ナイトメアシンドローム
-4-
「――ウフ…っ」
突然ソニアの口角がつり上がる。
「フフ、フ…、は、アハ…っ、あははハははは――っ!!」
狂ったように大声で笑い出した。そして先程までと変わらない薄ら笑いを浮かべる。
「ここまでうまくいかなかったのは初めてだわ。いいわ、もう…、興冷めよ」
血走った目で優を見ると、吐き捨てるようにソニアが言った。
すると空気が変わった気がして、優はぞくりとする。
「アタシ、かわいい女のコは好きなのよ。けどあなたはハズレだったみたい…。
どんなに怖くてもアタシに屈しないんですって?おもしろいこと言うのね。なら…、これはどうかしら?」
そう言うとソニアの背後から黒いもやのようなものが現れ、それらが魔人を包んでいく。
ざわざわ、ざわざわ、と周囲の森が騒々しく木々を鳴らす。
黒いもやに包まれながら、それは形を変えて次第に大きくなっていく。
辺りには生温かい風が流れ、これ以上ここにいてはいけないという不穏な空気に満ちていく。
そしてもやが薄れると、その姿があらわになった。
(なに、これ…っ)
優は言葉を失い戦慄する。
「アタシの今の姿、優の目にはどう映っているの?醜い?それともおぞましい?
アタシは自分のこの姿が大嫌い」
目の前に佇んでいたのは魔人ではなかった。
恐竜のようなぎょろりとした目。
紫の表皮は爬虫類のようで、鉤爪をたくわえた足は三本に分かれている。
人の形を成さないそれは、まるで竜と鳥を混ぜたかのような化物――。
怪鳥と化していた。
(これがソニアの本当の姿なの…っ)
「……へぇ、悲鳴上げないんだぁ、大したもんね。でも怯えているでしょ?匂いでわかる」
怪鳥と化したソニアは、その三つの目で優を見下ろしながら言った。
その圧倒的な存在感と大きさにまともに声が出ず、優は恐怖で硬直するしかなかった。
「残念ね、せっかく元の世界へ帰れるチャンスだったのに…。最後にもう一度だけ聞いてあげる。
おとなしくアタシに従えば、あなただけは見逃してあげるって言ってるの。悪い話じゃないと思うけど。
今だって恐怖で足がすくんでいるんでしょ?無駄な強がりはやめて、助けて下さいとアタシに懇願しなさい!
それとも…、これでもまだ、さっきの答えを選ぶというの?」
ソニアが再び取引を持ちかける。
優は少しの間考えこむと、深呼吸を一つし、言った。
「……元の世界への出口は、きっと私だけじゃたどり着けなかった。
キルトがいたから私、この不安定な世界でも自分を失くさずにいられた。
私だけ見逃してもらうとか、そんなこと私には意味のないことと同じだから。
だから…っ、私の答えは変わらない。あなたの提案には応じない!」
きっぱりと、そう優は言い切った。
ソニアの言うように恐怖で足は動かないし、心臓もバクバクしている。
でも、優は自分の心に従ったのだ。そこに迷いなどなかったのだ。
突然ソニアの口角がつり上がる。
「フフ、フ…、は、アハ…っ、あははハははは――っ!!」
狂ったように大声で笑い出した。そして先程までと変わらない薄ら笑いを浮かべる。
「ここまでうまくいかなかったのは初めてだわ。いいわ、もう…、興冷めよ」
血走った目で優を見ると、吐き捨てるようにソニアが言った。
すると空気が変わった気がして、優はぞくりとする。
「アタシ、かわいい女のコは好きなのよ。けどあなたはハズレだったみたい…。
どんなに怖くてもアタシに屈しないんですって?おもしろいこと言うのね。なら…、これはどうかしら?」
そう言うとソニアの背後から黒いもやのようなものが現れ、それらが魔人を包んでいく。
ざわざわ、ざわざわ、と周囲の森が騒々しく木々を鳴らす。
黒いもやに包まれながら、それは形を変えて次第に大きくなっていく。
辺りには生温かい風が流れ、これ以上ここにいてはいけないという不穏な空気に満ちていく。
そしてもやが薄れると、その姿があらわになった。
(なに、これ…っ)
優は言葉を失い戦慄する。
「アタシの今の姿、優の目にはどう映っているの?醜い?それともおぞましい?
アタシは自分のこの姿が大嫌い」
目の前に佇んでいたのは魔人ではなかった。
恐竜のようなぎょろりとした目。
紫の表皮は爬虫類のようで、鉤爪をたくわえた足は三本に分かれている。
人の形を成さないそれは、まるで竜と鳥を混ぜたかのような化物――。
怪鳥と化していた。
(これがソニアの本当の姿なの…っ)
「……へぇ、悲鳴上げないんだぁ、大したもんね。でも怯えているでしょ?匂いでわかる」
怪鳥と化したソニアは、その三つの目で優を見下ろしながら言った。
その圧倒的な存在感と大きさにまともに声が出ず、優は恐怖で硬直するしかなかった。
「残念ね、せっかく元の世界へ帰れるチャンスだったのに…。最後にもう一度だけ聞いてあげる。
おとなしくアタシに従えば、あなただけは見逃してあげるって言ってるの。悪い話じゃないと思うけど。
今だって恐怖で足がすくんでいるんでしょ?無駄な強がりはやめて、助けて下さいとアタシに懇願しなさい!
それとも…、これでもまだ、さっきの答えを選ぶというの?」
ソニアが再び取引を持ちかける。
優は少しの間考えこむと、深呼吸を一つし、言った。
「……元の世界への出口は、きっと私だけじゃたどり着けなかった。
キルトがいたから私、この不安定な世界でも自分を失くさずにいられた。
私だけ見逃してもらうとか、そんなこと私には意味のないことと同じだから。
だから…っ、私の答えは変わらない。あなたの提案には応じない!」
きっぱりと、そう優は言い切った。
ソニアの言うように恐怖で足は動かないし、心臓もバクバクしている。
でも、優は自分の心に従ったのだ。そこに迷いなどなかったのだ。
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