《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
25-1.チェイテの覚悟
チェイテとアリエルは、ドワーフたちを避難させていた。
指揮権を任されたアリエルは先頭にいた。
ほかの竜騎士がそれに続くカッコウだ。
各々のドラゴンには木箱がつるされており、ドワーフたちがそれに乗っている。
チェイテはドワーフを積むことはせずに、シンガリをつとめていた。
振り向く。
通常のゾンビたちは追いかけて来なかったけれど、巨大種だけは着実にこちらに近づいて来ていた。
残念ながら攪乱していた小隊は、全滅してしまったようだ。
ルエドとシャルリスも、まだ戻って来ない。
ドワーフたちを運んでいるアリエルは、戦闘に参加できない。
(今は、私がどうにかしないと)
と、チェイテは責任感をおぼえた。
このままでは巨大種を、地上都市のほうへと誘ってしまうことになる。
それだけは、避けなければならない。
ここで巨大種をすこしでも足止めするべきだろう。出来れば仕留めたいところだが、自分のチカラだけでこれを仕留めるのは難しい。
(アリエル。あとは任せた)
と、胸裏でつぶやいて、チェイテは手綱を引いた。
ドラゴンを反転させる。
迫りくる巨大種と向き合うようなカッコウになる。
それにしても大きい。やたらと上半身だけふくれあがっている。まるで動く山だ。両腕もドラゴンをワシヅカミにできるほどの大きさがある。上半身に比べると、下半身は貧相だった。
「ノスフィルト家の名にかけて、ここで私が止めてみせる」
と、チェイテは魔法陣を展開した。
火球を射出する。巨大種の一部を焼き、肉を削ることには成功した。だが、巨大な肉体のほんの一部だ。しかも、肉はすぐに再生されてゆく。
ダメージが通っている様子はない。巨大種はその歩みを、アリエルたちのほうへと進めてゆく。
これほどの巨体のなかから、核、を見つけ出すのは至難の技だ。
(足なら……)
その貧弱そうな足を攻撃すれば、転がすぐらいのことは出来るかもしれない。
巨大種から肉の腕が生えてきた。カラダが大きいぶん、リーチも長いのかもしれない。
アリエルの率いている竜騎士を狙っているようだ。
「魔防壁」
半透明の盾が、肉の腕をふせいだ。肉の腕は、チェイテの張った魔防壁に衝突して、叩きつけられたパン生地みたいになっていた。
魔防壁を解いて、巨大種の足元に接近した。
火球を足に向けて、何度も撃ちこんだ。何度も何度も撃ちこんだ。撃ちこむたびに肉が削れてゆく。
ケムリがふきあがり、巨大種の足取りに揺らぎが生じる。
このまま攻撃をつづければ、転がすことが出来そうだ。そう期待した瞬間だった。巨大な手のひらがチェイテに襲いかかってきた。攻撃に集中していて反応が遅れた。
「キャッ」
騎乗していたドラゴンともども、弾き飛ばされた。
地面に叩きつけられる。
竜具のおかげでたいていの傷は受けない。なかに着込んでいる布の鎧が打撃系の攻撃を緩和してくれる仕組みになっている。
けれど、さすがに衝撃を吸収しきれなかったようだ。
「くっ」
叩きつけられた衝撃で、右足をくじいてしまった。激痛。このままではドラゴンの操縦もままならない。
マスクが外れなかったことが幸いだった。
さらに巨大な手が、チェイテを叩き潰そうと振り下ろされる。
これは、逃げれない。
さりとて魔防壁でも防御もむずかしい。さっきの火球による攻撃によって、魔力も乏しくなっていた。
死を、予感した。
(終わるのか、ここで……)
それも良いかもしれない。
ノスフィルト家の名に恥じない生きざまだったはずだ。
もともと弱小だったけれど、ついにはクルスニク12騎士と言われるまでになることが出来たのだ。
(あなたのおかげです。ロン先生)
と、チェイテは思った。
せめて死ぬときは、あの人に看取られたかった。火の匂いのする、あの人が近くにいないのだけが残念だ。
叩きつけられる。
そう覚悟した瞬間だった。
ドォォ―――ンッ
轟音が鳴りひびいた。
痛みは襲って来なかった。
チェイテの前に、大きな背中があった。岩が立っているのかと思った。その岩は大槌で、巨大種の手を受け止めていた。
「あなたは……」
「よく、やった。下がっていろ。あとは、オレ、引き受ける」
