ナイトメアシンドローム
-6-
「まだ本調子ってわけじゃ、ないけど。一度きりなら、まだエネルギーが残ってるからたぶん…、いける。
ずっと探してた大事なものも見つけてもらったし。それにボク、このコに悪いことしちゃったんだよね?
だからせめてこれくらい、力になってあげたいんだよね」
リクロックは優を見つめると申し訳なさそうに、ごめんなさいと頭を下げた。
その様子はまるで、親に叱られて悲しんでいる子どものようだった。
「いえ…、特にケガはなかったし。私たちを青ガラスの所へ送ってくれるなら、ありがたいし助かります」
彼の謝罪を、優は軽く受け流す。
リクロックは暴走時の記憶はほとんど空白で、微かにしか残ってないらしい。
ただ罪の意識は感じているようで、それに加えて自分たちのために力を貸してくれるということ。
それだけで、優には十分だった。
「それじゃあ…、いくよ」
青い羽を手に、リクロックが意識を集中させる。
するとラジオのノイズ音のようなものが段々聞こえてきて、同時にどこからか生温かい風が発生し、優とキルトの周りを包んでいく。
「ちょっと気分悪くなると思うから、目ぇ閉じてたほうがいいよ…っ」
「優、元気でね…。あたし、あなたたちのこと忘れない!」
少し苦しそうにリクロックが言う。
大技というだけあって、やはり彼の身に大きな負担がかかっているようだ。
額にはうっすらと冷や汗がにじんでいる。
「私も、忘れません。あなたたち…、オルカとリクロックのこと。いろいろありがとう」
優は少しはにかみながら名前をつぶやく。でもしっかりと二人の姿を見つめてから、言われた通り目を閉じた。
「――時間移動…っ!!」
リクロックがそう叫んだ瞬間、バチィ…っ、と電気を弾いたような音と閃光が辺りを包む。
そしてその場所には、もはや優たちの姿はなかった。
「や、やったわ!成功よリック…」
オルカが歓喜の声をあげると同時に、リクロックは糸が切れたようにその場に倒れてしまった。
どうやら今ので完全に力を使い果たしてしまったようだ。
しばらくの間、彼は深い休眠から目を覚ますことはないだろう。オルカは安心したようにやわらかく口元をゆるめる。
「…よくがんばったね、リック。ゆっくりおやすみ」
静かにつぶやくと、リクロックの頭をやさしくなでるオルカ。そして、つい先ほどまで優たちのいた場所へと視線を戻した。
「無事にあのカラスさんの元にたどり着けるといいわね…」
静まり返った部屋の中、彼女のひとりごとがやけに大きく響いた。
(どうかあの二人の行く先に、神のご加護がありますように…)
オルカは心の中で、一人そう祈るのであった。
ずっと探してた大事なものも見つけてもらったし。それにボク、このコに悪いことしちゃったんだよね?
だからせめてこれくらい、力になってあげたいんだよね」
リクロックは優を見つめると申し訳なさそうに、ごめんなさいと頭を下げた。
その様子はまるで、親に叱られて悲しんでいる子どものようだった。
「いえ…、特にケガはなかったし。私たちを青ガラスの所へ送ってくれるなら、ありがたいし助かります」
彼の謝罪を、優は軽く受け流す。
リクロックは暴走時の記憶はほとんど空白で、微かにしか残ってないらしい。
ただ罪の意識は感じているようで、それに加えて自分たちのために力を貸してくれるということ。
それだけで、優には十分だった。
「それじゃあ…、いくよ」
青い羽を手に、リクロックが意識を集中させる。
するとラジオのノイズ音のようなものが段々聞こえてきて、同時にどこからか生温かい風が発生し、優とキルトの周りを包んでいく。
「ちょっと気分悪くなると思うから、目ぇ閉じてたほうがいいよ…っ」
「優、元気でね…。あたし、あなたたちのこと忘れない!」
少し苦しそうにリクロックが言う。
大技というだけあって、やはり彼の身に大きな負担がかかっているようだ。
額にはうっすらと冷や汗がにじんでいる。
「私も、忘れません。あなたたち…、オルカとリクロックのこと。いろいろありがとう」
優は少しはにかみながら名前をつぶやく。でもしっかりと二人の姿を見つめてから、言われた通り目を閉じた。
「――時間移動…っ!!」
リクロックがそう叫んだ瞬間、バチィ…っ、と電気を弾いたような音と閃光が辺りを包む。
そしてその場所には、もはや優たちの姿はなかった。
「や、やったわ!成功よリック…」
オルカが歓喜の声をあげると同時に、リクロックは糸が切れたようにその場に倒れてしまった。
どうやら今ので完全に力を使い果たしてしまったようだ。
しばらくの間、彼は深い休眠から目を覚ますことはないだろう。オルカは安心したようにやわらかく口元をゆるめる。
「…よくがんばったね、リック。ゆっくりおやすみ」
静かにつぶやくと、リクロックの頭をやさしくなでるオルカ。そして、つい先ほどまで優たちのいた場所へと視線を戻した。
「無事にあのカラスさんの元にたどり着けるといいわね…」
静まり返った部屋の中、彼女のひとりごとがやけに大きく響いた。
(どうかあの二人の行く先に、神のご加護がありますように…)
オルカは心の中で、一人そう祈るのであった。
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