不遇の魔道具師と星の王
第26話 大所帯の仲間
「・・・は?」
山賊からまさか雇ってくれと言われるとは思わなかったので間抜けな声を出してしまった。一時的に思考停止したがすぐに冷静な思考を取り戻す。
「俺がお前たちを信用できると思うか?」
「そういわれても仕方ないだろう。しかし俺たちはもうあんた達に敵対する気はないんだ。なにせ…」
山賊の頭は俺の後方に広がっている山岳地帯の一角を見つめる。
「あんな山一つ消し飛ばせるほどの力を持った男と敵対して無事でいられるとは思えない。」
男は本当に悔しそうな表情をしながらそう言った。おそらく、この男は自分が勝てないと思ってしまうような不甲斐なさと自分の仲間を振り回している情けなさを悔いているのだろう。
だが、俺は一つとても気になったことがあった。そもそもこれほどまでに仲間のことを考えて、自分の意地を押さえつけてまで仲間のために動けるような男がなぜ盗賊の頭領などをしているのか。いくら俺が考えてもわからないので素直に聞いてみることにした。
「一つ聞かせてくれ。なぜあんたは盗賊なんかしてるんだ?」
男はそんなことを聞かれるとは微塵も思っていなかったのか、一瞬答えに詰まった。
「…もともと俺たちは盗賊なんかじゃなかった。カルテラ王国という今はもうない小国の親衛隊や雇われ護衛、冒険者だったんだ。だが、国が滅んじまってどうしようもなく食っていくために盗賊をしなければいけなかった。」
「は!?カルテラ王国が滅んだ?!」
俺は思いもよらないことを聞かされ驚きを隠せなかった。何せ、カルテラ王国というのは俺たちが今いるスイレン王国の海を挟んで向かいにある国で、俺はいつか行ってみたいと思っていた国だった。
国としての規模はそこまで大きくはないが、魔道具に関する技術が他国と比べて圧倒的に高く、中には遺物《アーティファクト》を再現してしまうほどの素晴らしい職人も多数いたという。そんな職人に一度は師事してみたいと思っていた。しかし、俺が知らないところでその国は滅んでいたという。
「何で滅んだんだ?」
「異端者の襲撃だ。」
「異端者か?」
異端者とは負の魔力を身に宿してしまい、異常なまでの魔力を身に宿す代わりに人間としての理性を失い、ただ生物を殺すためだけに行動する全生物の敵だ。異端者は人間、精霊、魔族、亜人関係なく殺戮する。なぜ異端者が生まれるかはわかっていない。とても人間とは思えないほどの身体能力と耐久力を持ち合わせており、心臓部に生成された魔石を破壊することで生命活動を停止させることができる。
「信じられない数の異端者に襲撃され、たったの三日でカルテラは滅亡した。国民はほとんど殺され、俺たち戦闘職の人間も大半が殺された。そのうえ、各国の情報当局に混乱を防ぐためにカルテラが滅んだことは口止めされて、逃げた先の国では仕事にありつくことすらできない。それで仕方なく俺たちみたいに戦えない女子供たちを食わせるために盗賊をするしかなかった。」
「なるほど…ね。」
俺は正直自分で聞いたのになぜ盗賊になったのかよりもカルテラが滅んでしまったことのほうに神経が集中してしまった。しかし、ちゃんと盗賊の男の境遇も理解し、根っからの悪人ではないことは分かった。
「事情はよく分かった。それで、お前たちはこれからどうしたいんだ?」
「俺たちは俺たちの大事な人を殺した異端者たちを駆逐してやりたい。」
男はその両目に憤怨の炎を宿らせてそういった。後ろの男たちも同じ気持ちのようだった。
「よくわかった。仲間たちはどういうかはわからないが、俺個人としてではあるものの、お前たちに協力してやる。もちろん敵対しないならだけどな。」
「すまない。恩に着る。」
俺は事情を理解し、この盗賊たちがただ悪い連中ではないということを理解したうえで仲間になってもらうことにした。この男が言うことが本当ならば、中には魔法が使えたり元商人だった人がいたりと、俺にも徳がある話なので、危険がない限りは利用しない手はない。
「あ、そうだ。まだあんたの名前を聞いてなかった。」
「私はリューズ・ウォール、元カルテラ近衛騎士団副団長だ。」
