パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第10話 疼く右腕

 ──ジオウside──


 アンサラーを逆手に構え、体勢を低くし、地面を駆ける。


 レイガは昔から、小さい敵や体勢の低い奴と戦うのが苦手だった。今はどうかは知らないが……やるしかない!


「死ねェ! 死ねァァァァアアアアア!!!!」


「ぐっ!?」


《爆裂》の広範囲魔法……!? しかも全部黒炎の……!


「《暴食》!」


『あむあむあむあむあむあむあむあむ』


  右腕が黒炎を貪り食う。そのおかげで、黒炎に触れることなくレイガへと近づく。


「ひょぉぉおおおおァァァア!」


 なんつー奇声を上げんだこいつ!


 黒炎の剣をアンサラーの鎬で逸らし、勢いをそのままにレイガの首にアンサラーを滑り込ませる。が、レイガはアクロバティックな動きで避け、距離を取った。


 こいつのこんな動き、見たことないぞ!?


「《黒炎翼》!」


 ……は? 黒炎の、翼……!?


 目を疑ったが、レイガはその翼を大きく羽ばたかせ、飛んだ。


 人間には、自由に空を飛ぶ魔法は存在しない。唯一、風魔法で体を浮かばせる程度だ。


 構造上、翼は存在しない。だから翼で空を飛ぶというイメージが湧かず、飛ぶどころか浮かぶことも出来ない。


 それなのに翼を使って飛べるって……どういうことだ……!?


「ほウ……ほうほうほウ! いいですネェ、遂に飛べるまで変化してきましたカ!」


「テメッ! 何か知ってやがるな!?」


「ええ、勿論。ですがまだ秘密でス。……直ぐに分かるとは思いますが、ネ」


 クソッ、あのにやけ面、腹立つ!


 空を飛び、下界に向けて手をかざすレイガ。


「《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》《黒炎球》!」


「お、おおおおっ!?」


 この数の黒炎、まずい!


『お兄ちゃん、クゥに任せる、ですっ』


 えっ、何を……って、右腕が疼く!?


 筋痙攣のようにピクピクと動き──次の瞬間、右腕が巨大化した。


「は……はあああああああああ!?」


『《暴食》、です』


 リエンに使役されていた時と同じデカさの右腕。それが俺の意思とは関係なくガードのように構えると、降り注ぐ黒炎を全て飲み込んだ。


『けぷっ。ごち、です』


「……なんじゃそりゃ……」


 何でもありか、こいつは。


「ま、まあいい。クゥ、この腕は俺に扱い切れるか?」


『振り回すの無理、です。お兄ちゃんの体、ちっちゃすぎ、です。クゥが操作して、簡単な防御が精一杯、です』


 そりゃそうか。クゥが制御してくれなきゃ、ただでさえ重く感じる腕だ。俺の意思じゃ間違いなく使えないな。


 それを察してくれたのか、瞬く間に元の大きさに戻った。自由に巨大化させられるなら、かなり便利かもな。


「がああああああああああああああ!? 何で死なねぇ!? 何でだァ! ジオウてめぇ、さっさとくたばりゃあああああああああああああああああ!!!!」


 っ、さっきとは比べ物にならない程の黒炎の球……!? あれを落とされたらヤバい!


『お兄ちゃん、《暴食》、です』


「あれ食いきれるのか!?」


『違う、です。相殺、です』


 相殺……? ……そうか!


 右腕を突き出し、クゥの指示で《暴食》を発動させる。


 今まで食って、右腕の中に溜まっていた黒炎が全て吐き出される。その黒炎を操り、纏め、レイガの巨大な黒炎と同程度の黒炎を作り出した。


『……ちょっぴり足りない、です。クゥの悪魔の力も乗せる、です』


「サンキュー、クゥ! 行くぞ!」


 狙いをすまし、そして。


「《極大・黒炎球》ぅぅぅぅぅううううう!!」


「『《極大・黒炎球》!』」


 互いに、放つ。


 破壊の力を持つ黒炎同士が激しくぶつかり合い、拮抗する。


「ぎゃはははははははは!!! ジねェあ! 死ねぇぇぇぇぇぇええええ!!!!」


「ぐっ!?」


 す、少し、押されてる……!?


『! あいつから漂う気配、強くなってる、ですっ』


 っ、そういうことか……!


 あいつはクロと契約している。俺を殺せるチャンスを得た高揚感が、負の感情になって力を増したんだ……!


 どうするっ……このままじゃっ、押し負ける……!


 どうする……どうする、これ……!

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