《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

執筆用bot E-021番 

16-3.殺人容疑

 ロンは牢獄に入れられることになった。


 石造りの部屋。鉄格子がかけられている。トイレとベッドだけが置かれていた。そのベッドに仰向けに寝転がった。


 石造りの天井が見える。


(どうなってやがる)


 何か尋問されるかと思ったのだが、マッタク何も聞きだされることはなかった。抵抗すれば、逃げられただろう。が、皇帝陛下が殺害されたと言うのだ。ここで逃げれば、罪を認めるようなものだ。


(あのジイさんが、死んだ?)


 皇帝が殺害なんて、口頭で伝えられただけでは信じられないものがあった。


 かなり歳を取っていたとはいえ、まだまだ存在感は強かった。しかも皇帝だ。身辺警護に抜かりはなかったはず。賊にやられたとか、そういうことはないだろう。


 幼いころから知っている相手だが、信じられない以上は、悲しみもあまり襲っては来なかった。


(つーか)


 皇帝殺害も信じられないが、自分とエレノアにその容疑がかけられている、というのも納得がいかない。


 最近、皇帝に直接会ったのが、ロンとエレノアなのだそうだ。
 

 たしかにロンは今朝、皇帝に会っている。
 エレノアも皇帝から結婚の話をいただいたと言っていた。


 それはいつだ?
 ロンと皇帝が会った前か。それとも後か。
 わからない。


 もしもロンと会ったより後に、エレノアが皇帝に会っているならば、ロンの疑いは晴れる。


(まさか、エレノア副長が……)


 皇帝を殺したということだろうか?
 だとしても動機がわからない。そんな様子もなかったように思う。


 自分の右の耳朶を、指でモみほぐした。


 イヤリングを外すのは、久しぶりのことだった。これを覚者の通信機にしていることが、知られているわけではないと思うが、没収された。


 外の状況が知りたいのだが、ハマメリスと連絡が取れないのは痛い。


 イヤリングで急に声を発せられるのは無粋だと思っていたが、ないと意外と心細いものだ。


「おーい。誰かいねェのか?」
 と、声を投げかけてみた。


 石造りの暗闇のなかに、ロンの声が反響した。返事はない。エレノアはまた別のところに閉じ込められているのだろう。


 拷問などされてなければ良いが――と、思う。


 罪人にたいして拷問などの行為は禁止されている。さりとて、皇帝殺害という異例の事態にたいしても、同じように扱ってくれるかはわからない。


 シャルリスのことも気にかかる。普段からそれほど警戒はしていないが、あまり長い時間、シャルリスを放っておくわけにもいかない。


 さりとて、牢獄をぶち壊すわけにもいかない。


(仕方ねェ)


 いずれ尋問されるだろう。そのときには、今より仔細を知ることが出来るはずだ。冤罪なのだから、疑惑もすぐに晴れるだろう。


 眠ろう。
 マブタを閉ざした。

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