ナイトメアシンドローム
第12夢 再会 -1-
優とキルトはお互い黙ったまま、森の奥へ奥へと足を進めていく。
もうずいぶん歩いただろうか――。
しかし、森の様子は一向に変わる気配がない。
進めばわかるとは言われたものの、あの水仙の言葉だ。適当な情報でまた自分はいいように遊ばれているのではないか。
そんな不安が優の中に付きまとっていた。
無事に帰れるといいね。元の世界にさぁ――。
(私、何しているんだろう…)
ふと、優は今さら過ぎることを思った。
本当なら、いつもどおり学校を終え、いつもどおりの道を通って当たり前のように家につく。
何も不思議なことはない。
そう、いつもどおり――。
なのに、何でこんなことに?
元の世界…。
水仙の言葉がやけに頭に響いていた。
(あれ?)
元の世界?
元の世界とは、いったい…。
ふと、優は思った。
ああ…、これは夢だ。
きっと私は眠っていて、それで今こんなことをしているんだろう。
そうだよ、きっと。だってそうじゃないと…
もう、なんか変になりそう――。
そう頭をよぎった時、どこからともなく甘い香りが漂ってきて、優の鼻をくすぐった。
(あ、これは…)
優はハッとする。
微かに甘く、独特だけどやわらかい、森の匂い。
森の中にいながらも今まで感じなかった、どこか不思議な匂いだ。
香木の森が近づいている。
そしてこのまま進めば、おそらく青ガラスがいる。
青ガラスが、いる…?
優の足が無意識に駆け出す。
(はやく、早くしないと…っ)
走れば走るほど、森の香りが濃くなっていく。
優は青ガラスを追うのに無我夢中で走る。
だってあの青は、すぐに姿を消してしまうから。
自分にとって唯一の、夢から覚めるための道標だから。
この機を逃したら、もう二度と追いつけないと、そう思ったから。
優は転がるように走り続けた。
森を駆ける足はやがてつまづき、その勢いで優は派手に転んでしまう。
ひざに大きなすり傷ができ、血がにじみ出る。
ズキズキと傷が痛む。
「――君はよく転ぶな」
その時、どこかから声が聞こえた。
優の頭上を影がかすめたかと思うと、それは近くの木の枝へと移り彼女を見下ろした。
「あ…」
青ガラスだった。
この世界に足を踏み入れてしまった時、あの入口のような鳥居で出会った時のように、彼はそこにいたのだ。
もうずいぶん歩いただろうか――。
しかし、森の様子は一向に変わる気配がない。
進めばわかるとは言われたものの、あの水仙の言葉だ。適当な情報でまた自分はいいように遊ばれているのではないか。
そんな不安が優の中に付きまとっていた。
無事に帰れるといいね。元の世界にさぁ――。
(私、何しているんだろう…)
ふと、優は今さら過ぎることを思った。
本当なら、いつもどおり学校を終え、いつもどおりの道を通って当たり前のように家につく。
何も不思議なことはない。
そう、いつもどおり――。
なのに、何でこんなことに?
元の世界…。
水仙の言葉がやけに頭に響いていた。
(あれ?)
元の世界?
元の世界とは、いったい…。
ふと、優は思った。
ああ…、これは夢だ。
きっと私は眠っていて、それで今こんなことをしているんだろう。
そうだよ、きっと。だってそうじゃないと…
もう、なんか変になりそう――。
そう頭をよぎった時、どこからともなく甘い香りが漂ってきて、優の鼻をくすぐった。
(あ、これは…)
優はハッとする。
微かに甘く、独特だけどやわらかい、森の匂い。
森の中にいながらも今まで感じなかった、どこか不思議な匂いだ。
香木の森が近づいている。
そしてこのまま進めば、おそらく青ガラスがいる。
青ガラスが、いる…?
優の足が無意識に駆け出す。
(はやく、早くしないと…っ)
走れば走るほど、森の香りが濃くなっていく。
優は青ガラスを追うのに無我夢中で走る。
だってあの青は、すぐに姿を消してしまうから。
自分にとって唯一の、夢から覚めるための道標だから。
この機を逃したら、もう二度と追いつけないと、そう思ったから。
優は転がるように走り続けた。
森を駆ける足はやがてつまづき、その勢いで優は派手に転んでしまう。
ひざに大きなすり傷ができ、血がにじみ出る。
ズキズキと傷が痛む。
「――君はよく転ぶな」
その時、どこかから声が聞こえた。
優の頭上を影がかすめたかと思うと、それは近くの木の枝へと移り彼女を見下ろした。
「あ…」
青ガラスだった。
この世界に足を踏み入れてしまった時、あの入口のような鳥居で出会った時のように、彼はそこにいたのだ。
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