《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
7-5.世界の真実
「ターゲットがゾンビ化の傾向にあり。これより【腐肉の暴食】に寄生されたターゲットの抹殺をおこなう」
イヤリングにそう言った。
ハマメリスから、「了解」
「業火」
シャルリスのカラダを燃やそうとした瞬間だった。シャルリスの目に光が戻ってきた。その瞳に血でも流れ込んでいるのではないかと思うほど、目が赤く染まってゆく。
「久しぶりじゃなァ。竜人族の末裔」
「【腐肉の暴食】か」
燃やそうとした。が、すこし遅れた。シャルリスのカラダだと思うと躊躇が生じてしまったのだ。
【腐肉の暴食】はロンのことを蹴り飛ばして、湖のほうに跳びずさった。着水。水しぶきが盛大にあがる。
ロンもすぐに態勢をととのえる。対峙した。
ロンの足元は陸になっていたが、湖の際なのでぬかるんでいた。
「セッカクの再会じゃというのに、ワシのことを殺そうとするとは、つれないヤツじゃわ。ワシはオヌシとの再会を楽しみにしていたというのに」
「オレのほうは、二度と会いたくなかったよ」
「照れ隠しをしおって。ずいぶんとこの娘に執心していたようじゃないか。このロリコンめ」
と、【腐肉の暴食】は自身のコメカミを指差して言った。
「違げェ」
なぜかここ数日のあいだで、ロンはすっかりロリコンキャラが定着しつつある。
ゆゆしき事態である。
「ワシの名前は、ルガル・バトリじゃ。【腐肉の暴食】というのは、人間どもが勝手につけた肩書きじゃからな。名前で覚えておくれ」
「ゾンビのくせに、名前があるのか」
「ワシはゾンビの始祖じゃからな。名前もまだ捨ててはおらん。あのマシュという小娘もそうじゃな」
と、バトリはにやにやと笑いながら言う。
いや。
笑っているのかどうか判然としない。
頬までクチが裂けているのだが、その頬を赤い糸のようなもので縫いとめてある。笑っているように見えるのだ。
シャルリスのカラダのはずだが、もうその名残は着ている装備ぐらいだ。布の鎧のうえから、竜具をまとっている。
「わけがわかんねェな。始祖ってヤツは、ゾンビじゃねェのか」
「すこし昔話をしよう。かつて人がドラゴンの背中に乗って暮らすようになるより以前のことじゃ」
「オレもまだ生まれてねェ時代だな。年よりの昔話か」
ロンの揶揄を無視して、バトリは続ける。
「当時、人はドラゴンという存在に困らされておった。ドラゴンを手懐ける術を持たなかったからな。ドラゴンに人が食われることもままあった。そこで人間がつくりだしたのがゾンビじゃ」
「話の流れが見えねェな。なんで、ドラゴンに食われるから、ゾンビができる? 食われても平気なカラダになりたかったか?」
バトリの話が真実なのかどうかはわからない。ロンの隙を生むためかもしれない。警戒はしていた。だが、聞くに値する話だとは思った。
いまだ地上にゾンビが蔓延した理由は定かではないのだ。
違うな、とバトリはかぶりを振った。
「ドラゴンの餌を作るためじゃ。ワシは食われるために造られた第1号ということじゃ」
バトリはみずからの胸に手を当ててそう言った。
「なるほど。それで暴食か」
「そう。ワシは食べるから暴食なのではない。食べられるから暴食なのじゃ」
「なら、マッシュ・ルーマンもその類いか」
「そうじゃ。ゾンビの始祖というのは、つまりドラゴンの食用に造られた人間じゃ。だから通常のゾンビとはわけが違う」
「人肉を食うなんて、オレはゴメンだがな」
「そりゃオヌシの食うものは、ドラゴンではなく、人の嗜好に似ておるからな」
「へぇ。オレのことをよく知ってるじゃねェか」
シャルリスと、都市竜に餌をやっていたことを思い出した。
