属性なんてクソくらえっ!な青春でも、、

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第一話 いくら3次元って分かってても、、

「俺は失望している、この腐った世界に」

まるで売れに売れまくった大御所俳優みたく足を組んだ少年はそう言い放った。

彼の名前は宮木 翼(みやき つばさ)。
周りと比べると少し遅めのアニオタデビューを果たした高校2年生である。

「そんなわかりやすく無理やり厨二初めてももう遅いよ宮木~」

宮木がアニオタになるきっかけとなった友人、秋山 照(あきやま てる)が呆れ顔で返すと、
彼はそそくさと組んでいた足を下ろし机から身を乗り出すようにして、さもこの場所がたった今次の授業まで小休憩を挟んでいる教室内である事など全く頭に無いような様子で言った。

「うるさい!!俺はもっとこう、、2次元みたいな青春ラブコメを送ってみたいんだあああ!!」

何とも虚しい言葉が教室中に響いた。
クラスメイトの視線は当然、宮木に向けられる。

「あ、、その、、あ、、」

「ほら言わんこっちゃない、、」

二重の呆れ顔を重ねた秋山は、周囲の、特に女子からの嘲笑ちょうしょうの目に耐えきれず目元を潤わせ、肩を落としきった宮木の背中を優しく撫でた。

その後、放課後までに宮木がアニメオタクであることが学校内に広まり、
馬鹿にされることは言うまでもない。ただ、数人の生徒を除いて、、





昼休憩、それは学生達にとって勉強というしがらみから唯一食欲、あるいは談笑なる
現実逃避が可能な時間だと言える。

しかし、つい数時間前クラスメイトのほぼ全員に恥ずべき姿を晒してしまった宮木からすれば
それどころではなかった。

「はあ、、高校に入って約一年、変に目立つような言動には気を付けてきたってのに、、アニオタやってる奴らって大変なんだな、今まで散々オタクを馬鹿にしてごめんなさい神様」

「いや、まだオタク歴が短いからって、アニオタが皆お前みたいに変な言動衝動と闘ってるって印象は間違いだから、てか何で神に謝ってるんだよ、謝るにしても対象間違えてるから」

「はあ、、俺の高校生活もここまでか、お前は無事に卒業しろよ、、」

ツッコミを流された上に、何故か宮木の脳内が既に退学で落ち着いていることに
謎しか浮かばない彼は質問する。

「そもそも、お前は何に失望してるんだ?2次元みたいな青春って何なんだよ」

宮木はベンチにもたれかけると、深いため息をついてから口を開いた。

「俺は、、たくさんの属性女子キャラに囲まれた、2次元みたいな青春が送りたかったんだ。でも俺が住んでるこの町も、それどころかこの3次元の世界には【属性】持ちの個性的な可愛い子なんてどこにもいやしない、、眼鏡かけてて巨乳な女子を見かけても、その娘と話すイベントが発生するわけじゃない、定番の幼馴染や妹だってそもそも存在すらしない、、だから俺の青春ラブコメはもう訪れないことに俺は失望したんだよ」

リズムを刻むように、それでいて宮木の話を最後まで邪魔することなく
相槌を打ち続けた秋山は無情にも応えた。

「お前、、そう言ってる自分自身も主人公属性、皆無なのな、、」

「帰りますね」

友の言葉に、失望ではなくもはや絶望した彼はそれだけ言うと立ち上がった。
きびすを返す彼に対し、秋山はこみ上げる笑いをどうにか堪えて声をかける。

「まあ待てよ、そりゃ2次元みたいな青春なんてそもそも次元の違う世界に生きてる
俺達が望んでも、初めから厳しいってもんなんだから、お前がやるべきことはまず【属性】とか言わずにこの3次元で普通に彼女を作ることなんじゃねーの?そうしたらおのずと楽しい青春が
送れるかもしれねーじゃんか」

