ナイトメアシンドローム

ブンカ工場長

-3-


「へぇー、かかしさんの導きをね。そしたらここへたどり着いたってわけね」
「そうです。標がかしは何かの縁を感じるからって…。私たち、教えてもらった方角へ進んでたんですけど。
そしたら、すごくきれいな音が聞こえてきて、それを追っていたらここに…」
「きれいな音!?」

優の言葉に、オルカがいっそう目を輝かせた。

「それ、あたしの演奏なの!」

そう言うと、オルカは両手を左右に広げて静かに目を閉じ、何やら意識を集中させる。

(…あ)

するとあの時に聞いたあの音色が、彼女の身体を通して優の脳内に響いてきた。
優しくて心地の良い、とても安らぐオルゴールの音色。

「あなたが鳴らしていたんだ…」
「そうよ!」

えっへんとオルカが自信たっぷりにうなずいてみせた。

「あたしの演奏は主に捧げるものだけど、あのコたち・・・・・のためでもあるのよね」
「あのコたち?」

優は首をかしげる。するとオルカは少し表情を曇らせて困ったように笑うと言った。

「……この聖堂に来る途中、荒れ果てた場所があったでしょ?
そこにたくさんのがらくた、いえ…、捨てられたモノがあったと思うけど、アレよ」

その言葉に、優の脳裏にあの怪物の姿がフラッシュバックする。

「彼らもあたしやリックと同類でね。人に捨てられ外からやって来た、哀れながらくた…。
ただ違ったのは、あのコたちはこの世界に適応できなかったってこと」

浮かない表情でオルカが言った。

「適応できなかった、とは…?」
「あたしたちは主の力で今の姿へと変化し、新たな存在として生まれたわ。
でも彼らは…、それに適応できずあたしたちみたいになれなかった。
この世界にはいたる所に主の魔力が漂っているから、たぶん…、合わなかったんだと思う」

そう語るオルカは、なんともやりきれない様子だ。
優はその怪物のことを話した。

「そのがらくたは怪物みたいになって私たちを追いかけてきました」

結構、危なかった。
そう話すと、オルカは驚いたように目を見開く。そして納得するかのようにうなずいた。

「それはきっと、優の命に反応したんじゃないかしら」
「私の、命…?」

オルカの言葉に優は首をかしげる。命に反応するとは、どういうことなのだろうか。

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