たしかにドラゴンは、人を食べるのだ。
「ワシはな、幾度となくこの肉をそぎ落とされて、削られて、ドラゴンの食欲を満たすオモチャになっておった。削られても、砕かれても、ふたたび肉が再生していくのじゃから。死ぬことも出来ん。そんな苦痛のなか、ワシは、自分を造り上げた人間という醜悪な生き物を憎悪した」
「……」
ロンは黙って、バトリの話に耳を傾けることにした。さすがに茶化せる内容ではなかった。
「ワシをはじめに、始祖と言われる食用人間は体内に《不死の魔力》という魔力が流れておる。その魔力を他人に付与することで、人間をいわゆるゾンビに変貌させることが出来るわけじゃな」
その結果が、これじゃ――とバトリが、大仰に手を広げてつづけた。
「ワシの血には《不死の魔力》が込められておる。その血は瘴気となって世界に広まった。それがゾンビ化じゃ。これはワシら食用人間を造った連中も誤算だったようじゃな。そこから後はオヌシも知っておろう。人々はゾンビとなって、その病を感染させていった。ワシの憎悪が世界を支配した」
なるほど。
バトリの血が、地上に蔓延する瘴気の正体だとすると、血のような赤い色をしていることにも合点がいく。
「そして人々は【方舟】で空へ逃げたというわけか。しかし、よく【方舟】なんてドラゴンをあやつれたな」
「人が造り出したのは、ドラゴンの餌だけではないからのぉ」
「知ってることがあるなら、話してもらおうか」
隠すすもりは、ありゃせん――と、バトリは笑って続ける。
「ドラゴンから、かつての人は精液を盗みとることに成功した」
「そりゃ、大層なものを盗み出したもんだ」
「その精液と、人間の女性を掛け合わせてできたのが、オヌシのご先祖さまじゃ」
「オレ?」
他人事だと思っていたのに、急に自分の話になったものだから不意を突かれた。
バトリの足が動いた。
湖が波打っている。
ロンのほうに歩み寄ってくる。
「それが、竜人族のはじまりじゃ。竜人族は竜語をしゃべれるじゃろう。【方舟】に話をして、人は空に逃げた。そしてようやく、人はドラゴンを手懐けることに成功したというわけじゃ」
「なるほど」
この世界に蔓延する瘴気の正体。ロンが竜語をしゃべれる理由。あらゆることに筋が通る。ウソはついていないのだろう。
あるいは、よくできた作り話か……。
「餌として造られたワシを、哀れじゃと思わんか」
「さぁな」
「ワシもオヌシも、ドラゴンという脅威から逃れるために生み出された、いわば仲間であろう」
「だからといって、お前を見逃すわけにはいかねェな。お前を抹殺しろって言われてるんでね」
歩み寄ってきた、バトリの足が止まる。
「生物は欲求に忠実じゃ。それはゾンビとて同じこと。ゾンビがどういう原理から、人を襲うか知っておるかな」
「性欲だと聞いたがな」
「端的に言えば、そうじゃな。《不死の魔力》は人の理性を奪い、さらに他人のカラダへと蔓延していく傾向がある。生存本能じゃな。そしてワシはいま、無性にオヌシに惹かれておる」
「こんな状況で、告白か」
「そうじゃ。ドラゴンの血を持つ人間。その者を犯してやりたい。オヌシを犯すことは、新たなゾンビの可能性。その高潔なるドラゴンの血への攻略を試みたい――ッ」
バトリが駆けた。
疾駆してくる。
「同情はしてやらんこともないが、てめェの毒牙にかかるのはゴメンだ」
バトリの腕が伸びてきた。コブシ。かわす。バトリのコブシはロンの右側を通過していった。
そのままトグロを巻くようにして、ロンのカラダに巻きついてきた。
カラダが拘束される。
「さあ。大人しくワシの物になれ。オヌシのゾンビならこの上なく、可愛がってやるぞ」
「あいにく、いくらモテなくても、ゾンビに相手にされるのだけはゴメンだぜ」