その後、一瞬歩みを止めた宮木の「ではその普通に彼女って、どうすれば作れるのですか?」という皮肉100%の問いかけに、秋山もまんまと一杯食わされる形で昼休憩の幕は閉じたのだった。




まだ太陽も沈もうとしない午後17時、校舎に聞き慣れた鐘の音が響いた。
挨拶を済ませた生徒たちは各々すべきことに向けて教室を去っていく。

今日という一日に何かつけ加えるとすれば、最後の授業、宮木の呪うような目つきが原因で担任の教師から謎のビンタを受けていたことくらいだ。

災難以外の何物でもなかった今日を、宮木は例の目つきのまま、席を立った。
そんな彼の前方、秋山は鞄に荷物を詰め終わると振り返って言う。

「ずっとそんな目つきしてると、悪いことばっか呼び寄せちまうぞー?
そんじゃ、俺部活いくから!また明日2次元かたりまくろーぜ。」

「うっせ、またなー」

ここまでの流れから言って、秋山はアニメオタクでありながらそれを一切オモテには出さず
人付き合いも上手なのでもしやモテるのではないか、そんなことを思う周りのオタクも
少なくないみたいであるが、決して彼もこじらせていないわけではない。しっかりと2次元に恋をし、こじらせている。なので3次元の彼女ができたことなど一度もなくそれが故に、先程の宮木による皮肉100%な質問にも答えられなかったという結論に至る。

「さ、今日も孤独な帰路を渡りますかね」

もはや声じゃない声でそう呟いた宮木は相変わらずの目つきで教室を出た。

彼の放課後は単調で、そこに変化が生じることはほぼ無い。
部活は入っていないので、真っ先にいつも通りの帰路につく。

「なんか暑くなってきたな」

とうの昔に散った桜も影を残さず、その木にはまだ人の目には見えない所で
たった7日という短い期間を存分に生きる為に準備をする蝉たちがいる。

そんな情景に彼は夏を感じ初めていく。

それに加え、暑苦しそうにネクタイを緩めながら歩く中年の男性や、犬と散歩する小さな女の子、
買い物袋を提げた若い女性はその大きくなったお腹をさすりながら帰っていく。
まるで、彼の呪いなど解いてしまいそうな平穏だった。

(2次元みたいな青春ラブコメなんてやっぱ妄想しすぎだよなー。誰かこのやるせない気持ちを
救ってほしいぜー、、ん?)

とここで、宮木は明らかに平穏ではない何かに気づく。
それは紛れもなく美女であり、美少女である。
宮木の右前方、気づかない間に彼女は現れていた。
まだ離れたところにいるのにも関わらず伝わってくるとんでもない
美少女オーラに、宮木は思わず息を呑んだ。

(おい待て、、あれはぜってえやべえぞ、レートSSS級の美少女だ、、こりゃ【属性】どころの
騒ぎじゃねえ、、!どうせ学校の奴らにも俺の本性がばれてもう失うもんなんか何一つねえ今なら、、よし、やってやる、、!)

意気込みは今までの彼の人生の中で、一番とも言える勢いだった。
段々と美少女までの距離が縮まっていく、宮木の心臓はもう出る。

(よ、、よし!うぷっ、、行くぞ!!)



嗚咽を感じながらもついに、宮木は彼女の元へ駆け寄った。



その瞬間だった。



「あの~、もしかして宮木翼君?」



当然、彼の口から声は出なかった、否、出せなかった。



思考する事も忘れていた。しかし、考えていなくても彼女の端麗さを捉えてしまった
その眼球が無理やりにでも送ってくる視覚という名の信号で理解してしまった。



化粧品やシャンプーのCMに出てくるような綺麗なロングの髪に、まるで人が意図して
作ったかのように整った顔面に白い肌。




そう、理解してしまったのだ、彼女は完璧であるということを。




それと同時に、出てきかけた心臓が跳ね返るようにして戻っていったのが分かった。







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