パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第7話 龍脈

 リエンにシュラーケンの店前まで送って貰う。


 久々に来たが、相変わらず汚ぇ店だな……。


「それではジオウさん、また後ほど迎えに来ます」


「おう。ご苦労さん」


《ブラックボックス》の向こうで手を振るリエンに手を挙げて応え、店に向き直る。


 ……ん? 店の中にシュラーケン以外の気配がある……? 参ったな、俺も結構急いでるんだけど……。


 扉を開け、店に入る。


 奥のカウンターには、面倒臭そうに頭を磨くシュラーケンと、その前で憤ってる奴がいた。


 黒いローブを着ていて、男か女かは分からない。


 この店に来る奴は大抵裏に精通してる奴だから、それ自体は珍しくもない。


「ん? お、旦那。生きてたのかい」


「まあな。……時間掛かりそうなら、後で来るぞ」


「んやぁー、話は終わった。こいつ金払い悪いからな。何も話すことぁねぇよ」


 シュラーケンがローブ姿の奴にシッシッと手を振る。


「チッ……! だからっ、金は払うっつってんだろジジイ!」


「お前さんの知りたい情報なら金貨一五〇枚だって言ってるだろ」


「高過ぎんだよ! 舐めてんのかテメェ!」


 ……はぁ。こいつ、さては素人か?


「おいあんた。シュラーケンの情報は全て正しい。こいつが金貨一五〇枚っつってんなら、それ相応の価値があるってことだ。払えないなら消えろ。俺の番だ」


「黙ってろガキが!」


 黒ローブが振り返る。


 ……あれ、こいつ……?


 黒いローブ。肌を隠す黒い包帯。目を隠す白い仮面……。


 こいつ、まさか最近サシェス族の周りをうろちょろしてる奴か?


「金を払うなら教える。だが金を持ってねー奴は客じゃねぇ。失せな」


「グッ……くっ……! ふぅ……次は金を持ってくる。邪魔した」


 黒ローブは俺と顔を合わせようとせず、中々の速さで店を飛び出して行った。


 ……何だったんだ、あいつ?


「悪いな、旦那。待たせた」


「いや、別にいいが……あいつはナニモンだ?」


 金貨一枚を取り出すが、シュラーケンは受け取らず首を横に降った。


「金はいらん。あいつに関しては売れる情報がないからな」


 ……シュラーケンにも情報がない? マジか……?


「……別の質問だ。あいつらは何の情報を得ようとしていた?」


 金貨一枚を渡すと、今度は受け取った。


「どうやら、龍脈ってのを探しているらしい。場所を聞かれた」


「……龍脈だと? 龍脈ってのはあれだろ、古龍の屍から流れ出るっていう……」


「ああ、その龍脈だ」


 今のドラゴンをも遥かに凌ぐ力を持つ、古龍。


 その古龍の亡骸は、今なお強力な力を持ち、漏れ出た魔力は龍脈となって世界各地へ枝のように伸びているらしい。


 だが龍脈は、人間には勿論、亜人にも感知出来ない。唯一ドラゴンだけ感じられると言うが、ドラゴンを手懐けるのは人類には無理だ。


 そんな龍脈を探してるなんて……何がしたいんだ、あいつらは……?


「……で、お前は龍脈の場所を知ってるんだろ? どこにある?」


「金貨一五〇枚」


「はいよ」


 敵になるかもしれない奴らの情報を先に得るのは、戦いの初歩だ。こんな所で金を渋る訳にはいかない。


「詳しい場所は分からん。だが、ドラゴンの眠る場所に龍脈はあると言う」


「ドラゴンの眠る……?」


 ドラゴンの眠る……それってもしかして……。


「「鳴神峠」」


 俺とシュラーケンの声が被る。


 鳴神峠の雷龍は有名だ。常に寝ているが、攻撃力と破壊力が他のドラゴンに比べて群を抜いている。


 そうか、あいつの所に龍脈が……。


 口に手を当てて情報を整理してると、シュラーケンがパイプを蒸かして猛禽類のような笑みを浮かべた。


「しかし驚いた。まさかエルフを追ってた旦那が生きてるとはなぁ。諦めたかい?」


「ノーコメントで。それより、本題に入らせてくれ」


 俺は一枚の紙をシュラーケンに渡す。


 紙を開いたシュラーケンは、目を見開いた。


「……こいつぁ……」


「あるだけ欲しい。いくらだ?」


「……ここには全部で十ある。一つ金貨五枚。合計で五〇枚だ」


「十分だ」


 シュラーケンの前に金貨を渡すと、シュラーケンの背後から麻袋が飛んできた。


「旦那、まさかあそこに行く気かい?」


「これを買ったんだ。それしかないだろ」


「そうだが……止めといた方がいい。あそこは今は……」


「おっと、情報を軽く口にするなよ。情報屋の名が泣くぞ」


 あそこがどれだけ危険かなんて、よく分かってる。


 でも、どんなことをしてでも、俺達はあそこに行かなきゃならないんだ。


「……気を付けろよ、旦那」


「分かってるさ」


 麻袋を懐に入れた俺は、足早に店を後にし、外で待っていたエタと一緒に大洋館へ戻っていった。

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