全身を拘束するように、腕が巻きついている。
ロンは魔法でみずからのカラダから炎を発した。バトリの腕が燃え上がる。炎が本体に伝わらないうちに、バトリは腕を切断したようだった。
切り落とされた腕が灰となって舞い上がる。
「さすが高潔なるドラゴンの炎。ゾンビを燃やすか。ワシの天敵じゃな」
「どうしてシャルリスのカラダに寄生した。その娘に罪はなかったのに」
「意味はない。ただ、前回のオヌシとの戦で、ワシは大きく消耗したからな。少女の体内にもぐりこんで、チカラをたくわえておったというだけじゃ」
「チクショウが」
「いひひっ。そうとも。ワシはドラゴンに食われるために生み出された畜生じゃ」
バトリはそう言うと、頬を縫いとめている糸を引きちぎった。
赤い糸が大気中に溶けてゆく。
バトリがその頬まで裂けたクチを大きく開けた。クチ内から大量の腕が生えてきた。千本もあるかと思われる腕の束だ。濁流のように襲いかかってきた。
魔法陣を展開する。
火球を射出した。しかしそれを打ち消すようにして、水球を放ってきた。
「なにっ、魔法だとッ」
「ワシとてもとは人間。魔法を使えぬと思うていたか」
炎と水が衝突して、水蒸気があがってきた。その水蒸気を吹き飛ばすようにして、千本束になったような腕の群れが、ロンに跳びかかってくる。
魔法。
間に合わないか。
なら――。
竜化した。
ロンの頭から角が生えてくる。頬が割けてゆく。首が太くなり、そして伸びてゆく。背中から翼がひらめいた。そして全身が黒いウロコで覆われる。千本束の腕を食いちぎった。
「待っておったぞ。その美しいドラゴンの姿を。さあ、ワシと踊ろうではないか。死の舞踏を。復讐の演舞をいま見せんッ」
バトリのカラダが少女のそれから、いっきに肥大化した。最初に見たときと同じだ。脂肪のカタマリだ。肉のカタマリ。その頭上に小さな頭部が埋もれていた。
「バケモノめ」
「お互いさまじゃ」
イヤリングにそう言った。
ハマメリスから、「了解」
「業火」
シャルリスのカラダを燃やそうとした瞬間だった。シャルリスの目に光が戻ってきた。その瞳に血でも流れ込んでいるのではないかと思うほど、目が赤く染まってゆく。
「久しぶりじゃなァ。竜人族の末裔」
「【腐肉の暴食】か」
燃やそうとした。が、すこし遅れた。シャルリスのカラダだと思うと躊躇が生じてしまったのだ。
【腐肉の暴食】はロンのことを蹴り飛ばして、湖のほうに跳びずさった。着水。水しぶきが盛大にあがる。
ロンもすぐに態勢をととのえる。対峙した。
ロンの足元は陸になっていたが、湖の際なのでぬかるんでいた。
「セッカクの再会じゃというのに、ワシのことを殺そうとするとは、つれないヤツじゃわ。ワシはオヌシとの再会を楽しみにしていたというのに」
「オレのほうは、二度と会いたくなかったよ」
「照れ隠しをしおって。ずいぶんとこの娘に執心していたようじゃないか。このロリコンめ」
と、【腐肉の暴食】は自身のコメカミを指差して言った。
「違げェ」
なぜかここ数日のあいだで、ロンはすっかりロリコンキャラが定着しつつある。
ゆゆしき事態である。
「ワシの名前は、ルガル・バトリじゃ。【腐肉の暴食】というのは、人間どもが勝手につけた肩書きじゃからな。名前で覚えておくれ」
「ゾンビのくせに、名前があるのか」
「ワシはゾンビの始祖じゃからな。名前もまだ捨ててはおらん。あのマシュという小娘もそうじゃな」
と、バトリはにやにやと笑いながら言う。
いや。
笑っているのかどうか判然としない。
頬までクチが裂けているのだが、その頬を赤い糸のようなもので縫いとめてある。笑っているように見えるのだ。
シャルリスのカラダのはずだが、もうその名残は着ている装備ぐらいだ。布の鎧のうえから、竜具をまとっている。
