしているようだった。
シャルリスに付き添う必要性がなくなったことには、寂寥感があった。
子供が自分のもとから独り立ちしていく感覚に似ているかもしれない。もっとも、ロンは子供がいないので、それがどういう感覚なのかはわからない。
でも喜ぶべきことなのだろう、とは思う。これでシャルリスは自由になったわけだし、ロンが監視しているあいだ、【腐肉の暴食】が甚大な被害をもたらすこともなかった。
任務は達成されたのだ。
《シャルリス・ネクティリアと離れたくないのは、わかりますが、次の仕事にとりかかってもらわなくては困ります》
と、ロンの心情を察したかのように、ハマメリスは言う。
なんだかんだ言って、ハマメリスとは長い付き合いだ。こうしてイヤリング越しのヤリトリでも、ロンの考えていることが読めるのかもしれない。
「べつに離れたくないなんてことはねェよ」
と、図星だったので、あえてツッケンドンに言った。
《シャルリスやチェイテやアリエルたちとの関係は、ヘリコニアにとっても良い経験になる。ノウゼンハレンはそう言っていました。すこしはヘリコニアも成長したと思いたいですね。もう良い歳のオッサンですし》
「そうだな」
《否定されないのですね》
「そりゃオレも、もう31歳だしな」
まだ若いという矜持もある一方で、もうオッサンになったのだという覚悟もあった。
《残念ながら、髪は無事なようでしたが》
「なんだ? オレがハゲて欲しかったのかよ。まぁ、ハゲの心配はまだなくなったわけじゃないがな」
今のところ、まだ大丈夫だ――と、思いたい。
《ハゲれば、すこしは恋仇が減ると思っていたのですがね》
「は?」
《いえ、冗談です。本題に戻りますが、ヘリコニアの負担が大きいのは、覚者も今は人手不足だからです》
「あぁ……」
と、ロンは声を漏らした。
アジサイにミツマタ。同胞たちは、英雄となって先に逝ってしまったのだ。しかしその意思は確実に引き継がれている。
《なんですか、その気の緩んだ声は》
「いや。寂しくなったもんだと思ってな」
《かつて8人だった覚者は、いまや6人です。ヒペリカムはドラゴンを封印させる魔法のことで手が離せません。私は後方支援が担当なので、動けるのはヘリコニアしかいません》
「ノウゼンハレンは?」
《あの人は、貴族との会議で忙しいみたいです。手が空きしだい、ヘリコニアの手伝いに入るということです》
「了解。ツバキとサザンカは、たしかダンピールの避難作業に行ってるはずだったな」
《ずいぶんと、物分りがよくなりましたね》
「まぁ、オレしかいないなら、仕方ねェだろ。覚者ダンピールまでのナビゲートを頼むぞ」
《了解です》
シャルリスとエレノアに事情を伝えて、ロンは空へ向かって翼を広げた。
空を飛ぶには、心地の良さそうな晴天だった。
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