ナイトメアシンドローム
-4-
「なんなんだよアレ!?これまじでハズレの道だぞ…っ!やっぱりだまされたんだ、あのかかし野郎…っ」
キルトが恨めしそうに悪態をつく。
「とにかくどこかに隠れないと…っ」
優はとっさに近くのゴミ山のかげに身を隠した。
キルトもあわてて後に続き、二人して怪物が立ち去るのを待つ。
「はぁ、はぁ…っ、ちくしょう…」
「しー…っ」
キルトの顔は強ばり、おびえた子どものようだ。優も激しく動く心臓を落ちつかせようと、乱れた呼吸を整える。
そしてほんの少し、ゴミ山から顔をのぞかせて様子をみた。
ガシャリ…、とあの音が近づいてくる。
(どうか見つかりませんように…っ)
そう強く祈りながら、優はやり過ごせるように願う。
しかしその思いとは裏腹に、怪物の動きは二人が隠れた場所の近くまで来ると止まった。
そして空を仰ぐように体を起こし、何かを感知しようとするかのように、ただじっと動かなくなった。
「あいつ…、壊れたのか?」
まるで充電が切れたおもちゃのように、突然動かなくなった怪物。
その様子に安心したのか、キルトの声にわずかにハリが戻った。
「エネルギー切れ…、とかかな?」
優も困惑気味だが、それでも張りつめた緊張感が少しだけほぐれた。
だが、それも束の間。
怪物の動きが止まった一方で、周囲に異変が起こったのだ。
かろうじて生えていた草木は完全に朽ち果て、乾いた大地はさらに干からびて砂と化した。
「あ!山が…っ」
キルトが声を上げると、二人を隠していたものから周囲にかけて、積み上げられたがらくたが急激に風化しボロボロと崩れていく。
荒野から一変、あっという間に辺りは砂漠と化したのだ。
『――ガ…、ギィ…っ』
怪物の生気のない目が二人の存在をとらえた。
隔てるものがなくなった今、優たちの姿は丸見えとなり、身を隠してくれるものはもう何もなくなった。
ガシャ…、と怪物が近づく。
「う…、うわぁああぁ――っ!?」
キルトは悲鳴を上げ、恐怖のあまり一目散に逃げ出した。優はわずかに反応が遅れ、あわてて駆け出す。
「あ…っ!」
その時、優は砂地に足をとられてしまった。バランスを崩した彼女はそのまま転倒する。
「う…」
砂地なので痛くはない。
だが、やわらかい砂は足にまとわりつき走ることを妨げてくる。
「おい優…っ、はやく立てよ!」
そうキルトが叫ぶと同時に、フッと彼女の頭上に影ができる。
ふり返れば、あの怪物がすぐそばにいて、優を見下ろしていた。
『ギ、ィ…っ』
怪物の目が、優をとらえて離さない。
それは何かに強い執着を抱いているかのようだった。
寒い。
そして力が出ない…。
まるで全身の体温と体力を吸い取られていくような感覚。優は動けなくなっていた。
怪物は身を屈めると、ぐわっと巨大な口を開ける。
「優…っ!!」
キルトが叫んだ。
大きく開かれた口は真っ暗な洞窟のようで、のみ込む気なのか、それが優めがけて襲いかかってくる。
キルトは両手で顔を覆った。
優は、ぎゅっと目を閉じた。
キルトが恨めしそうに悪態をつく。
「とにかくどこかに隠れないと…っ」
優はとっさに近くのゴミ山のかげに身を隠した。
キルトもあわてて後に続き、二人して怪物が立ち去るのを待つ。
「はぁ、はぁ…っ、ちくしょう…」
「しー…っ」
キルトの顔は強ばり、おびえた子どものようだ。優も激しく動く心臓を落ちつかせようと、乱れた呼吸を整える。
そしてほんの少し、ゴミ山から顔をのぞかせて様子をみた。
ガシャリ…、とあの音が近づいてくる。
(どうか見つかりませんように…っ)
そう強く祈りながら、優はやり過ごせるように願う。
しかしその思いとは裏腹に、怪物の動きは二人が隠れた場所の近くまで来ると止まった。
そして空を仰ぐように体を起こし、何かを感知しようとするかのように、ただじっと動かなくなった。
「あいつ…、壊れたのか?」
まるで充電が切れたおもちゃのように、突然動かなくなった怪物。
その様子に安心したのか、キルトの声にわずかにハリが戻った。
「エネルギー切れ…、とかかな?」
優も困惑気味だが、それでも張りつめた緊張感が少しだけほぐれた。
だが、それも束の間。
怪物の動きが止まった一方で、周囲に異変が起こったのだ。
かろうじて生えていた草木は完全に朽ち果て、乾いた大地はさらに干からびて砂と化した。
「あ!山が…っ」
キルトが声を上げると、二人を隠していたものから周囲にかけて、積み上げられたがらくたが急激に風化しボロボロと崩れていく。
荒野から一変、あっという間に辺りは砂漠と化したのだ。
『――ガ…、ギィ…っ』
怪物の生気のない目が二人の存在をとらえた。
隔てるものがなくなった今、優たちの姿は丸見えとなり、身を隠してくれるものはもう何もなくなった。
ガシャ…、と怪物が近づく。
「う…、うわぁああぁ――っ!?」
キルトは悲鳴を上げ、恐怖のあまり一目散に逃げ出した。優はわずかに反応が遅れ、あわてて駆け出す。
「あ…っ!」
その時、優は砂地に足をとられてしまった。バランスを崩した彼女はそのまま転倒する。
「う…」
砂地なので痛くはない。
だが、やわらかい砂は足にまとわりつき走ることを妨げてくる。
「おい優…っ、はやく立てよ!」
そうキルトが叫ぶと同時に、フッと彼女の頭上に影ができる。
ふり返れば、あの怪物がすぐそばにいて、優を見下ろしていた。
『ギ、ィ…っ』
怪物の目が、優をとらえて離さない。
それは何かに強い執着を抱いているかのようだった。
寒い。
そして力が出ない…。
まるで全身の体温と体力を吸い取られていくような感覚。優は動けなくなっていた。
怪物は身を屈めると、ぐわっと巨大な口を開ける。
「優…っ!!」
キルトが叫んだ。
大きく開かれた口は真っ暗な洞窟のようで、のみ込む気なのか、それが優めがけて襲いかかってくる。
キルトは両手で顔を覆った。
優は、ぎゅっと目を閉じた。
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