《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
11-3.吹っ切れた迷い
「なんなんっスか。あの失礼な覚者は。あんなのがマジで覚者なんッスか。無神経すぎるっスよ。覚者に面接とかないンっスか? 人格はあんなんで許されるんっスか!」
空の上。
沼地に沈んでいるクルスニクの背中を見下ろすことが出来た。
竜化したロンの背中の上で、シャルリスは憤慨していた。
「変なヤツだからな」
と、しゃべる声は、人のときよりも太くしわがれている。
「まぁ、ロン隊長の友人だって言ってたから、許してあげるっスけど」
「あいつなりに激励を送ったつもりなんだろうさ」
「あれのどこが激励なんっスか!」
「でも、おかげで調子が戻ってきたみたいじゃないか。チョット前まで世界の終わりみたいな顔していたのにさ」
「あいつのおかげじゃないっスよ。ロン隊長のおかげで元気が出ただけっス。チェイテとアリエルを守ったのはボクで、それはボクにしか出来ないことだって。言ってくれましたから」
「その通りだ。オレの判断ミスを、シャルリスがカバーしてくれた」
尋ねたいことがあるんっスけど……と、シャルリスは穏やかな口調で切り出した。
「ロン隊長は、どうしてボクを殺さなかったんっスか」
「ん?」
「ボクが【腐肉の暴食】に呑み込まれそうになったとき、あの試験のときっスよ。あのアジサイって人が言うように、ふつうはボクを殺すべきだったと思うんです。ムカつくけど、あの人は間違えたことを言ってないっス」
責任を感じていた。それが大きな理由だ。しかしそれはロン自身の問題であって、シャルリスにかける言葉として、ふさわしいとは思えなかった。
「理由はいろいろあるがな。見てみたいと思ったのさ」
「なにをっスか?」
「3年も見習いをやっていて、それでも諦めなかった少女が、竜騎士になっているところを見てみたいと思ったのさ」
ウソではない。
それもまた、シャルリスに寄せていた期待のひとつだった。
「じゃあ、ボクが竜騎士を辞めたら、ロン隊長としてはガッカリしちゃうっスか?」
「たしかにガッカリするかもしれないが、だからって竜騎士を続けて欲しいと思ってるわけでもない。それはシャルリスの人生なんだし、オレがクチ出しするようなことでもねェだろ」
好きなようにすれば良い。
「もしボクが竜騎士を辞めたら、ロン隊長はどうするっスか?」
「それでも【腐肉の暴食】に寄生されている以上は、オレはシャルリスに付いている必要があるがな」
「そう――っスか」
「なんだ? オレみたいなのに付きまとわれるのはゴメンってか?」
「そ、そんなことないっスよ。ぜんぜん、そんなことは思ってないっス。むしろ逆というか、なんというか……」
と、シャルリスは言葉を濁した。
深刻な雰囲気にならないように茶化したのだが、逆に変な空気になってしまった。
「で、どうなんだ? 竜騎士を続けていく気はあるのか? もし揺らぎがあるなら、辞めておいたほうが良いぜ。チョットの迷いが死を招く」
「続けるッスよ!」
と、シャルリスは叫ぶように言った。
「ほお。えらく元気になったじゃないか」
「気づいたんっスよ。ボクが竜騎士を辞めたとしても、エレノアやアリエルは竜騎士をつづけるって」
「あの2人も、目標があるみたいだからな」
「ボクは卵黄学園でずっとひとりだったっス。あの2人が仲間になってくれたのは、ボクはうれしかったんっスよ。その環境を作ってくれたロン隊長にも感謝してるっス」
「ああ」
と、シャルリスの言葉を遮らないように、短く応じた。
「あそこがボクの居場所なんっスよ。チェイテやアリエルがいて、そしてロン隊長がいて。だからその場所を守るためにも、ボクは竜騎士をつづけようと思うっス。もちろん、いずれは覚者になって両親を探したいって気持ちもあるっスけど」
「まぁ、良いんじゃないか」
アリエルとチェイテの2人を、シャルリスが助けた。バトリのチカラを借りたとはいえ、それが自信につながったようだ。
「それから――」
「まだあるのか」
「ボクを生かしてくれたロン隊長に、恥じない生き方をしたいっスから」
「1人前なことを言いやがる」
にしし、と笑い声が聞こえる。
ロンはいま、シャルリスを背中に乗せている。その表情は見えない。けれど、歯を見せて笑っているのだろう。
ようやくシャルリスは、迷いを振り切ることが出来そうな様子だった。
わかっていた。3年もヘコたれずに竜騎士を目指していたシャルリスが、そう簡単に屈するはずがない。
「見えたっスよ。あれじゃないっスか?」
