パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第16話 世界の命運

「……む……? クロムウェルよ、俺の眼はどうした?」


「我が主、申し訳ございませン。今主の眼ハ、あの女の下にありまス」


「あの女?」


 アビスの濁った金色の目が、レアナを見る。人間を見る目じゃない。まるでゴミや害虫を見るような、感情のない目だ。


「……聞くが、クロムウェル。貴様はあの虫けらから俺の眼を奪えず、俺を復活させたのか?」


「はイ。奴らの力が強ク、また依代となる体の死期が近かった為、強制的に復活の儀式を行いましタ」


「なるほどな……復活の時期を早めたか……通りで、全盛期の力に満たぬ訳だ」


 ……この威圧感と存在感で、全盛期未満だと……? ギガントデーモンと同列の悪魔ってのは、どれだけぶっ壊れてんだ……!


 クロと、アビスは隙だらけで話を続ける。だが、俺達の誰一人動けずにいた。


「……クロムウェル。俺の力を与えた、親愛なる眷属よ。貴様は奴らに遅れを取る程までに弱かったか?」


「そ、そのような事ハ……」


「それとも、お前に力を与えた俺が弱いと言うことで良いか?」


「そんな事ありませン! 我が主はこの世にて絶対の力を持っておりまス!」


「では何故貴様は眼を奪えなかった?」


「そ、れはっ……」


 アビスの問いかけに、クロが言葉につまる。


「……よい、クロムウェル。眷属の責任は主である俺の責任だ。貴様のミスを許そう」


「あ、有り難き幸せでございまスッ」


 より一層頭を深々と下げるクロ。その頭を撫でるように、アビスは手をかざした。


「眷属の責任は主の責任。だが俺は、俺のミスを許さぬ。ならばどうするか……分かるか?」


「い、いエ、私にハ……ッ!?」


 アビスの手から禍々しいオーラが吹き荒れ、二人を中心に渦を巻く。


「わ、我が主ヨ、何ヲ……!?」


「俺は、俺のミスを許さぬ。だが現実として、ミスが発生している。ならばどうするか……そのミスを無くせばいい。貴様の死をもってして、ミスの存在を消す」


「ナッ……!?」


 渦を巻く黒いオーラが、形を変えて無数の棘になる。それらが全て、クロへと向いていた。


 まさか、本気で……? 自分の復活に五〇〇〇年も動いていた部下を、こんなあっさり殺すのか……!?


 別に助ける義理はないが愕然としていると、クゥが話しかけて来た。


『お兄ちゃん、悪魔に人間の常識は通じない、です。完全に復活した悪魔に情なんてない、です。強いか、弱いか。利用出来るか、出来ないか、です』


 なるほどな……どうやら本当に、【白虎】時代にやり合った悪魔とは別格らしい。


 当時やり合った悪魔は、取り込んだ人間の性格や情を一部分残していた。だけど今回は違う。負の感情によってレイガの魂や精神を壊し、完全な器として利用する。


 これがクゥの言ってた、真の悪魔か……!


「怖がることはないぞ、クロムウェル。お前の力の一部は俺のもの。それが俺に帰るだけだ。何も考えず、何も思わず、死にゆけ」


「わ、我が主! ご慈悲ヲ……ご慈悲を下さイ! あと数刻の時間を貰えれバ、小娘から眼を奪ってみせまス! どうカ、どうカ……!」


「ミスをした貴様に頼むくらいなら、自分で奪う。それに、器となった男の体から見ていたぞ。貴様もセツナとやらに同じことをしていたな」


「…………!」


「この世は因果応報で出来ている。それが貴様に回ってきた、それだけのこと。……死ね」


 アビスが指を弾き、鳴らす。


「イヤダァァァァァアアアアア──」


 異界の中にクロの断末魔が響き渡る。だがそれも一瞬で、次の瞬間には全身を漆黒の棘で穿たれていた。


「親愛なる眷属、クロムウェル。貴様は俺の中で生きる。永遠に」


 黒いオーラが棘から煙状に変わると、それが蜂の巣になったクロを持ち上げ……異様に広がった口で、頭蓋から食らいついた。


 こ、いつ……食ってやがるのか……!?


「……イカれてるわね、あいつ……!」


「クロのボスですからね。イカれてるとは思いましたが、まさかここまでとは……」


「ジオウ殿、どうする? やるか?」


 三人の視線が俺に集まる。


 どうするか、やるか、何て……答えは一つに決まってる。


「……あいつをほっぽって逃げても、レアナの眼を奪いに来るしな……それに下手したら、世界を滅ぼされかねない。……やるぞ、俺達で」


 何でまあ、世界の命運背負ってるの、俺達。それも【虚ろう者】っぽくていいんだろうけど。


 悪魔の弱点は分かってる。あとは頭数だな。


「悪魔の弱点は光属性だ。リエン、光属性を使えるアンデッドマジシャンは、どれくらい残ってる?」


「えっと……五三体程です」


 五三……強化されてるとは言え、あいつ相手に効くかは分からないが……仕方ない、もう一つの策を使おう。


「そいつらは死守してくれ。レアナは無闇に前に出ず、エタの側を離れるな。お前の眼が奪われた瞬間、俺達の戦力は大幅に減り、あいつはパワーアップするだろうからな」


「分かったわ」


「了解です」


 あともう一手。これに関しては、賭けと言ってもいい。だが、全くゼロという訳じゃない賭けだ。


「クゥ、出てこい」


『はい、でーす』


 俺の右腕から出て来たクゥ。それを見たシュユが、目を見開いた。


「な、何だ、このロリは……!?」


「掻い摘んで言うと、ギガントデーモンの右腕に宿ってる半魔半巨人だ。クゥ、俺のやりたいこと、理解してるな?」


 聞くと、クゥは無言で頷いた。流石、俺と繋がってるだけある。


 俺は三人に顔を向けると、作戦を口に出した。


「レアナとリエンは知っているが、俺がギガントデーモンの右手を自分の体に吸収する時、こいつの深層意識へと潜り込んだ。今回はそれを利用し……シュユと一緒にセツナの深層意識へ入り込み、眠ってる馬鹿を叩き起す」

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