《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

執筆用bot E-021番 

4-3.シャルリスの疑惑

《ヘリコニアがついていながら、感染爆発を起こしてしまうとは》
 と、ハマメリスが皮肉めいたことを言う。


「だから言ったじゃねェか。オレは男だから女子寮には入れねェんだ。これは人選ミスだ」


《ターゲットは?》


「いま、探してる」


《【腐肉の暴食】に肉体を乗っ取られている可能性があります。その場合は、即座に抹殺してください》


「まだ、シャルリスが原因だと決まったわけじゃない。ほかの要因かもしれない」


《わかっています。ターゲットに異常が見られない場合は、保護して観察をつづけてください》


「ああ」


 シャルリスがどこの部屋にいるのかが、わからない。
 事前に訊いておくべきだった。


 ひとつひとつ部屋を確認していく必要があった。
 トビラを蹴り破るようにして開き、中を確認していく。
 たいはんの生徒は、すでに外に逃げているようだ。どこの部屋も無人だった。


 いまのところ、チェイテを襲ったゾンビ1匹と、チェイテを避難させるさいに遭遇した1匹だけだ。
 あまり感染は広がっていないのかもしれない。


 感染のはじまりは、チェイテがいた部屋の近くだろう。
 そう考えて、付近を探してみたのだが、ゾンビもシャルリスも見当たらなかった。
 仕方がないので、シラミツブシに探していた。


 左右にトビラの並んだ通路を歩いているときだった。
 正面のトビラが開いた。
 ゾンビかと思って警戒した。


「あ、先生。女子寮でなにしてるんっスか」


 出てきたのはシャルリスだった。
 とりあえず無事なようだ。
 安堵した。


「そっちこそ、まだ避難してなかったのか」


「避難ってなにっスか?」


「下の階でゾンビが出て騒ぎになってる」


「えぇ! マジっスか」


「知らないのか?」


「ボクは寝てたっスから。なんか騒がしいなと思って、起きてきたら先生がいたんっスよ」


 たしかに寝起きのようで、赤いショートボブの髪が乱れていた。
 目もまだ開ききっていない。


 パジャマを着ていた。デフォルメされたドラゴンが胸に描かれていた。
 この緊迫した状況に似合わぬデザインだという感想をいだいた。


「カラダに異変とかないか?」


「ゾンビに噛まれてないか心配してるっスか? ボクは問題ないっスよ。痛みとかないですし」


「そうか……」


 この感染の原因は、シャルリスではなさそうだ。
 シャルリスならば、こんなに平然としていないはずだ。


 なによりゾンビのいた部屋がマッタク別の場所だった。
 チェイテがいたのは1階だ。ここは3階である。


「とりあえず逃げるぞ」


「了解っス」


 ほかに残っている生徒がいないか見回りながら、寮を出ることにした。
 生徒たちは女子寮のまえに集まっていた。先生たちも集まっている。


 感染した生徒がいないか、エレノアをはじめとする先生たちが確認していた。


 その群衆のなかにシャルリスを連れ込んで、ロン自身はその場から離れることにした。


「ターゲットを確保。どうやらシャルリスが原因で感染が起こったわけではないらしい」
 と、イヤリングに言う。


《ターゲットに異常は?》


「いいや。マッタクなにもない。異常に気付かずに寝ていたらしい。それにゾンビがいた部屋とターゲットは離れた場所にいた」


《了解。それでは、引き続きターゲットの観察を継続してください》


「まだオレに続投させるのかよ」


《ヘリコニアが女子寮に入れない問題は、こちらで解決しました。じきに話が行くと思います》


 さすが覚者である。
 ロンのことを教師として推薦したように、何かしらの手を回したのだろう。


「どう解決したんだ? まさか女子寮の寮監に抜擢されたわけじゃないだろうな」


 さすがにそれは、ムリがある。


《具体的にはじきにわかると思います》


「今回の感染経路を調べる必要は?」


《そちらは、エレノア竜騎士長たちが解決するでしょう。ヘリコニアは、ヘリコニアの任務に集中してください》


 了解、とロンはつづけた。


「それからな。オレはヘリコニアじゃなくて、ロンだからな」


《これはコードネームです。ヘリコニア》
 と、いつもと同じ調子で返してきた。


 ひとまずシャルリスの抹殺は、免れたようだ。ロンは胸をナでおろした。


 現役の竜騎士たちが、文字通り飛んできていた。竜騎士たちが、女子寮を包囲しているのを見届けて、ロンはその場を後にした。

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