ナイトメアシンドローム
-2-
「フフ、あなたは優しいお嬢さんねぇ…、
裏切られたってのにそんなコかばうなんて。許すもなにも、この約束は全てそのぼうやが持ちかけてきたものよ。
アタシはそれに応じて、彼が望んだ出口の場所をちゃんと教えてあげたの。
それなのに、自らそれを破ったのよ?
アタシもあなたも、結局そのコにいいように利用されたってこと。
ここまでされて穏やかでいられるほど、生憎アタシは寛大じゃなくってね…」
そうソニアは冷ややかに言った。
そして優を見つめたまま少しだけ考えると、再び口を開いた。
「でも、そうね…。じゃあ、代わりにあなたが身代わりになる?」
「え…?」
何を言われたのかすぐにはわからなかった。
優は顔を上げ、ソニアを見つめ返す。
「そのぼうやを助けたいのでしょ?なら、そうしてあげる。
ただし、代わりにあなたをいただきましょうか。もともとそのコ、自分の自由のためにあなたをアタシに差し出そうとしたんだから。
そうだ…、今度は逆にしてあげましょうか?」
優は意味がわからないという顔をする。
そんな彼女を、ソニアはおもしろそうな目で見ると言った。
「かばうまねなんてやめなさい。
そうすればあなただけは見逃してあげる。元いた世界へ帰してあげましょう」
そう告げられた言葉に、優は目を見開いた。
誘惑のような言葉に、心がわずかに揺らぎそうになる。
しかしそれは、同時に残酷なものであった。
「まぁ、そのぼうやをこちらに引き渡せたらの話だけど」
そう告げられ、一気に地へ突き落される。
「さぁ、どうするの?あなたが自由になる代わりにそのお友達を切り捨てるか。
それともそのコをかばってあなたが身代わりになるか…。どちらか選びなさい。アタシはどちらでもいいわよ。
それから、選べない場合はそのどちらもいただくから」
そう言うソニアの顔はきれいに歪んでいた。
なんて一方的で理不尽な条件だろうか。
優はソニアから目をそらしてうつむいた。もうそれくらいしか、自分にできる動作がなかったのだ。
もしソニアにキルトを渡してしまったら、きっと殺されてしまう。そんなの絶対にいやだ。
でも、代わりに自分が身代わりになるなんて…。
そしたらもう二度と家には帰れない。
ソニアの手に落ちて、自分の顔も名前も記憶もなくして、この悪夢のような世界をずっとさ迷うのだ。
彼のように――。
(怖い…)
「さぁお嬢ちゃん、どちらを選ぶの?」
「あ……」
威圧的な魔人の言葉が胸に突き刺さる。まるで心臓を握られているかのように苦しい。
優の口からは空気がもれるだけで言葉は出てこない。首筋には嫌な汗が流れる。
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