パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

幕間

 〜???side〜


 何故か今日、私は朝からソワソワしていました。


 今日はギルドの仕事も休みだと言うのに、胸のざわめきと共に起きてしまい、とてもじゃないけど二度寝をする気になれませんでした。


 顔を洗っても、ご飯を食べても、お風呂に入っても……今ひとつ、身が入りません。


 どうしてしまったのでしょう? 病気?


 病気なら病院に行かないといけませんが……今手元にあるお金は、彼からいただいた五〇枚の金貨と、自分で稼いだ少量のお金だけ。


 流石にこの金貨は、私の良心が邪魔をして使えませんでした。と言うか大金過ぎて、使うのがはばかられました。


 ……気晴らしに、散歩にでも出掛けますか……。


 気まぐれで、家にある唯一のオシャレ着を着て街に出ます。


 おお、いい天気。これは散歩のしがいがありますね。


 ざわっ……。ん? 何でしょう? 何やら騒がしいような……。


 周りを見渡すと、皆さんが私に奇異な視線を送っていました。


 あれ、おかしいな……どこか、変でしょうか……?


 自分の格好を確かめていると、近所で仲のいいおばさんが話しかけてくれました。


「ミミちゃん、どうしちゃったんだい? 今日はヤケに気合いの入った格好だけど……」


「あ、おばさん、こんにちは。いえ、今日はこんな気分で……」


「……まあ、よかったわ。ギルドのこともあって、最近のミミちゃんは心配になるくらい思い詰めてたものね。……今日は何だか、晴れやかな顔だよ」


 え? そうかな、全然意識してませんでしたけど。


 頬をムニムニと触ると、おばさんは豪快に笑った。


「アッハッハッハッハッ! ミミちゃんらしいさね! 出掛けるんだろ? 気を付けて行ってきな」


「はい、ありがとうございますっ」


 おばさんに手を振って別れ、街を歩きます。


 街往く人達の多い賑やかな通りに、晴れやかな青空。


 今日は全てが新鮮で、色が彩やかに見えます。


「おや、ミミちゃん」
「ミミちゃん今日は元気ね」
「ミミお姉ちゃん遊ぼー!」
「ミミさーーーん! 好きだあーーーー!」


 ……皆さん、お元気ですね、本当に……。


 話しかけてくれる方にそれぞれ返事をしながら、通りを歩きます。


 ……ぁ……冒険者ギルド……。


 外から眺める私の勤め先は、今でも依頼人は少ないです。外見も徐々にみすぼらしく、まるで廃墟のように廃れていっています。


 本部からもどうにかしろと言われていますが……具体案は、私達の方でも出されていません。


 何をするにも、お金が足りないのです。


 はぁ……私も、転職しようかなぁ……。


「────!」


「────! ────!」


 ……あれ。何だかギルドの中が騒々しいですね。


「全く、ミミって人を迎えに来るなら、休みの日くらい把握しておきなさいよ」


「無駄足でしたね」


「しょうがねーだろ。俺だって久々なんだし、一々覚えてねーよ……」


「新しい仲間、楽しみだな、姉様」


「そうね。どんな子かしら?」


 …………ぁ……。


 あぁ、そうか……今日の胸のざわめきは、これだったんですね……。


 無意識に、足が動く。


 彼から、目が離せない。


 今日のざわめき、それは──。


「ジオウさんっ!」


 ──新しい、未来へのトキメキだ。

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