《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

執筆用bot E-021番 

21-2.会議の終わり

 会議は翌朝までつづいた。


 クルスニク人は廃都へと移住する。そのさいには、覚者がゾンビを掃討して、ヒペリカムが魔法で瘴気を払う。


 そう段取りがかたまった。


 暴徒たちの処罰は、シャングの死をもって償わせる。他の者は謹慎処分にするということだった。処分が甘いような気もしたが、「すべては自分の責任である」という旨をつづっているシャングの書簡が効いたようだ。


 リーやマオは、シャングが巻き込んだものであって、本人たちに責任はないと綴られていた。


 貴重な竜騎士の戦力を、懲戒処分にするわけにもいかなかったのだろう。


 時期皇帝の件は、残っている貴族たちで相談するということだった。


 会議室を出ると、チェイテとアリエルとシャルリスの3人が駆け寄ってきた。


「おう。無事だったか」


「ロン隊長のほうこそ、無事で良かったっス。なかなか戻って来ないから、何かあったのかと心配になったっスよ」


「3人とも、もう動いても良いのか?」


 シャルリスはそうでもないが、チェイテもアリエルもケガを負っている様子だった。


 アリエルは頭に包帯を巻いていた。チェイテはガーゼを頬に張っていた。


 大丈夫だと3人とも返事をした。


「悪かったな。任せきりにしちまって」


 部下である3人がガンバっていたのに、自分だけ牢獄で眠りこけていたのだと思うと、居たたまれない気持ちになる。


「事情は聞いたっスよ。ロン隊長は皇帝陛下殺害の容疑を受けて、捕まっていたっスよね。警戒されていたから仕方ないっスよ。それにボクたちも、もう守られるだけの存在じゃないっスからね」
 と、シャルリスはガッツポーズをして見せた。


「そりゃ頼もしいことだ」


 頼もしいが、すこし寂しくもあった。
 どんどんとロンの手元を離れていくかのようだった。


「まぁ、ロン隊長が出てきたら、暴徒なんて一瞬で鎮圧してしまいますからね。シャング竜騎士長が警戒していたのもムリはないっスよ」


「暴徒の連中は?」


「竜騎士のみんなで協力して、暴徒はひっ捕らえて城に連行したっスよ」


「見事だ」


 にしし、とシャルリスは得意気に歯を見せて笑っていた。


「【腐肉の暴食】が、帝都内に出てきたという話を聞いたが、抑えこめたようだな」


「チョット調子に乗って、バトリに任せちまったっス。そのせいで、帝都の人たちを必要以上に怖がらせてしまったみたいっスね」
 と、シャルリスは罰が悪そうに、後頭部をかいていた。


「チェイテは、大丈夫か?」


「義弟のマオのいさめるのに苦労した。それぐらい」


 そうか、とロンはうなずいた。
 マオ・ノスフィルト。暴徒に加担していたようだ。


「アリエルは?」
 と、うつむいているアリエルに言葉を投げかけた。


 気になっていた。アリエルの背負っている巨大な裁縫針は、アジサイのものだ。アジサイは戦死したと聞いている。


「覚者のアジサイさまが、私の身代わりになってお亡くなりに……。そのさいにこの武器をたくされました」
 と、アリエルは背負っていた裁縫針を取り出して見せた。


 ゾンビたちを縫い合わせて、あのマシュにさえトドメをさした武器だ。


 マシュもアリエルも、かつてはルエドのもとで見習いをやっていたのだと思うと、なんだかめぐり合わせのようなものを感じる。



「そうか。アジサイの戦死は耳にしていた。シャング竜騎士長を止めようとして、死んだそうだな」


「立派な最期でした。この武器は私がもらってもよろしいのでしょうか?」


 アリエルが不安そうな表情でそう尋ねてきた。


 刹那。アリエルの背後に、ツギハギだらけのコートを着た男の姿を見た気がした。その男は不敵に微笑み、アリエルの肩に手をかけていた。


 アジサイは近くに、アリエルがいたからという理由だけで、アリエルにこの武器をたくしたわけではない。この武器は、アジサイという生きざまそのものを宿した武器だ。


「アリエルに使ってもらえるなら、本望だろうさ。使いにくくなかったら、使ってやってくれ」


「はい」
 と、アリエルはうなずいた。


「3人に、オレからも伝えることがある」


 会議で決まった内容を、話して聞かせた。
 これからクルスニク人は、廃都へと移住することになる。そのさいに覚者たちは、地上のゾンビを掃討することになる。そう聞かせると、シャルリスが挙手をした。


「ゾンビの掃討は、ボクも手伝うっスよ。ボクはまだ動けるっスから」


 そう言うシャルリスのひたいを、ロンは人差し指で軽く小突いた。


「お前らはユックリ休め。オレにもすこしはカッコウつけさせろよ。このままじゃ、オレの出番がなくなるだろうが」


「ロン隊長はいいんっスよ。ロン隊長が楽できるように、ボクたちがガンバるんっスから」


「その言葉はうれしいが、3人とも手負いだろう。ユックリ休め。これは命令だ」


「でも、いいんっスか? ボクを監視しておかなくても」


「シャルリスの監視は、ハマメリスが行うことになってる。ハマメリスの言葉は、覚者たちのもとにすぐ届けられるからな。それに、バトリのことは、チャント抑えられるだろ」


「でも……」


「信頼してんだよ」
 ロンがそう言うと、シャルリスは赤面していた。


 3人ともさすがに疲れていたようで、言い返しては来なかった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品