《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
17-2.襲撃
「なぁ。リー。覚えてるか。誰が最初にガールフレンドが出来るかって話をゴウとしたこと」
リーとマオはドラゴンに乗って、夜空を飛んでいた。
ふたりの任務は、右脇腹地区にある竜騎士たちの詰所への襲撃だ。
そこまでドラゴンで飛んでいく算段だった。
「もちろん、覚えてるよ」
「クルスニクから来た連中は、女の子が多いよな。もしかすると、オレたちが仲良くやっていった未来もあったのかもしれねェな」
マオは夢想するようにそう言った。
「なんでそんなこと……」
決意が鈍るようなことを、言わないで欲しい。
リーとマオとゴウ。
シャルリスとチェイテとアリエル。
6人の竜騎士たちが仲良く生活している世界を、想像してしまった。
「あの3人の少女のなかで、ゴウはいったい誰が好みだったと思う?」
「さあ。アリエル・キャスティアンあたりじゃないかな」
アリエルは、文句ない美人だと思う。
姉のエレノア・キャスティアンとはまた違った魅力がある。
「かもな」
「なんで、そんな話をしたんだよ」
咎めるようにリーがそう尋ねた。
「あったはずの未来をぶっ潰したのは、連中のほうだ。クルスニク人はゴウを殺したんだ。それが言いたかった」
「よく言うよ。ゴウのことがなくても、マオはチェイテのことを憎んでるじゃないか。妾の子が、本妻の子を越えるんだろ」
「ああ」
とマオは、神妙な声でうなずいた。
今回の相手はゾンビじゃないし、戦場は地上ではない。それでも竜具の装備だけはつけている。マオの表情はヘルムに隠れていた。
「詰所だ」
と、リーが呟いた。
まだ起きている竜騎士がいるのかもしれない。詰所よ窓からは、明かりが漏れていた。
あるいは異変を察して目覚めた者がいるのかもしれない。
「リー。いけるか?」
「ああ。手筈通りに行こう。オレはこのチカラを使う。そしてシャルリスを仕留める。それが帝都のためなら――ッ」
その昔、竜人族と呼ばれる種族がいた。【方舟】を言い聞かせて、空へと飛び立った。竜神教では、神、としてまつりあげている存在だ。
半竜者ヘリコニアは、その末裔なのだと言う。
ヘリコニアは子供を生むつもりがないらしい。仮に本人にその気があったとしても、着床率が異様に低いと聞く。
よくわからないが、子供のできにくいカラダなんだろう。
竜人族の血を絶やすわけにはいかない。
5匹の都市竜たちを言い聞かせるさいにも、竜人族のチカラが働いたと聞いたことがある。
仔竜たちを手なずけるのだって、ヤッパリ竜人族のチカラはあったほうが良い。
人類はもう1度、竜人族を生み出そうと人体実験をつづけている。
その実験を受けた者の99パーセントが死んでしまうのだと聞いている。
しかしその実験を経て、生き残った個体があった。
それが――。
リー・フォルトだ。
しかし完全な竜人族にはなれなかった。
竜語だってしゃべれないし、マトモに竜化することも出来ない。
そこから、つけられた名前が失敗作。
「グラァァァ――ッ!」
リーの左半身が、赤黒いドラゴンとなった。この姿は人に恐怖を与える。いくら神聖なるドラゴンだと言っても、右半身だけでは怪物のそれだ。
リーは、ヘリコニアが子供を生まないと意固地になっているから、生み出された存在だと聞いている。
しかしヘリコニアを恨もうとは思わない。
自分だって、こんなカラダなのに、子供なんて生みたくないし、むしろヘリコニアには同情の気持ちだってあるし、理解しあえるんじゃないかな、とも思う。
ともに、この残酷な世界の、犠牲者だ。
(バケモノには、バケモノってわけだ)
シャルリスを殺す役目にリーが抜擢されている理由が、これだ。
シャルリスもカラダに【腐肉の暴食】を宿しているのだから、お互いさまだ。それでもカラダにゾンビを飼ってるヤツよりかは、自分のほうがまだマシだろうと思う。
シャルリスが戦っている姿を見たけれど、あれはどこからどう見てもゾンビだった。
「相変わらずすごい姿だな」
と、マオが言った。
「あんまり見ないでくれよ」
「心配するなよ。たとえバケモノになっても、オレとゴウは、お前の親友だ」
マオはそう言うと、握りこぶしを向けてきた。
マオはドラゴンに乗っていたし、リーは変身していた。なのでコブシを合わせることは出来なかった。互いのコブシをブツけるような仕草だけにとどめた。
