ナイトメアシンドローム
-2-
「なぁ優ー、こっちにでっかい鏡あるぞ」
ふいにキルトに呼ばれ、優はそちらに近づいてみる。
すると、扉のように大きくて立派な鏡がそこにあった。
古いけど、堂々と佇むように置かれたそれは、どこか不思議な存在感を醸し出していた。
「あぁ、それは姿映しの鏡ね」
オルカが答えた。しかし、優はその言葉に少し違和感を感じた。
「?鏡だから姿を映すのは当たり前なんじゃ…」
「うん、いいわねその反応!もちろんふつうの鏡じゃないわ。なんでもこれは、本当の姿を映す鏡なんだとか。
これの前ではいっさいの偽りははね返されて、バケノカワがはがれる?とでもいうの…?
正体探りの鏡ともいうらしいわね」
「本当の姿…」
オルカの話を聞いて、優は妙な緊張感を感じた。
そうなると、なんだか目の前にある鏡が急に怖く思えてきて体が強ばった。
「なに緊張してんのー!どこにでもある伝承のひとつよ。まあ…、人によっては見え方は様々でしょうけど。
そんなのあたしたちにはわからないし、姿とやらが見えてもなんの意味も成さないもの」
そう言うとオルカは両手を肩の辺りで広げて首をかしげた。
お手上げ、といった様子だ。
「おいらもさっぱりだなー」
キルトも鏡とにらめっこしているが、同じ姿が映るだけで特に変わったところはないようだ。
「あ、ここ…」
ふと、優は鏡の中に傷があるのを見つけた。
よく見れば所々に不自然なひびがいくつもある。
「あぁ、それは…」
オルカの表情が少し曇った。
「その鏡は、もともと主の私物でね。あの方は美しい方よ。それこそ鏡が似合うくらい。
でも、ある日主はこの鏡に映ることをひどく嫌がるようになって…。バラバラにしてしまったの」
そう言って、オルカは鏡を見上げる。
「もういらない、って主が言ったの。あたし、このコが不憫に思えてならなかった。
だからあたし、主に内緒でこっそり引き取ることにしたの。
バラバラに砕けたこのコの欠片を合わせてリックの力で修復させて、なんとか元の形には直してあげられたんだけど…。
でもやっぱり、あたしたちじゃ、隅々まできれいにはいかなかったみたい」
オルカは困ったように笑うと、申し訳なさそうに肩をすくめた。
「…でも、こうしてまた姿が映せるくらいまで直してあげられたのはすごいと思う」
そんな彼女の話に、優はしみじみと言った。
一度はバラバラに壊された鏡を、オルカたちは懸命にここまでよみがえらせたのだ。
多少の傷が残っていたところで、この鏡が彼女を恨むことなんてない。そう優は素直に思えたのだ。
「そう、かしら…?」
「そうですよ」
優の言葉に、オルカの表情に少しだけ安堵の色がみえた。
ぴちゃん――…
すると突然、辺りの空気が変わった。
ふいにキルトに呼ばれ、優はそちらに近づいてみる。
すると、扉のように大きくて立派な鏡がそこにあった。
古いけど、堂々と佇むように置かれたそれは、どこか不思議な存在感を醸し出していた。
「あぁ、それは姿映しの鏡ね」
オルカが答えた。しかし、優はその言葉に少し違和感を感じた。
「?鏡だから姿を映すのは当たり前なんじゃ…」
「うん、いいわねその反応!もちろんふつうの鏡じゃないわ。なんでもこれは、本当の姿を映す鏡なんだとか。
これの前ではいっさいの偽りははね返されて、バケノカワがはがれる?とでもいうの…?
正体探りの鏡ともいうらしいわね」
「本当の姿…」
オルカの話を聞いて、優は妙な緊張感を感じた。
そうなると、なんだか目の前にある鏡が急に怖く思えてきて体が強ばった。
「なに緊張してんのー!どこにでもある伝承のひとつよ。まあ…、人によっては見え方は様々でしょうけど。
そんなのあたしたちにはわからないし、姿とやらが見えてもなんの意味も成さないもの」
そう言うとオルカは両手を肩の辺りで広げて首をかしげた。
お手上げ、といった様子だ。
「おいらもさっぱりだなー」
キルトも鏡とにらめっこしているが、同じ姿が映るだけで特に変わったところはないようだ。
「あ、ここ…」
ふと、優は鏡の中に傷があるのを見つけた。
よく見れば所々に不自然なひびがいくつもある。
「あぁ、それは…」
オルカの表情が少し曇った。
「その鏡は、もともと主の私物でね。あの方は美しい方よ。それこそ鏡が似合うくらい。
でも、ある日主はこの鏡に映ることをひどく嫌がるようになって…。バラバラにしてしまったの」
そう言って、オルカは鏡を見上げる。
「もういらない、って主が言ったの。あたし、このコが不憫に思えてならなかった。
だからあたし、主に内緒でこっそり引き取ることにしたの。
バラバラに砕けたこのコの欠片を合わせてリックの力で修復させて、なんとか元の形には直してあげられたんだけど…。
でもやっぱり、あたしたちじゃ、隅々まできれいにはいかなかったみたい」
オルカは困ったように笑うと、申し訳なさそうに肩をすくめた。
「…でも、こうしてまた姿が映せるくらいまで直してあげられたのはすごいと思う」
そんな彼女の話に、優はしみじみと言った。
一度はバラバラに壊された鏡を、オルカたちは懸命にここまでよみがえらせたのだ。
多少の傷が残っていたところで、この鏡が彼女を恨むことなんてない。そう優は素直に思えたのだ。
「そう、かしら…?」
「そうですよ」
優の言葉に、オルカの表情に少しだけ安堵の色がみえた。
ぴちゃん――…
すると突然、辺りの空気が変わった。
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