「わけがわかんねェな。始祖ってヤツは、ゾンビじゃねェのか」
「すこし昔話をしよう。かつて人がドラゴンの背中に乗って暮らすようになるより以前のことじゃ」
「オレもまだ生まれてねェ時代だな。年よりの昔話か」
ロンの揶揄を無視して、バトリは続ける。
「当時、人はドラゴンという存在に困らされておった。ドラゴンを手懐ける術を持たなかったからな。ドラゴンに人が食われることもままあった。そこで人間がつくりだしたのがゾンビじゃ」
「話の流れが見えねェな。なんで、ドラゴンに食われるから、ゾンビができる? 食われても平気なカラダになりたかったか?」
バトリの話が真実なのかどうかはわからない。ロンの隙を生むためかもしれない。警戒はしていた。だが、聞くに値する話だとは思った。
いまだ地上にゾンビが蔓延した理由は定かではないのだ。
違うな、とバトリはかぶりを振った。
「ドラゴンの餌を作るためじゃ。ワシは食われるために造られた第1号ということじゃ」
バトリはみずからの胸に手を当ててそう言った。
「なるほど。それで暴食か」
「そう。ワシは食べるから暴食なのではない。食べられるから暴食なのじゃ」
「なら、マッシュ・ルーマンもその類いか」
「そうじゃ。ゾンビの始祖というのは、つまりドラゴンの食用に造られた人間じゃ。だから通常のゾンビとはわけが違う」
「人肉を食うなんて、オレはゴメンだがな」
「そりゃオヌシの食うものは、ドラゴンではなく、人の嗜好に似ておるからな」
「へぇ。オレのことをよく知ってるじゃねェか」
シャルリスと、都市竜に餌をやっていたことを思い出した。
たしかにドラゴンは、人を食べるのだ。
「ワシはな、幾度となくこの肉をそぎ落とされて、削られて、ドラゴンの食欲を満たすオモチャになっておった。削られても、砕かれても、ふたたび肉が再生していくのじゃから。死ぬことも出来ん。そんな苦痛のなか、ワシは、自分を造り上げた人間という醜悪な生き物を憎悪した」
「……」
ロンは黙って、バトリの話に耳を傾けることにした。さすがに茶化せる内容ではなかった。
「ワシをはじめに、始祖と言われる食用人間は体内に《不死の魔力》という魔力が流れておる。その魔力を他人に付与することで、人間をいわゆるゾンビに変貌させることが出来るわけじゃな」
その結果が、これじゃ――とバトリが、大仰に手を広げてつづけた。
「ワシの血には《不死の魔力》が込められておる。その血は瘴気となって世界に広まった。それがゾンビ化じゃ。これはワシら食用人間を造った連中も誤算だったようじゃな。そこから後はオヌシも知っておろう。人々はゾンビとなって、その病を感染させていった。ワシの憎悪が世界を支配した」
なるほど。
バトリの血が、地上に蔓延する瘴気の正体だとすると、血のような赤い色をしていることにも合点がいく。
「そして人々は【方舟】で空へ逃げたというわけか。しかし、よく【方舟】なんてドラゴンをあやつれたな」
「人が造り出したのは、ドラゴンの餌だけではないからのぉ」
「知ってることがあるなら、話してもらおうか」
隠すすもりは、ありゃせん――と、バトリは笑って続ける。
「ドラゴンから、かつての人は精液を盗みとることに成功した」
「そりゃ、大層なものを盗み出したもんだ」
「その精液と、人間の女性を掛け合わせてできたのが、オヌシのご先祖さまじゃ」
「オレ?」
他人事だと思っていたのに、急に自分の話になったものだから不意を突かれた。
バトリの足が動いた。
湖が波打っている。
ロンのほうに歩み寄ってくる。
「それが、竜人族のはじまりじゃ。竜人族は竜語をしゃべれるじゃろう。【方舟】に話をして、人は空に逃げた。そしてようやく、人はドラゴンを手懐けることに成功したというわけじゃ」
