パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第20話 再会

「…………っ」


 シュユから目を逸らし、余計に身を縮こまるセツナ。だがシュユは、そんなことお構い無しに近付いてくる。


 ちょっと、これはまずいか……?


「おいシュユ、分かってるな? 流石に今は……」


「分かっている」


 いや、どう見ても分かってるようには見えないが……。


 シュユの圧に押され、思わず二、三歩退いてしまった。


 シュユは拳を握り、ゴキッゴキッと鳴らしてセツナを見下ろす。


「セツナ……私を見ろ」


「…………」


 僅かに、シュユに目を向けるセツナ。まるで親に怒られてる子供みたいだな。


「……セツナ、お前が里のみんなにしたこと……分かってるな。どれだけ迷惑をかけ、里を裏切ったか」


「っ…………」


 反論は、ない。自覚はしているみたいだ。


 シュユは握り締めた拳を、振り上げる。


「セツナ……目を閉じて歯を食いしばれ……!」


「…………」


 セツナは言われるがまま、目を閉じ受け入れる。


 そんなセツナへ、シュユは容赦なく拳を──。










 ギュッ……。










「……ぇ……しゅ、ゆ……?」


 ──拳を振り下ろさず、力強く、抱き締めた。


「……姉、さ……ま……生きて……生きてっ……ぅ……ふえぇぇぇぇぇんっ! ねえざまああぁ……! いぎでるよぉぉぉ……!」


 恥も外聞もなく、涙を流し、鼻水を垂らし、ただただ、セツナを抱き締める。


「……しゅ、ゆ……シュユ……シュユ……ふぇっ……うわあああああぁぁっ! シュユぅぅ……! ごめ、ごめんねっ、ごめんねっ……! あいだっ……あいだがっだああああ!」


「うえぇぇぇぇんっ! わだじもっ、あいだがっだよぉぉぉ!」


 ……シュユも、セツナも、似てない姉妹だと思ってたが……泣き顔は、本当にそっくりだな……。


 二人は、本当の意味で再会出来たんだ。……少し、二人にしてやろう……。


 二人から離れた場所に座り、チョコレットを食べながら見守る。


「ひっく……シュユ……私、あなたに酷いことを……」


「ぐすっ……わ、私は大丈夫だ……でも、里のみんなに手を出したことは、謝りに行こう。私も一緒に謝るから」


「……ありがとう、シュユ……」


 互いに見つめ合い、どちらともなく笑い合う。


 そのおかげか、周囲の景色も少しずつ正常に戻りつつあった。壊れた玩具も、大地も、空の色も、少しずつ直っていく。


「……あ……姉様、その……大丈夫、なのか……? 記憶の方は……」


「……ええ、大丈夫よ。あの男のせいで、全てを一瞬で思い出したけど……今ではそれが知識として頭の中にあるだけで、どこか他人事のような感じがするの……」


「それは多分、非情魔像に負の感情を全部抜かれたからだろうな」


 頃合を見計らって、二人に近づく。


「クロは、レアナの魔眼を時間内に奪えないと判断し、非情魔像を使って強制的にアビスを復活させた。恐らくその時に負の感情を取り除いたことで、心が壊れずに済んだんだろう。……だが、アビスは復活している。今は外で、レアナとリエンがアビスを足止めしているところだ」


 現状を聞いたセツナは、目を見開いて悲痛そうな顔をした。


「そ、んな……ごめんなさい、私のせいで……」


「ね、姉様のせいじゃないぞっ。そうだよな、ジオウ殿……!」


「……ああ。お前はクロに操られていた。お前のせいじゃない。……だが、アビス復活のために動き、尽力したという事実は消すことは出来ない」


 これは、紛れもない事実として、受け入れなきゃならないことだ。


 セツナの前に跪き、真っ直ぐ目を見つめる。


「俺の考えでは、アビスを殺すのにお前の力がいる。協力しろ」


「……無理よ……だって、クロの力は私より上だった。それが仕えてた悪魔なんて、私達にどうこう出来るレベルじゃない……それに、私はもうあいつと契約してた時の力は……」


「……セツナ、お前って知識知識言ってる割には、ちょっと頭悪いな。何のために、俺がここまで来たと思う」


 問答無用でセツナの手を取り、その手を力強く握る。


「俺と契約しろ、セツナ」


「…………ぇ……?」


「聞こえなかったか? 俺と契約しろと言ったんだ」


 契約を結べば、セツナも《縁下》でステータスが四倍になる。クロとの契約時と同等レベルの力を得られるはずだ。


「……ぁ……っ……」


 セツナの肩が震える。その肩に、シュユが優しく腕を回した。


「姉様、安心してほしい。落ち着いて。……彼なら大丈夫だ。私を信じて欲しい」


「シュユ……」


「……彼と契約するとな、互いがどこにいるのかが感覚で分かるんだ。どんなに離れていても、どんな状況でも……彼なら、絶対助けに来てくれる。そう思わせてくれる、不思議な男だ」


 ……そんな風に言われると、俺も恥ずかしいんだが……。


「……ジオウ君……私を、助けてくれる……?」


 セツナの瞳が、不安で揺れ動く。


「……ああ、任せろ。俺と契約するからには、絶対見捨てない。何があっても、助けてやる。……ただ、今は俺達を助けて欲しい。お前のその力で」


「…………」


 少しずつ……少しずつ、セツナの瞳に力が戻り……俺の手を、握り返した。


「……ジオウ君……私と、契約して」


「おう。よろしく頼むぞ、セツナ」


 《縁下》発動。






 ◇◇◇◇◇


 セツナと本契約を結びます。


 契約内容:雇用契約
 契約破棄条件
 ①雇用主の契約内容の破棄
 ②雇用主の死亡
 ③被契約者の死亡
 ④被契約者の悪事発覚
 ⑤雇用主への攻撃的行動


 契約しますか?
 ・YES
 ・NO


 ◇◇◇◇◇






 YESを選択。






 ◇◇◇◇◇


 セツナと本契約を結びました。


 ◇◇◇◇◇

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