覚者ミツマタである。
指揮権を任されたアリエルは先頭にいた。
ほかの竜騎士がそれに続くカッコウだ。
各々のドラゴンには木箱がつるされており、ドワーフたちがそれに乗っている。
チェイテはドワーフを積むことはせずに、シンガリをつとめていた。
振り向く。
通常のゾンビたちは追いかけて来なかったけれど、巨大種だけは着実にこちらに近づいて来ていた。
残念ながら攪乱していた小隊は、全滅してしまったようだ。
ルエドとシャルリスも、まだ戻って来ない。
ドワーフたちを運んでいるアリエルは、戦闘に参加できない。
(今は、私がどうにかしないと)
と、チェイテは責任感をおぼえた。
このままでは巨大種を、地上都市のほうへと誘ってしまうことになる。
それだけは、避けなければならない。
ここで巨大種をすこしでも足止めするべきだろう。出来れば仕留めたいところだが、自分のチカラだけでこれを仕留めるのは難しい。
(アリエル。あとは任せた)
と、胸裏でつぶやいて、チェイテは手綱を引いた。
ドラゴンを反転させる。
迫りくる巨大種と向き合うようなカッコウになる。
それにしても大きい。やたらと上半身だけふくれあがっている。まるで動く山だ。両腕もドラゴンをワシヅカミにできるほどの大きさがある。上半身に比べると、下半身は貧相だった。
「ノスフィルト家の名にかけて、ここで私が止めてみせる」
と、チェイテは魔法陣を展開した。
火球を射出する。巨大種の一部を焼き、肉を削ることには成功した。だが、巨大な肉体のほんの一部だ。しかも、肉はすぐに再生されてゆく。
ダメージが通っている様子はない。巨大種はその歩みを、アリエルたちのほうへと進めてゆく。
これほどの巨体のなかから、核、を見つけ出すのは至難の技だ。
(足なら……)
その貧弱そうな足を攻撃すれば、転がすぐらいのことは出来るかもしれない。
巨大種から肉の腕が生えてきた。カラダが大きいぶん、リーチも長いのかもしれない。
アリエルの率いている竜騎士を狙っているようだ。
「魔防壁」
半透明の盾が、肉の腕をふせいだ。肉の腕は、チェイテの張った魔防壁に衝突して、叩きつけられたパン生地みたいになっていた。
魔防壁を解いて、巨大種の足元に接近した。
火球を足に向けて、何度も撃ちこんだ。何度も何度も撃ちこんだ。撃ちこむたびに肉が削れてゆく。
ケムリがふきあがり、巨大種の足取りに揺らぎが生じる。
このまま攻撃をつづければ、転がすことが出来そうだ。そう期待した瞬間だった。巨大な手のひらがチェイテに襲いかかってきた。攻撃に集中していて反応が遅れた。
「キャッ」
騎乗していたドラゴンともども、弾き飛ばされた。
地面に叩きつけられる。
竜具のおかげでたいていの傷は受けない。なかに着込んでいる布の鎧が打撃系の攻撃を緩和してくれる仕組みになっている。
けれど、さすがに衝撃を吸収しきれなかったようだ。
「くっ」
叩きつけられた衝撃で、右足をくじいてしまった。激痛。このままではドラゴンの操縦もままならない。
マスクが外れなかったことが幸いだった。
さらに巨大な手が、チェイテを叩き潰そうと振り下ろされる。
これは、逃げれない。
さりとて魔防壁でも防御もむずかしい。さっきの火球による攻撃によって、魔力も乏しくなっていた。
死を、予感した。
(終わるのか、ここで……)
それも良いかもしれない。
ノスフィルト家の名に恥じない生きざまだったはずだ。
もともと弱小だったけれど、ついにはクルスニク12騎士と言われるまでになることが出来たのだ。
(あなたのおかげです。ロン先生)
と、チェイテは思った。
せめて死ぬときは、あの人に看取られたかった。火の匂いのする、あの人が近くにいないのだけが残念だ。
叩きつけられる。
そう覚悟した瞬間だった。
ドォォ―――ンッ
轟音が鳴りひびいた。
痛みは襲って来なかった。
チェイテの前に、大きな背中があった。岩が立っているのかと思った。その岩は大槌で、巨大種の手を受け止めていた。
「あなたは……」
「よく、やった。下がっていろ。あとは、オレ、引き受ける」
覚者ミツマタである。
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