今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

彷徨う生死


「……」
「……」
「…………えっと」

デジャヴ!

家に着いて橋下くんが帽子を脱ぐと、双子は目をまんまるにして固まってしまった。

「マオだ」
「マオくん」
「お、ドラマ観てくれてるんだ。サンキュー」

マオは、橋下くんが出てるドラマの役名。主人公の恋人役で、結構出番あるんだ。特に、瑞季が好きでね。

「わあ。おねえちゃん、マオくんと友達?」
「うん。挨拶してね」
「要です! よろしく!」
「瑞季です。お願いしますっ!」
「おう、よろしくな!」

やっと、青葉くんの後ろから出てきたわ。

双子のはしゃぐ様子を見た私は、買い物へ行くための準備をする。
今日は橋下くんもいるし、制服でいいや。お財布と買い物バッグ持って、後は……。

「青葉くん、着替える?」
「あ、持ってきてない。このまま行くよ」
「暑くない? 貸すけど」
「……お借りします」
「うん! 橋下くんは?」
「私服より制服の方が目立たないから、このままで」
「わかったわ。麦茶、いる?」
「あ、俺やる」
「お願いしちゃお。Tシャツ取ってくる。瑞季、要、お兄ちゃんたちのところ居てね」
「うん!」
「わかった!」

さてと。
パパのTシャツの中で、青葉くんっぽいのあるかな。

「マオ!」
「マオくん!」

ふふ。双子、はしゃいでるわ。

私は、4人をリビングに置いて2階へと向かう。


***


「あ!」
「どうしたの?」

無事買い物を済ませた私たちは、家へと帰っていた。
けど、もうすぐってところで、買い忘れに気付いちゃった。

「お塩、切れてたんだ……」
「今から戻る?」
「うーん……」

今から戻ると、結構時間掛かっちゃうな。青葉くんと橋下くんにも荷物持たせちゃってるし、申し訳ない。それに、炎天下の中青葉くんを歩かせたくないなあ。

「近くのコンビニで買ってきちゃう。鍵渡すから、先に帰っててもらってもいい?」
「わかった。冷蔵品入れたいから、冷蔵庫開けてもいい?」
「お願い! ……瑞季、要。2人の言うこと聞くのよ」

私がポケットから鍵を取り出すと、青葉くんが受け取ってくれた。

「ぼく、コンビニ行きたい!」
「マオくん出てるグミ欲しいの!」
「私買ってくるから」
「やだ! ねえちゃん、絶対間違える」
「……」

2回、間違えて違う味買ってきちゃったことがあったの。覚えてたんだ。

「じゃあ、青葉くんと橋下くんで家帰れる?」
「え、いいの?」
「何が? 冷蔵品だけ入れてくれたら、後はくつろいでて。さっき冷房入れたから涼しいはず。飲み物とかも好きに飲んで」
「うい。梓の持ってる荷物、オレ持つよ」

私は、橋下くんにお礼を言って荷物を預けた。
今日は、美味しいご飯作らないとね! お礼も兼ねて。

「ごめんね。お願いします」
「おう。気をつけてな」
「いってらっしゃい」
「うん! 瑞季、要行こう」

さて、早く済ませよう。


***

梓たちは、オレらに荷物を預けるとそのままコンビニへと行ってしまった。あっちに向かったってことは、東小の裏手か?

「……マジで危機感ねえな」
「でしょう。俺が不安になる理由わかった?」

あいつさ、オレらが家のもの盗んだりとかって考えねぇの?
いや、しないけどさ。でも、少しは他人なんだから疑わないと。いつか絶対詐欺とかにひっかかるぞ、あれは。

「……オレらで梓たちのこと守ろうな」
「俺だけで十分」
「嫉妬すんなよ」
「でも、それだけ信用されてるのかも」
「なら、ちゃんと応えないと」

梓の家、迷うかと思ったけどすんなり着いたぜ。一軒家っていいな。オレも五月もマンションだから、新鮮。

五月がポケットから鍵を取り出すのを隣で眺めていると、

「鈴木さん、毎朝スーパーのチラシ見て夕飯の献立決めるんだって」
「へえ」
「俺、作りたいもの好きに作ってるからさ。そういう作り方できる鈴木さん、尊敬する」
「そういうところも好きなのか?」
「……うん」

そう言って、少しだけ顔を赤くしてきた。……暑さのせいかどうか知らねえけど。

「お邪魔しますー」
「失礼します」

オレらは、そのままリビングへ上がり込んで冷蔵品の仕分けに向かう。

「で? 付き合う気になったんか?」
「……多分、鈴木さんは俺なんか必要ないだろうけどさ」

すると、五月がキャベツや白菜を袋から出しながらつぶやくように言葉を発してきた。ほんと、小せぇの。聞かせる気ないんか?

「もし、鈴木さんが折れた時、側にいるのが俺ならいいなって思ってるだけ」
「それって……」
「もちろん、付き合う付き合わない関係なしに………!?」
「……? どうした、さつ」

冷蔵庫へ野菜や肉を詰め込み終わった時、五月の言葉が不意に止まる。疑問に思ったオレが顔をあげると、そこにはありえない光景が待ち受けていた。

こんなの、ドラマの撮影にしか見たことねえぞ。

「手ェあげて動かんといてくれへん、坊や?」

そこには、こちらへ向かって微笑んでいる男性がいた。
それだけなら、ここまで驚かねぇ。

「……五月」
「……従おう」

そいつの手には、1丁の銃が握られている。

しかも、銃口を真っ直ぐこちらに向けて。



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品