話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第18話 俺もですか!?

「お、アルトも見てたのか。」
「途中から見てました。二人ともとんでもなく強かったですね。」
「いや、まだまだだよ。せめてマリアさんに一太刀でも浴びせなえれば…」

 ライムさんは悔しそうな表情をしていた。確かにこうやって見ると、ライムさんは肩で息をしているのに対してマリアは軽い運動をした後くらいにしか息を乱していなかった。

「アルトもやってみるかい?自分が今どれくらいの実力かがわかると思うぞ?」
「いや、俺はライムさんと違って純戦闘職じゃないから…」
「冒険者なんだから少しくらいは戦えたほうがいいだろう?」
「そうですね。アルト様もご自身を鍛えられるのも悪くないと思います。」

 結局マリアとライムさんに押し切られて、俺もマリアとの模擬戦をすることになった。やるからには全力でということで、いつも戦闘の時に使っている魔道具たちをすべて取り出し、身に着けた。俺の運動能力は正直に言って、普通の人たちとさほど変わらないくらいである。しかし、魔道具を作り、扱う腕は人の何十倍も上だと自負している。

 現に、今まで魔道具の素材を取るために単独で魔物が多く生息する洞窟などのダンジョンに一人で入り、生き残っている。すべては自分が作った魔道具がとても自分に合っており、その特性を自分でよく把握できているから。

 特に汎用性が高い《操空の指輪》は俊敏性を跳ね上げることから、空中での体操作、飛び道具の無効化などなど、用途は非常に多岐にわたる。他にも属性剣はあらゆる工夫を凝らし、ほとんどの属性を再現することもできる。まだまだ自分が作った魔道具はたくさんあるが、今までこの2つは特に俺の戦闘の要といってもいいほどのものになっているし、何より俺が作った魔道具の中でもかなり初期のものなので思い入れが強い。

 頼もしい魔道具の感触を感じながら俺は属性剣を構えた。

「さて、準備はいいかな?それでは、始め!」

 ライムさんの号令と同時に俺は前へと飛び出す。マリアは《竜神魔法》の印を高速で組みながら俺がその間合いに入るのを待っている。そんなものお構いなしに俺は突撃する。俺の体が間合いに入る瞬間、魔法の印が完成する。

「《青龍の咬撃》」

 龍を模した水の渦が俺に向かって勢いよく襲い掛かってくる。それに対して魔法ではなく属性剣に炎を纏わせて力任せに迎撃する。しかし圧倒的な水圧に押し負けてしまい、体ごと後ろへと押し負ける。後ろへと押される体のすぐ後ろに空気の膜を生み出し、勢いを殺していく。

 そして水でできた龍による圧力が消えた瞬間、それまではち切れんほどに後ろへ引き延ばされていた空気の膜が一気に元の位置へと戻る。俺はその反動を利用して弾丸のような速度でマリアへ突進する。

「《青龍の爪撃》」

 俺の予想外の動きにも動じることなく淡々と魔法を放ってくるマリア。さっきの龍よりも小さいが、より殺傷力の高い水の刃が眼前に迫ってくる。水の刃自体の速度は大したことはないのだが、俺が高速で移動しているため、相対速度はとんでもないことになっている。

 マリアは俺がなす術がないと思ったのか、水の刃が当たる直前に魔法の解除印を結びかけていた。しかし、次の俺の行動によってその印は中断される。

「《光転》」

 水の刃に切り裂かれる寸前に俺は水の龍に吹き飛ばされた瞬間に上空に投げていた転送の付与魔法が刻まれたナイフのところへ瞬間移動する。それまでの速度はそのまま、角度を大きく変えて再びマリアへと突撃する。

 マリアは解除の印を中断したことによって一時的に印を組む手が硬直したせいで次の魔法の発動は不可能になった。そのことを瞬時に理解し、背負っている大剣を抜き、迎撃態勢をとった。上空から鋭い角度で突進する俺。それを地上から迎撃するマリア。

 俺はその勢いを乗せ剣を振り下ろし、マリアはその俺をまるで打ち上げるかのように大剣を振り上げた。

 結果はまさかの俺が競り負け、再び空中に放り出される。操空の指輪を使い空中で姿勢を立て直し、そのまま留まる。単純な力比べでは彼女には全くかなわず、魔法の腕もはるかにあっちのほうが高いと来ている。

 苦し紛れに、効くはずない俺だけの魔法、《黒龍魔法》を発動してみる。

「《黒龍の咆哮》」

 上空から放たれた黒い火炎はマリアを周辺の草ごと燃やしたように見えた。黒い炎はいつまでもマリアを燃やし尽くさんと彼女が作り出した水のドームの周りにまとわりついている。だが、いつまでたってもその炎が水のドームを燃やし尽くすことはなく、俺はあきらめて黒炎を解除した。

「はぁ、やっぱしダメか。」
「とても強かったですよ?特に途中で瞬間移動してからの上空からの突進。あれは虚を突かれてしまいました。魔道具師のアルトさんだからこそできる芸当ですね。」
「そうだぞアルト。俺も君がそこまで戦えるとは思っていなかったし!」

 草の上に寝ころんだ俺の周りに模擬戦を見ていたみんなが寄ってきた。

「俺がどうなると思って模擬戦を進めたんですか!?」
「いや、それこそぼっこぼこにされてアイラに治療されるのかな?って思ってた。」
「ちょっとひどすぎやしませんか!?」

 ライムさんは飄々としながらそんなことを言ってきたので、思わずムカッと来てしまう。

「はっはっは、冗談だって。アイアンゴーレムを軽々と破壊した君がそんなに簡単に伸されるとは思ってないよ。」
「まったく…」
「といっても、君があんなに高出力の魔法が使えるとは夢にも思っていなかった。そのことが知れて俺としては非常にうれしい限りだよ。」
「どうしてですか?」
「仲間が強いことは単純にうれしいことじゃないか!これからはうちの火力担当だな!」

 俺の背中をたたきながらライムさんはそう言い放った。

「いや、俺は戦闘職じゃないんで遠慮しておきます。」
「つれないなぁ、君は。まぁ、そこが君のいいところでもあるんだけどね。それで、町での用事は済んだのかい?」
「それ今聞きます?…一応やっておきたかったことは全部済みましたけど。」
「それで、これからの君の予定は?」
「今週末、市場のバザーに出店することになったので、そこで売る予定の冒険者向けの魔道具を作ろうと思います。それ以外は特に用事はないですね。」

 俺がそういうと、ライムさんはポケットから1枚の羊皮紙を取り出した。

「バザーを出すとき、その紙に書いてあることを少しでいいから気に留めておいてほしい。」

 渡された紙にはこう書かれていた。

〝近頃、王都で粗悪な魔道具の暴発による死亡事故が多発している。領主はそのような魔道具を見つけ次第回収し、暴発する原因について調査するように。〟

「不遇の魔道具師と星の王」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く