「なるほど」
この世界に蔓延する瘴気の正体。ロンが竜語をしゃべれる理由。あらゆることに筋が通る。ウソはついていないのだろう。
あるいは、よくできた作り話か……。
「餌として造られたワシを、哀れじゃと思わんか」
「さぁな」
「ワシもオヌシも、ドラゴンという脅威から逃れるために生み出された、いわば仲間であろう」
「だからといって、お前を見逃すわけにはいかねェな。お前を抹殺しろって言われてるんでね」
歩み寄ってきた、バトリの足が止まる。
「生物は欲求に忠実じゃ。それはゾンビとて同じこと。ゾンビがどういう原理から、人を襲うか知っておるかな」
「性欲だと聞いたがな」
「端的に言えば、そうじゃな。《不死の魔力》は人の理性を奪い、さらに他人のカラダへと蔓延していく傾向がある。生存本能じゃな。そしてワシはいま、無性にオヌシに惹かれておる」
「こんな状況で、告白か」
「そうじゃ。ドラゴンの血を持つ人間。その者を犯してやりたい。オヌシを犯すことは、新たなゾンビの可能性。その高潔なるドラゴンの血への攻略を試みたい――ッ」
バトリが駆けた。
疾駆してくる。
「同情はしてやらんこともないが、てめェの毒牙にかかるのはゴメンだ」
バトリの腕が伸びてきた。コブシ。かわす。バトリのコブシはロンの右側を通過していった。
そのままトグロを巻くようにして、ロンのカラダに巻きついてきた。
カラダが拘束される。
「さあ。大人しくワシの物になれ。オヌシのゾンビならこの上なく、可愛がってやるぞ」
「あいにく、いくらモテなくても、ゾンビに相手にされるのだけはゴメンだぜ」
全身を拘束するように、腕が巻きついている。
ロンは魔法でみずからのカラダから炎を発した。バトリの腕が燃え上がる。炎が本体に伝わらないうちに、バトリは腕を切断したようだった。
切り落とされた腕が灰となって舞い上がる。
「さすが高潔なるドラゴンの炎。ゾンビを燃やすか。ワシの天敵じゃな」
「どうしてシャルリスのカラダに寄生した。その娘に罪はなかったのに」
「意味はない。ただ、前回のオヌシとの戦で、ワシは大きく消耗したからな。少女の体内にもぐりこんで、チカラをたくわえておったというだけじゃ」
「チクショウが」
「いひひっ。そうとも。ワシはドラゴンに食われるために生み出された畜生じゃ」
バトリはそう言うと、頬を縫いとめている糸を引きちぎった。
赤い糸が大気中に溶けてゆく。
バトリがその頬まで裂けたクチを大きく開けた。クチ内から大量の腕が生えてきた。千本もあるかと思われる腕の束だ。濁流のように襲いかかってきた。
魔法陣を展開する。
火球を射出した。しかしそれを打ち消すようにして、水球を放ってきた。
「なにっ、魔法だとッ」
「ワシとてもとは人間。魔法を使えぬと思うていたか」
炎と水が衝突して、水蒸気があがってきた。その水蒸気を吹き飛ばすようにして、千本束になったような腕の群れが、ロンに跳びかかってくる。
魔法。
間に合わないか。
なら――。
竜化した。
ロンの頭から角が生えてくる。頬が割けてゆく。首が太くなり、そして伸びてゆく。背中から翼がひらめいた。そして全身が黒いウロコで覆われる。千本束の腕を食いちぎった。
「待っておったぞ。その美しいドラゴンの姿を。さあ、ワシと踊ろうではないか。死の舞踏を。復讐の演舞をいま見せんッ」
バトリのカラダが少女のそれから、いっきに肥大化した。最初に見たときと同じだ。脂肪のカタマリだ。肉のカタマリ。その頭上に小さな頭部が埋もれていた。
「バケモノめ」
「お互いさまじゃ」
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