パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第4話 強化計画

   ◆◆◆


 ネズヒコと知り合い、海水浴を堪能した俺達は、ネズヒコを連れて大洋館へ戻って来た。


「……すげーっス……お金持ちっス……」


「ネズヒコ、ぼーっとしてないで早く来い」


「は、はいっス!」


 ネズヒコはあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロと忙しない。まあ、俺も何も知らないでここを見たら、同じ反応になるな。気持ちはよく分かる。


 執務室にやって来ると、エタが全員分のお茶を出してくれた。


「まずは、俺達の方の自己紹介をしないとな。俺はジオウ・シューゼン。まだ言えないが、ある組織の長をしている」


 順に、レアナ、リエン、クゥ、シュユ、セツナ、ミミさんを紹介していき、自己紹介を済ませたところで……。


「これより、ネズヒコ強化計画を実施する。期間は今から三ヶ月を期限とし、獣人史始まって以来の最強の獣人にする。いいな?」


「「「「「了解」」」」」


「み、皆さん、よろしくお願いするっス!」


 ネズヒコの気合いもバッチリみたいだ。これなら、これからのスケジュールにも耐えられるだろう。


「と言っても、三ヶ月という期間は短い。よって、実戦形式の修行をメインに行う」


「実戦? 実戦と言うのは、私達がネズヒコと戦うということか?」


 シュユが小さく手を上げて質問する。


「ああ。とにかく実戦、実戦、実戦だ」


「実戦はいいですけど、どのようにします? 私のアンデッド軍を使って、リンチでもしますか?」


 リエン……真面目な顔でエグいこと言うな。見ろ、ネズヒコがビビり散らしてるだろ……。


「ちゃんと手順を踏んで行くから、安心しろ」


「よ、良かったっス……」


 流石にそこまで鬼ではない……。


「まずは、避け勘と体力を付ける。その為にシュユ、ペル、あとレアナに手伝ってもらう」


「私達か?」


「いいけど、何をすればいいの?」


 やることは至って単純だ。


「シュユは、とにかく魔法を連発してくれればいい。レアナはその隙を縫って、物理的にネズヒコを攻撃してくれ。ネズヒコはそれをとにかく避けまくること」


「……それだけっスか?」


 お? 余裕そうだな。


 ネズヒコは腕を組んで、得意げな顔をする。


「自分で言うのもなんっスけど、ネズミの獣人は素早さを売りにしてるっス。獣人だから体力もあるっスよ」


「自信満々だな。じゃ、早速庭に出て見せてもらおうか。獣人の力ってやつを」


 エタの時空間魔法で、執務室から庭に出る。


 庭先は、みんなの訓練用に簡単に壊れないよう強化してある。でないと、みんながちょっと力を使っただけで地形が変わるからな。景観的にも宜しくないし。


 レアナ、シュユ、ネズヒコは俺達から少し離れた場所に移動すると、各々準備運動を始めた。


「俺の合図でスタートだ。準備はいいか」


「オッケーよ」


「うむ」


「おっス!」


「じゃあ──始め!」


 合図を出すと、シュユが右腕を前に出す。


「《煌王の殲滅刃スパーク・アナイアレーション》」


 シュユの周囲に展開される、光の刃。


 その数は徐々に増えていき……シュユの背後が見えなくなるほどの数となった。


「……ぇ……」


 顔面蒼白になるネズヒコ。


 だがシュユはまだ止まらない。


「ペル、《自然砲・連弾》用意」


「────!」


 ペルが口を大きく開けると、その前方に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「ま、待っ──」


「発射!」


 シュユの声と共に、光の刃と光の弾が一斉に発射される。


「ほげえええええええええっ!?」


 ネズヒコは我を忘れ、脱兎の如く逃げ回る。本能と直感のお陰か、ギリギリ躱せてるな。


 だが、それだけじゃないぞ。


「ふんふんふーん♪ ふんふふーん♪」


 レアナが鼻歌を歌いながら、魔法の雨の中をまるで散歩するように歩く。


《鑑定眼》と《千里眼》を上手く使って、最小の動きで安全地帯を見極めて避ける。流石、上手く使いこなせてるな。


「ネズヒコ、私のことも忘れちゃ嫌よ?」


「えっ……!?」


 レアナの振り上げた拳。


 ネズヒコは流石に避けられないと判断したのか、腕をクロスして受ける。


「ごっ……!?」


 まるでイノシシに轢かれた子供のように、軽々と宙を舞った。


 見た感じ本気のパンチじゃないが……獣人でも、受けたらあんなに吹っ飛ぶのか。レアナやべぇな。


「や、ばい……っス……ご、ゴリラの獣人、っス……!」


 あ、馬鹿。


「ぬああああんですってえええええ!?」


「ほげええええええええええ! ごめんなさいっス、ごめんなさいっスーーーーー!」


 怒髪天を衝くを地で行ってるレアナ。その髪の毛どうなってんの?


 怒ったレアナの攻撃を避けつつ、シュユ達の魔法を避け……一分後、そこにはボロボロになって横たわっているネズヒコがいた。


「リエン、回復頼む」


「分かりました」


 アンデッドマジシャンがネズヒコの体を綺麗に治す。


「……はっ!? か、川が見えたっス……!」


 死ぬ一歩手前じゃねーか。


「ほれネズヒコ、休んでる暇ねーぞ」


 シュユとペルはまだやる気満々で、ネズヒコに向かって魔法を撃つ準備をする。


 レアナも首を鳴らして、拳を握り締めた。


「ネズヒコ、気張るのだぞ!」


「さあ、頑張りなさい!」


「ほ……ほげえええええええええええ!?!?!?」

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