《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

執筆用bot E-021番 

5-3.3人一組

「エレノア竜騎士長となにしゃべってたんっスか?」


「まぁ、他愛もないようなことだよ」


「なんかボク、鼻であしらわれたっぽいっスけど、ヤッパリ期待されてないんっスかねぇ」


「期待されてると思ったのか?」


「意地の悪い質問しないでくださいよ」
 と、シャルリスは肩を落としていた。


 ロンは笑った。


「気にするな。オレは期待してるから」


「マジっスか?」


「もちろん」


「にしし。お世辞でもうれしいっス」
 と、シャルリスは後頭部を照れ臭そうに掻いていた。


 シャルリスに竜騎士としての才能はないのだろう。ドラゴンにも乗れず、魔法もろくに使えない。
 それでも、竜騎士になろうとする意気込みだけは1人前だ。気持ちだけで、どうにかなるとも思えないが、シャルリスのような娘にこそ成功して欲しい、というロンの願望がふくまれていた。


 3年もその目標がぶれないのだから、それはそれで才能だろうとも思う。


 教室――。


 石造りの立方体の部屋だ。最初にロンがシャルリスと出会った部屋だ。ここが補欠隊の使う教室だった。
 鎖につながれたドラゴンが、その首を自身の背中にまわして、ウロコをナめていた。


「そう言えば近々、都市竜が羽休めのために着陸するらしい。そのさいに各生徒の実力を見るとか言ってたぜ」


「えーっ。マジっスか」
 と、シャルリスが大きな声をあげた。
 声にビックリしたのか、ドラゴンが威嚇をするように翼を広げていた。


「そんなに驚くようなことなのか?」


「試験っスよ。試験。見習い竜騎士たちのなかから、竜騎士として認められるかどうかの試験っスよ。その試験で審査員たちに認められれば、晴れて正式な竜騎士になれるっス」


「そんなすぐに試験があるのか」


 ロンがこちらに着任してから、まだ2日目である。


「都市竜が羽を休めるタイミングで、ときおり行われるんっスよ。都市竜の気分なんで、試験が行われるのは不定期なんっス」


「具体的には、どんなことをするんだ?」


「まぁ……いろいろっスよ。水汲み隊のかわりに水を汲んできたり、樵隊のかわりに木を採ってきたり、あとは海産物やら鉱山物資を採ってきたりするんっス。採ってきた資源が多ければ多いほど、評価が高くなるんっス」


「地上に行くってことは、ゾンビと遭遇することもあるだろ」


「要するに、実戦試験っスね」


「危険じゃないのか?」


「そりゃ危ないっスけど、ゾンビとの戦いで使い物にならなかったら、竜騎士にはなれないっスから」


「そりゃそうか」


「あぁ……。でも今年はどうしましょうか。ボクひとりしかいないから、もしかして参加できないっスかね」


「仲間がいるのか?」


「竜騎士は基本的に小隊で動くっスから。それに合わせて、3人一組で動くことになるっスよ」


「3人か。今までは、どうしてたんだ?」


「今までは、試験のときだけ他の先生の小隊にまぜてもらってたっスけど、今年は先生いますし……」
 と、シャルリスが、ロンのことを見あげてくる。


「べつにオレに気遣うことはないぜ。ほかの先生のところに行かないと、試験を受けれないなら、そうすれば良いさ」


 シャルリスを観察する身としては、シャルリスを傍に置いておくべきだ。が、自分のせいでシャルリスがテストを受けれないというのは、さすがに胸が痛い。


「いえ。ボクは先生といっしょにガンバりたいっス。どうせ他の小隊に入れてもらっても邪魔者扱いされるだけですし」
 と、シャルリスは苦笑していた。


 いままでシャルリスが、どうやって試験を受けてきたのかは、想像するしかない。
 オチコボレと言われている生徒が、ほかの小隊に簡単に入れてもらえるとは思えない。辛酸をナめてきたのだろう。


「テスト、受けれなくても良いのか?」


「今度だけじゃないっスから。けっこうヒンパンに行われるっスよ」


 いったい何を意味する仕草なのかわからないが、シャルリスは人差し指を立てて、それをメトロノームのように振っていた。


「まぁ、早い話。あと2人の生徒を、オレが集めれば良いんだろ。で、3人集まれば試験を受けれる」


 まぁ、そうっすけど――とシャルリスはつづけた。


「でも、補欠隊とか言われるのに、ボクといっしょにチームを組んでくれる人なんていないっスよ。それに大半の生徒は、ほかの先生の隊に入ってますから、引き抜くのは難しいっス」


「いや、ひとり心当たりがなくもない」


「マジっスか」


「ドラゴンに乗る練習より先に、まずそっちに声をかけてみるか」


「賛成っス。ボクも仲間が欲しいっスから」
 と、シャルリスは目を輝かせていた。

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