《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

執筆用bot E-021番 

17-2.襲撃

「なぁ。リー。覚えてるか。誰が最初にガールフレンドが出来るかって話をゴウとしたこと」


 リーとマオはドラゴンに乗って、夜空を飛んでいた。


 ふたりの任務は、右脇腹地区にある竜騎士たちの詰所への襲撃だ。
 そこまでドラゴンで飛んでいく算段だった。


「もちろん、覚えてるよ」


「クルスニクから来た連中は、女の子が多いよな。もしかすると、オレたちが仲良くやっていった未来もあったのかもしれねェな」


 マオは夢想するようにそう言った。


「なんでそんなこと……」


 決意が鈍るようなことを、言わないで欲しい。


 リーとマオとゴウ。
 シャルリスとチェイテとアリエル。


 6人の竜騎士たちが仲良く生活している世界を、想像してしまった。


「あの3人の少女のなかで、ゴウはいったい誰が好みだったと思う?」


「さあ。アリエル・キャスティアンあたりじゃないかな」


 アリエルは、文句ない美人だと思う。
 姉のエレノア・キャスティアンとはまた違った魅力がある。


「かもな」


「なんで、そんな話をしたんだよ」
 咎めるようにリーがそう尋ねた。


「あったはずの未来をぶっ潰したのは、連中のほうだ。クルスニク人はゴウを殺したんだ。それが言いたかった」


「よく言うよ。ゴウのことがなくても、マオはチェイテのことを憎んでるじゃないか。妾の子が、本妻の子を越えるんだろ」


「ああ」
 とマオは、神妙な声でうなずいた。


 今回の相手はゾンビじゃないし、戦場は地上ではない。それでも竜具の装備だけはつけている。マオの表情はヘルムに隠れていた。


「詰所だ」
 と、リーが呟いた。


 まだ起きている竜騎士がいるのかもしれない。詰所よ窓からは、明かりが漏れていた。
 あるいは異変を察して目覚めた者がいるのかもしれない。


「リー。いけるか?」


「ああ。手筈通りに行こう。オレはこのチカラを使う。そしてシャルリスを仕留める。それが帝都のためなら――ッ」


 その昔、竜人族と呼ばれる種族がいた。【方舟】を言い聞かせて、空へと飛び立った。竜神教では、神、としてまつりあげている存在だ。


 半竜者ヘリコニアは、その末裔なのだと言う。
 ヘリコニアは子供を生むつもりがないらしい。仮に本人にその気があったとしても、着床率が異様に低いと聞く。
 よくわからないが、子供のできにくいカラダなんだろう。


 竜人族の血を絶やすわけにはいかない。
 5匹の都市竜たちを言い聞かせるさいにも、竜人族のチカラが働いたと聞いたことがある。
 仔竜たちを手なずけるのだって、ヤッパリ竜人族のチカラはあったほうが良い。


 人類はもう1度、竜人族を生み出そうと人体実験をつづけている。


 その実験を受けた者の99パーセントが死んでしまうのだと聞いている。
 しかしその実験を経て、生き残った個体があった。


 それが――。
 リー・フォルトだ。


 しかし完全な竜人族にはなれなかった。
 竜語だってしゃべれないし、マトモに竜化することも出来ない。


 そこから、つけられた名前が失敗作フォルト


「グラァァァ――ッ!」


 リーの左半身が、赤黒いドラゴンとなった。この姿は人に恐怖を与える。いくら神聖なるドラゴンだと言っても、右半身だけでは怪物のそれだ。


 リーは、ヘリコニアが子供を生まないと意固地になっているから、生み出された存在だと聞いている。


 しかしヘリコニアを恨もうとは思わない。


 自分だって、こんなカラダなのに、子供なんて生みたくないし、むしろヘリコニアには同情の気持ちだってあるし、理解しあえるんじゃないかな、とも思う。


 ともに、この残酷な世界の、犠牲者だ。


(バケモノには、バケモノってわけだ)


 シャルリスを殺す役目にリーが抜擢されている理由が、これだ。


 シャルリスもカラダに【腐肉の暴食】を宿しているのだから、お互いさまだ。それでもカラダにゾンビを飼ってるヤツよりかは、自分のほうがまだマシだろうと思う。


 シャルリスが戦っている姿を見たけれど、あれはどこからどう見てもゾンビだった。


「相変わらずすごい姿だな」
 と、マオが言った。


「あんまり見ないでくれよ」


「心配するなよ。たとえバケモノになっても、オレとゴウは、お前の親友だ」


 マオはそう言うと、握りこぶしを向けてきた。

 
 マオはドラゴンに乗っていたし、リーは変身していた。なのでコブシを合わせることは出来なかった。互いのコブシをブツけるような仕草だけにとどめた。



「ありがとう」
 リーは詰所に急降下した。

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