「ありがとう」
リーは詰所に急降下した。
リーとマオはドラゴンに乗って、夜空を飛んでいた。
ふたりの任務は、右脇腹地区にある竜騎士たちの詰所への襲撃だ。
そこまでドラゴンで飛んでいく算段だった。
「もちろん、覚えてるよ」
「クルスニクから来た連中は、女の子が多いよな。もしかすると、オレたちが仲良くやっていった未来もあったのかもしれねェな」
マオは夢想するようにそう言った。
「なんでそんなこと……」
決意が鈍るようなことを、言わないで欲しい。
リーとマオとゴウ。
シャルリスとチェイテとアリエル。
6人の竜騎士たちが仲良く生活している世界を、想像してしまった。
「あの3人の少女のなかで、ゴウはいったい誰が好みだったと思う?」
「さあ。アリエル・キャスティアンあたりじゃないかな」
アリエルは、文句ない美人だと思う。
姉のエレノア・キャスティアンとはまた違った魅力がある。
「かもな」
「なんで、そんな話をしたんだよ」
咎めるようにリーがそう尋ねた。
「あったはずの未来をぶっ潰したのは、連中のほうだ。クルスニク人はゴウを殺したんだ。それが言いたかった」
「よく言うよ。ゴウのことがなくても、マオはチェイテのことを憎んでるじゃないか。妾の子が、本妻の子を越えるんだろ」
「ああ」
とマオは、神妙な声でうなずいた。
今回の相手はゾンビじゃないし、戦場は地上ではない。それでも竜具の装備だけはつけている。マオの表情はヘルムに隠れていた。
「詰所だ」
と、リーが呟いた。
まだ起きている竜騎士がいるのかもしれない。詰所よ窓からは、明かりが漏れていた。
あるいは異変を察して目覚めた者がいるのかもしれない。
「リー。いけるか?」
「ああ。手筈通りに行こう。オレはこのチカラを使う。そしてシャルリスを仕留める。それが帝都のためなら――ッ」
その昔、竜人族と呼ばれる種族がいた。【方舟】を言い聞かせて、空へと飛び立った。竜神教では、神、としてまつりあげている存在だ。
半竜者ヘリコニアは、その末裔なのだと言う。
ヘリコニアは子供を生むつもりがないらしい。仮に本人にその気があったとしても、着床率が異様に低いと聞く。
よくわからないが、子供のできにくいカラダなんだろう。
竜人族の血を絶やすわけにはいかない。
5匹の都市竜たちを言い聞かせるさいにも、竜人族のチカラが働いたと聞いたことがある。
仔竜たちを手なずけるのだって、ヤッパリ竜人族のチカラはあったほうが良い。
人類はもう1度、竜人族を生み出そうと人体実験をつづけている。
その実験を受けた者の99パーセントが死んでしまうのだと聞いている。
しかしその実験を経て、生き残った個体があった。
それが――。
リー・フォルトだ。
しかし完全な竜人族にはなれなかった。
竜語だってしゃべれないし、マトモに竜化することも出来ない。
そこから、つけられた名前が失敗作。
「グラァァァ――ッ!」
リーの左半身が、赤黒いドラゴンとなった。この姿は人に恐怖を与える。いくら神聖なるドラゴンだと言っても、右半身だけでは怪物のそれだ。
リーは、ヘリコニアが子供を生まないと意固地になっているから、生み出された存在だと聞いている。
しかしヘリコニアを恨もうとは思わない。
自分だって、こんなカラダなのに、子供なんて生みたくないし、むしろヘリコニアには同情の気持ちだってあるし、理解しあえるんじゃないかな、とも思う。
ともに、この残酷な世界の、犠牲者だ。
(バケモノには、バケモノってわけだ)
シャルリスを殺す役目にリーが抜擢されている理由が、これだ。
シャルリスもカラダに【腐肉の暴食】を宿しているのだから、お互いさまだ。それでもカラダにゾンビを飼ってるヤツよりかは、自分のほうがまだマシだろうと思う。
シャルリスが戦っている姿を見たけれど、あれはどこからどう見てもゾンビだった。
「相変わらずすごい姿だな」
と、マオが言った。
「あんまり見ないでくれよ」
「心配するなよ。たとえバケモノになっても、オレとゴウは、お前の親友だ」
マオはそう言うと、握りこぶしを向けてきた。
マオはドラゴンに乗っていたし、リーは変身していた。なのでコブシを合わせることは出来なかった。互いのコブシをブツけるような仕草だけにとどめた。
「ありがとう」
リーは詰所に急降下した。
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