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不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第15話 黒龍の咆哮

「アルト!今のはなんだ?!」

 マリアの魔法を見たライムさんは慌てた様子で馬車の外で馬を引いている俺たちに問いかける。

「ああ、マリアに俺がこれから使えるようになる魔法を見せてもらってたんです。魔物の襲撃とかではないので安心してください。」
「そ、そうか。なら良いんだが。」

 ライムさんはそう言って馬車の中へと戻って行った。

「基本的にはこんな魔法が使えるようになりますが、やっぱりこれも個人の才能に大きく左右されてしまうものです。やってみないことにはいくつの属性が使えるのかはわかりませんが。」
「そーなんだ。ちょっと楽しみかも。」

 俺はマリアに龍神魔法の扱い方や魔力の込め方、その他諸々を教えてもらいながら馬車を走らせて行った。

 そうして一時間ほど馬車を走らせると、目の前に大きな城壁らしきものが見えてきた。

「ライムさん、見えてきましたよー」
「ああ、確かにこの場所で間違いない。それにしても高い城壁だな。」
「見たところあの壁に退魔の付与魔法が施されていますね。かなり昔のものですが、今も問題なく機能しているようです。」

 俺はそう言いながら壁に施された付与魔法に対して感動に近い感情を抱いていた。見たところ、この壁は築かれてもう何十年も経っているだろう。それにもかかわらず、この付与魔法は本来の機能を一切損なうことなく、完璧な状態で残っている。今の自分にこれと同じものが作れるかどうか?作るとしたらどうやって作るのか。そんなことを無意識に考えてしまう。

「アルトは魔道具に関係するものを見たらすぐにそんな顔をするな。」

 ライムさんには俺が考えていることがバレていたようで、少し恥ずかしい気持ちになる。

「まあ、たしかに俺もこんなに長い時間機能し続ける魔道具も気になるんだが、その前にこの敷地をどうにかしなければ。」

 ライムさんはそう言って敷地の中で伸び伸びと育ってしまった草を見た。

「とりあえずこの草を狩るなり焼くなりして庭と屋敷を整備しなければいけない。女子と子供達は屋敷の中を掃除してくれ。俺たちは敷地の草や蔦を取り除く。」

 女子は子供達を連れて屋敷の中へと入って行った。俺とライムさん、ギッツさんは草を刈るための準備をした。

「さて、じゃあ始めるか。俺は屋敷の裏の草を刈ってくるからギッツは屋敷の前、ライムは入り口付近の草を処分してきてくれ。」

 そう言ってライムさんは屋敷の裏へと走って行ってしまった。

 俺も入口の方へと向かい、収納の魔道具から鎌を取り出した。草の束をいくつか鷲掴みにして、根本を刈る。この作業をずっと繰り返していく。

 そうして一時間ほど経つと、やっぱり腰が痛くなってしまった。

(どうせ整地するならちょっとだけさっきの魔法を真似してみても良いよね…?)

 ちょっとした子供心が湧いてきて、アルトは教わったばかりの竜神魔法の印を結ぶ。

「《火竜の咆哮》」

 俺は印を結び、最後の印を組んだところで両手に貯めておいた魔力を解放する。すると、マリアと同じような火が周辺の草を燃やし尽くした。ただ、マリアの炎とは違い、橙色の炎ではなく、黒い炎だった。

 俺が竜神魔法のを使ったことを察知したのか、屋敷の中からマリアが飛び出してきた。

「アルトさん!今のは?!」
「い、いやぁ。マリアの《火竜の咆哮》を真似しようときたんだけど、なんか違うのが出てきて…これって失敗?」

 俺はよくわからないままマリアにそう聞いたのだが…

「これは失敗じゃないですよ!ただ、嬉しいお知らせと悲しいお知らせとあります。どちらから聞きたいですか?」
「じゃあ、嬉しいお知らせからで。」
「ライムさんが今使ったものは、竜神魔法の中でも特殊な属性で、使える人は今までほんの2、3人しかいません。」
「…で、悲しいも知らせは?」
「その《黒龍》以外の属性は使えません。」

 俺はその二つの情報を聞いて、かなり複雑な心境になる。珍しく、ほかの誰も使えないような魔法が使える代わりに、そのほかの属性は使えない。

 これでは、俺が妄想していた、竜神魔法を使った魔道具は作れないということになる。とても楽しみにしていたので、結構ショックは大きかった。

「ああ!でも《黒龍》はとても汎用性が高い属性なので、ほかの属性が使えなくても問題ないと思いますよ!」
「うん、ありがとう。俺は全然気にしてないから。むしろ使えないと思っていた魔法が使えるだけでもとっても大きいからさ!」

 マリアが気を利かせて助け舟的な言葉を出してくれたが、実際魔法が使えるだけでも万々歳だと思っていた。

 その後は俺もこの《黒龍》に慣れるために出力を下げた魔法を何度も使い、自分が請け負った範囲の雑草を燃やし尽くして行った。


〜〜〜〜〜

 3時間後、敷地内のすべての雑草を処理し終わった俺たち3人は、屋敷の中へと入って行った。中はとても質素な作りになっていて、華美な装飾は一切施されてはいなかった。

 おそらくついさっきまでは埃まみれであっただろう床や棚の上は、綺麗に拭かれていた。3人が中に入ってきたのに気が付いたのか、メリッカと子供達が玄関の方へ走ってきた。

 頑張って掃除をしてくれた証拠なのか、子供達の顔は誇りで汚れていた。

「みんな一生懸命掃除してくれてありがとう。今度みんなにご褒美あげるからねー。アルトが。」
「え!?」

 俺は急にご褒美を用意するようにと言われてびっくりしてしまった。

「あー、えーと、みんなはどんなものが欲しいの?」

 子供が喜ぶものがどんなものなのかわからないので、率直に聞いてみる。

「私はお菓子が欲しいです!」
「僕もお菓子!」

 エルフの女の子とコボルドの男の子はお菓子がいいそうだ。この流れからドワーフの女の子もお菓子なのかなと思ったのだが…

「アタシはお兄さんの魔道具が欲しい!」

 ドワーフの少女は目をキラキラと輝かせながら俺の体のいろいろなところに装着してある魔道具を見ていた。

「分かったよ。明日みんなにあげるね。」

 俺はそう言いながらも心の中では、子供が欲しい魔道具ってなんなんだ?!と思っていた。

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