不遇の魔道具師と星の王
第23話 魔導兵器
「そもそも私たちが直接戦うんじゃなくて遠くからそれこそアルトさんが作る魔道具で倒してしまえばいいんじゃないでしょうか?」
サーシャがリーパーを抱えて構えるような真似をしながら言う。
「それでも可能なんですけど、とてもリーパーのような銃では邪龍が生み出す眷属までは殲滅できないでしょうし、瞬間的な火力が足りません。」
「じゃあ、眷属をまとめて吹き飛ばせて尚且つリーパーの何十倍もの威力を出せる魔道具があれば行けるんですね?」
「そうですね。目安としては大きな山一つ分は完全に吹き飛ばせるくらいの威力があれば可能だと思います。」
「だ、そうです。」
サーシャがぱっと振り返って俺に『できますよね?』といったニュアンスを含めた顔を見せる。
「簡単に言うけどそんなもの作れるかどうかわからないよ?」
「先生なら大丈夫です!」
少しサーシャは俺のことを妄信しすぎだと思う。多分ほかのみんなも同じことを思っているのではないだろうか?
「よし、ではアルト。5日後に出発だからそれまでに完成させられればその魔道具をメインに、できなかった場合にはマリアさんの指示のもと邪龍の討伐を行おうと思う。」
「いや、俺はそんなとんでもないもの作らされるんですか!?」
「そのためのアルトだろ?」
…ライムさんも俺のことを少し妄信していると思う。
~~~~~~
工房に戻り、早速設計に取り掛かる。相変わらずレベッカは俺の魔道具を再現しようと頑張っていた。その横でサーシャもアドバイスしたり手伝ったりしてあげていたので俺は一切面倒を見なくて済んだ。
設計を始めようと思ったのだが、そもそも山を丸ごと吹き飛ばせるほどの威力を持った魔道具なんて全くイメージが湧かず、一向に設計は進まない。
今まで作ってきた戦闘用の魔道具の中で最も威力が高いのは魔導加速砲《アバドン》だが、それも山を吹き飛ばすことはできない。せいぜい山に小さなトンネルを開けるくらいが関の山だろう。
《アバドン》はその性質上あまり連射はできず、威力を上げることも不可能である。つまり、銃火器の形状では要求される威力は達成できないだろう。
「先生、なかなか行き詰ってますね。」
「そりゃ今までそんな大規模な魔道具なんて作ったことないからね。」
「そうですね…。魔導兵器ってご存知ですか?」
「軍用の大型魔道具のこと?」
「そうです。その設計図を実は持っているんですけど、ご覧になりますか?」
サーシャはバックパック型の収納の魔道具から羊皮紙の筒を取り出した。
「それって機密情報じゃないの?」
「うちの家が魔導兵器を作っている店なので。父からも信頼できる人になら見せてもかまわないといわれてますので。」
「それなら遠慮なく…。」
その設計図に書かれていたものはとても想像できるようなものではなかった。見た目はただの鉄の箱なのだが、中にはいくつもの爆弾を積んで飛んでいく円錐状の大きな弾丸のようなものが4本入っている。
「これは?」
「地対地誘導殲滅ミサイルです。敵軍の上空でその弾丸のようなものが爆発し、内包された大量の爆弾をまき散らします。ちょっとした丘を更地にするくらいの威力はあるそうです。」
「なるほど、爆弾か…」
今までの考え方では爆弾はくっつけるか投げるものだと思ってあまり実用性のないものだと思っていたが、確かに飛ばせばある程度の実用性は出てくる。
俺のアイデアではミサイルというらしいものの先端に闇属性の魔力を付与し、操作する側の端末に光属性を付与すれば任意のタイミングで爆弾を爆破することができるだろう。さすがに測量などは専門外なので射手はメリッカさんに任せようと思う。
問題は、いったいどのような改変を行えば山一つ丸ごと吹き飛ばせるほどの威力が出るかなのだが…
何となく想像しているのは超多量の光と闇属性を一気に融合させることで疑似的なブラックホールを発生させることだが、とてもじゃないが魔力を貯めるまでの時間が足りないし、それほどの魔力に耐えられる容器を作れるとは思えない。
なかなかアイデアが浮かばないでいると今度はレベッカが横から話しかけてくる。
「ねぇ、アルトさん。この前の黒い炎はダメなの?」
「うーん、そうだなぁ…」
おそらく《黒龍の咆哮》のことなんだろうが、単純な爆発力が足りない…
「いや、魔法を超圧縮してそれを開放させればかなりの規模の衝撃波が発生するからいけるか?」
収納の魔道具は魔力効果がなくなると中のものは一気に吐き出される。その収納の魔道具内に魔法を貯め、衝撃で壊れるように細工をすれば魔力爆弾は完成するはず。
俺は頭で考えながら木で小さいながら容量を何倍にも拡張した収納の魔道具を製作する。その中に何発も《黒龍の咆哮》を撃ちこみ、最後に魔法効果を付与してある部品と箱の間に楔を打ち込む。
これでちょっとした衝撃で魔法効果は消え、中の黒炎が一気に噴き出して大爆発を起こすはずだ。
早速威力を確認するために仲間たちにちょうどいい場所はないか聞きに行ったのだった。
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