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不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第24話 ハプニング

 ライムさんに頼んだところ、国が管理している特に資源もなく一面ただ岩肌がむき出しになっているだけの山岳地帯を好きに使っていいということだったので早速やってきた。

 馬車を借りにアクマリンに寄ったところ、タイミングよくセイリウムさんとばったり出会い、軽くこれからすることを話したところ、とても興味を持ったのか一緒に来ることになった。

 一度セイリウムさんは屋敷に戻り、質素な馬車とアメリアを連れて町の入り口に戻ってきた。ぱっと見領主の一家には見えないような非常にありふれた服装をして紛れていたため町の人たちも二人に気が付くことなくすんなりと俺たちのところまでやってこれた。

 今日、山岳地帯に向かうのは俺とセイリウムさん、アメリアさんとサーシャ、それに今後これを運用するであろうメリッカさんだ。メリッカさんはもうお昼になるというのにもかかわらず部屋でダラダラと寝っ転がっていたのでアイラさんと一緒に叩き起こして無理やり引っ張ってきた。

 馬車に乗るまでさんざん「ぜったいヤダ!いかない!」と駄々をこねていたのだが、馬車に乗ったとたんコロっと寝てしまい、おとなしくなった。サーシャはバースデー親子とは初対面だったのだが、持ち前の人付き合いの上手さを発揮して完全に二人ともコミュニケーションを確立していた。

 特にサーシャをアメリアさんは非常に仲が良くなったのか、ずっと仲良く話し込んでいたので、非常にこちらとしても連れてきてよかったと思えた。

 そんなみんなの様子を確認しながら魔導騎馬を操り山岳地帯へと馬車を進めるうちに日は落ちてしまい、辺りも暗くなってしまった。普通の行商人などは暗闇の中では危険すぎて馬車を進めることはないが、俺は構わず馬車を進める。

 きちんと馬車の周りはいくつもの照明の魔道具で照らして道から外れないようにしているし、簡易的ではあるが魔物除けの魔道具も発動させている。どちらもそこまで高価なものではないが消耗品であることには変わりはないのであまり進んで使う承認はいない。

 安いものは5日ほどで魔力切れを起こし、使い物にならなくなってしまうし、高いものでも1か月と持たない。魔物除けの魔道具は需要に対して圧倒的に作る魔道具師が少ないため数も出回らず、価格もかなり高い。

 だが俺は魔道具師なのでその辺は自分で作ってしまえば問題ないし、俺の魔道具は魔力を補充する必要もないためこういった移動に関する便利度でいえば最上級なのではなかろうか。ちゃんと馬車の中にも衝撃吸収の結界を発動させてあるので中のみんなもかなり快適に過ごせているはずだ。

 だが、闇夜に潜む危険は道を外すことや魔物だけではなく…。

「おい!そこの馬車とまれ!」

 絵にかいたような山賊の格好をした男たちが馬車の行く手を阻むように道に立っている。俺はおとなしくしたがって馬車を止めて馬車から飛び降りる。

「へっ!なかなか高そうな馬だな!それに馬車のあちこちにつけられた魔道具も高く売れそうだ。」
「馬車の中には何が入ってるんだぁ?」

 山賊の一人がおもむろに馬車に近づこうとする。俺は横を通り過ぎて馬車に近づこうとした男の首を鷲掴みにし、力任せに地面にたたきつける。

「ぐがぁ!」

 男は地面と激しく衝突し、うめき声をあげながら意識を手放す。

 突然馬車が止まったことに異変を感じたのか、メリッカさんとサーシャが馬車から出てくる。セイリウムさんとアメリアさんはちゃんと中にいたまま身を隠してくれているようだった。

「先生、これは何事でしょうか?」
「見ての通り、狼藉者が現れたんだよ。今ちょうど一人伸したところ。」

 俺は二人の前に立ちながら周りの敵の人数を確認した。

「ぐへへ!なかなかいい女じゃねぇか!それも一人は美人でもう一人は幼女だぞ!」
「これまた高く売れそうだな!」
「おい!売る前に俺に使わせろよ!」
「こら、先に俺だろ!」

 山賊たちは二人を見て下卑た話を表情を浮かべる。俺もそこまで鬼じゃないのでこのまま道を開けるならこれ以上何もせずに見過ごそうと思ったのだが、仲間に危害を加えるつもりなら全力で潰す。

 そう思って《黒龍魔法》の印を組もうとしたのだが…

「ここは私に任せてください、先生。」

 半身の構えを取りながらサーシャが男たちを見据える。両手を開き、胸と同じ高さまで上げ、両足を肩幅に開いた構えをとる。

「いい度胸じゃねぇか!」

 山賊の男は拳を大きく引き絞り、サーシャに向かって勢いよく打ち出した。しかし、次の瞬間、吹き飛んでいたのは山賊の大男のほうだった。大男は体をくの字に曲げた状態で吹き飛んでいき、空中にいる間に意識を手放した。

 一方サーシャは掌底打ちを放った後の形のまま静止していた。俺の眼にはかすかにしか見えなかったが、おそらく掌底で大男の拳が飛んでくるよりも早く鳩尾を打ち、吹き飛ばしたのだろう。

 しかし、俺が知っている拳法の掌底打ちはあそこまで吹き飛ばすものではなかった思う。

 俺がサーシャの技の仕組みを考えている間にもサーシャは手首、肘、膝などの関節を巧みに使って攻撃をいなし、弾き、躱して次々に男たちを倒していく。

 そしてあっという間に山賊で出来上がったピラミッドが完成し、残る山賊もいなくなった。

 サーシャもいい汗をかいたといわんばかりの爽やかな笑顔を見せ、こちらに戻ってきた。

「すいません先生、少し時間かけすぎてしまいました。」
「いや、大丈夫だよ…」

 俺が思っているよりもはるかにサーシャは強い子なのかもしれない。もしかしたら俺よりも…?

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