山賊からまさか雇ってくれと言われるとは思わなかったので間抜けな声を出してしまった。一時的に思考停止したがすぐに冷静な思考を取り戻す。
「俺がお前たちを信用できると思うか?」
「そういわれても仕方ないだろう。しかし俺たちはもうあんた達に敵対する気はないんだ。なにせ…」
山賊の頭は俺の後方に広がっている山岳地帯の一角を見つめる。
「あんな山一つ消し飛ばせるほどの力を持った男と敵対して無事でいられるとは思えない。」
男は本当に悔しそうな表情をしながらそう言った。おそらく、この男は自分が勝てないと思ってしまうような不甲斐なさと自分の仲間を振り回している情けなさを悔いているのだろう。
だが、俺は一つとても気になったことがあった。そもそもこれほどまでに仲間のことを考えて、自分の意地を押さえつけてまで仲間のために動けるような男がなぜ盗賊の頭領などをしているのか。いくら俺が考えてもわからないので素直に聞いてみることにした。
「一つ聞かせてくれ。なぜあんたは盗賊なんかしてるんだ?」
男はそんなことを聞かれるとは微塵も思っていなかったのか、一瞬答えに詰まった。
「…もともと俺たちは盗賊なんかじゃなかった。カルテラ王国という今はもうない小国の親衛隊や雇われ護衛、冒険者だったんだ。だが、国が滅んじまってどうしようもなく食っていくために盗賊をしなければいけなかった。」
「は!?カルテラ王国が滅んだ?!」
俺は思いもよらないことを聞かされ驚きを隠せなかった。何せ、カルテラ王国というのは俺たちが今いるスイレン王国の海を挟んで向かいにある国で、俺はいつか行ってみたいと思っていた国だった。
国としての規模はそこまで大きくはないが、魔道具に関する技術が他国と比べて圧倒的に高く、中には遺物《アーティファクト》を再現してしまうほどの素晴らしい職人も多数いたという。そんな職人に一度は師事してみたいと思っていた。しかし、俺が知らないところでその国は滅んでいたという。
「何で滅んだんだ?」
「異端者の襲撃だ。」
「異端者か?」
異端者とは負の魔力を身に宿してしまい、異常なまでの魔力を身に宿す代わりに人間としての理性を失い、ただ生物を殺すためだけに行動する全生物の敵だ。異端者は人間、精霊、魔族、亜人関係なく殺戮する。なぜ異端者が生まれるかはわかっていない。とても人間とは思えないほどの身体能力と耐久力を持ち合わせており、心臓部に生成された魔石を破壊することで生命活動を停止させることができる。
「信じられない数の異端者に襲撃され、たったの三日でカルテラは滅亡した。国民はほとんど殺され、俺たち戦闘職の人間も大半が殺された。そのうえ、各国の情報当局に混乱を防ぐためにカルテラが滅んだことは口止めされて、逃げた先の国では仕事にありつくことすらできない。それで仕方なく俺たちみたいに戦えない女子供たちを食わせるために盗賊をするしかなかった。」
「なるほど…ね。」
俺は正直自分で聞いたのになぜ盗賊になったのかよりもカルテラが滅んでしまったことのほうに神経が集中してしまった。しかし、ちゃんと盗賊の男の境遇も理解し、根っからの悪人ではないことは分かった。
「事情はよく分かった。それで、お前たちはこれからどうしたいんだ?」
「俺たちは俺たちの大事な人を殺した異端者たちを駆逐してやりたい。」
男はその両目に憤怨の炎を宿らせてそういった。後ろの男たちも同じ気持ちのようだった。
「よくわかった。仲間たちはどういうかはわからないが、俺個人としてではあるものの、お前たちに協力してやる。もちろん敵対しないならだけどな。」
「すまない。恩に着る。」
俺は事情を理解し、この盗賊たちがただ悪い連中ではないということを理解したうえで仲間になってもらうことにした。この男が言うことが本当ならば、中には魔法が使えたり元商人だった人がいたりと、俺にも徳がある話なので、危険がない限りは利用しない手はない。
「あ、そうだ。まだあんたの名前を聞いてなかった。」
「私はリューズ・ウォール、元カルテラ近衛騎士団副団長だ。」
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