と、シャルリスが声をあげた。
前方。
赤黒いドラゴンが悠然と空を飛んでいた。帝都竜ヘルシングだ。
空の上。
沼地に沈んでいるクルスニクの背中を見下ろすことが出来た。
竜化したロンの背中の上で、シャルリスは憤慨していた。
「変なヤツだからな」
と、しゃべる声は、人のときよりも太くしわがれている。
「まぁ、ロン隊長の友人だって言ってたから、許してあげるっスけど」
「あいつなりに激励を送ったつもりなんだろうさ」
「あれのどこが激励なんっスか!」
「でも、おかげで調子が戻ってきたみたいじゃないか。チョット前まで世界の終わりみたいな顔していたのにさ」
「あいつのおかげじゃないっスよ。ロン隊長のおかげで元気が出ただけっス。チェイテとアリエルを守ったのはボクで、それはボクにしか出来ないことだって。言ってくれましたから」
「その通りだ。オレの判断ミスを、シャルリスがカバーしてくれた」
尋ねたいことがあるんっスけど……と、シャルリスは穏やかな口調で切り出した。
「ロン隊長は、どうしてボクを殺さなかったんっスか」
「ん?」
「ボクが【腐肉の暴食】に呑み込まれそうになったとき、あの試験のときっスよ。あのアジサイって人が言うように、ふつうはボクを殺すべきだったと思うんです。ムカつくけど、あの人は間違えたことを言ってないっス」
責任を感じていた。それが大きな理由だ。しかしそれはロン自身の問題であって、シャルリスにかける言葉として、ふさわしいとは思えなかった。
「理由はいろいろあるがな。見てみたいと思ったのさ」
「なにをっスか?」
「3年も見習いをやっていて、それでも諦めなかった少女が、竜騎士になっているところを見てみたいと思ったのさ」
ウソではない。
それもまた、シャルリスに寄せていた期待のひとつだった。
「じゃあ、ボクが竜騎士を辞めたら、ロン隊長としてはガッカリしちゃうっスか?」
「たしかにガッカリするかもしれないが、だからって竜騎士を続けて欲しいと思ってるわけでもない。それはシャルリスの人生なんだし、オレがクチ出しするようなことでもねェだろ」
好きなようにすれば良い。
「もしボクが竜騎士を辞めたら、ロン隊長はどうするっスか?」
「それでも【腐肉の暴食】に寄生されている以上は、オレはシャルリスに付いている必要があるがな」
「そう――っスか」
「なんだ? オレみたいなのに付きまとわれるのはゴメンってか?」
「そ、そんなことないっスよ。ぜんぜん、そんなことは思ってないっス。むしろ逆というか、なんというか……」
と、シャルリスは言葉を濁した。
深刻な雰囲気にならないように茶化したのだが、逆に変な空気になってしまった。
「で、どうなんだ? 竜騎士を続けていく気はあるのか? もし揺らぎがあるなら、辞めておいたほうが良いぜ。チョットの迷いが死を招く」
「続けるッスよ!」
と、シャルリスは叫ぶように言った。
「ほお。えらく元気になったじゃないか」
「気づいたんっスよ。ボクが竜騎士を辞めたとしても、エレノアやアリエルは竜騎士をつづけるって」
「あの2人も、目標があるみたいだからな」
「ボクは卵黄学園でずっとひとりだったっス。あの2人が仲間になってくれたのは、ボクはうれしかったんっスよ。その環境を作ってくれたロン隊長にも感謝してるっス」
「ああ」
と、シャルリスの言葉を遮らないように、短く応じた。
「あそこがボクの居場所なんっスよ。チェイテやアリエルがいて、そしてロン隊長がいて。だからその場所を守るためにも、ボクは竜騎士をつづけようと思うっス。もちろん、いずれは覚者になって両親を探したいって気持ちもあるっスけど」
「まぁ、良いんじゃないか」
アリエルとチェイテの2人を、シャルリスが助けた。バトリのチカラを借りたとはいえ、それが自信につながったようだ。
「それから――」
「まだあるのか」
「ボクを生かしてくれたロン隊長に、恥じない生き方をしたいっスから」
「1人前なことを言いやがる」
にしし、と笑い声が聞こえる。
ロンはいま、シャルリスを背中に乗せている。その表情は見えない。けれど、歯を見せて笑っているのだろう。
ようやくシャルリスは、迷いを振り切ることが出来そうな様子だった。
わかっていた。3年もヘコたれずに竜騎士を目指していたシャルリスが、そう簡単に屈するはずがない。
「見えたっスよ。あれじゃないっスか?」
と、シャルリスが声をあげた。
前方。
赤黒いドラゴンが悠然と空を飛んでいた。帝都竜ヘルシングだ。
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