パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第8話 殲滅の時間

 ──レアナside──


「リエン、行くわよ!」


「はい!」


 私、エタ、その他攻撃系アンデッド二〇〇体が前。リエン、セラ、その他補助系アンデッド一五〇体が後ろ。その陣形で、セツナに向けて駆けていく。


「《傀儡の行進パペット・パレード》」


 っ! 騎士崩れ……!? こいつら、セツナが操ってたのね……!


「クロ様と契約し、私の精神魔法で殺戮以外の全てを排除した、数百体の可愛い傀儡パペット達。手強いわよ?」


「ぐっ……!?」


 た、確かに、一撃一撃に迷いがないし、重い……!


「あら、なら私のアンデッド達の方が手強いですよ」


 っ、リエン……!


 リエンがアンデッド軍団を操作すると、補助魔法を掛けられた前衛のアンデッド達のスピードが数段階上がった。


「殺戮という意思がある以上、完璧に傀儡として操るのは、流石のあなたでも無理でしょう。対して私の可愛いアンデッド達には、そんな意思はない。全て、私の意のままに蹂躙するのみです」


「その殺戮の意思も、全て私の手の上なのよ、お嬢さん」


「なら試してみますか? あなたの殺戮と私の蹂躙、どちらが上か」


 二人して、不敵な笑みを浮かべてる。どうしよう、怖いよジオウ……!?


「レアナちゃん」


「は、はいっ」


「あいつの傀儡は私が押さえます。レアナちゃんはあいつを狙ってください」


「……はぁい……」


 い、今のリエンに口出ししない方がいいわね……。お互いに肉体を操作する系としての同族嫌悪なのかしら? 矜恃というか、プライドが燃え上がってるのを感じるわ……。


 ……何にしても、傀儡をアンデッドが足止めしてくれてる今がチャンス!


「《火炎総出バーンロケット》!」


 レーヴァテインを構え、セツナに向かい跳ぶ。


傀儡パペット達、潰しなさい」


「アンデッド軍、切り開きなさい」


 セツナの傀儡が私に標的を絞るが、リエンのアンデッドがそれを阻み、私の通る道を作る。おかげで、セツナの懐がガラ空きよ……!


「へぇ……思いの外やるのね」


 こいつ、まだ私達のことを下に見てるわね……。


「その余裕、いつまで持つかしら? レーヴァテイン!」


 レーヴァテインに魔力を込めると、蒼炎の火力が膨れ上がり、龍のアギトへと姿を変える。


「《蒼炎龍剣・咬バーン・バイツ》!」


「立体魔法陣、《多重・六花の氷盾ダイヤモンド・ガード》」


 刃が届く直前で、立体魔法陣により十枚の《六花の氷盾ダイヤモンド・ガード》を作り出す。


「はあああああああああああ!!」


 蒼炎の熱量とパワーで、《六花の氷盾ダイヤモンド・ガード》を一枚、二枚と破壊し、六枚目を破壊したところで止められた。


 でもね、そう簡単に止められると思わないでよ!


「リエン!」


「はい!」


 アンデッドマジシャンによる身体強化付与と、魔法強化付与。それにより、《火炎総出バーンロケット》の炎の量が跳ね上がった。


「ハアァッ!!!!」


「ぐっ……!」


 よしっ、すんでのところで回避されたけど、全部穿けたわ!


「ナイスよ、リエン!」


「あの時は場所が悪くて、アンデッドを召喚することが出来ませんでしたからね。どうです? これでもまだ、自分の方が上位互換だなんて言えますか?」


 あ、それやっぱり気にしてたのね。


 だけどセツナは飛翔しながらも、余裕の笑みは崩さない。


「ええ、思っているわ。《傀儡改造パペット・クリエイト》」


 ……え……なに、これ!?


 セツナが私の知らない魔法を使う。その瞬間、傀儡として操られていた騎士崩れや冒険者達の体が、一斉に変化した。


 関節が歪み、筋肉が膨れ上がり、着ていた服や装備は弾け飛び……瞬く間に、異形の生物へと変貌した。


 紫色に染まったゴリゴリの肉体。赤い目は四つ、腕も四つ。頭はドラゴンのような形に変わり、全ての歯がナイフのように鋭く尖っている。


 あの時セツナが言っていた、傀儡を作るって言うのはこういうことだったのね……!


「どう? あなたにこんなこと出来ないでしょ?」


「…………」


 リエンをチラッと見ると、俯いて前髪が垂れ下がり、目元が見えなくなっている。


「ふふふ、声も出ないって感じね。これで分かったでしょ? あなたと私では、格が違うのよ」


 ……はぁ……、


「バカね、ほんと……」


 こいつとリエン、どっちが上だの下だの、そんなのもう結論は見えてるじゃない。


「ねぇ、あんた。ちょっと死ぬかもしれない覚悟、決めた方がいいわよ」


「……何を言ってるのかしら」


「あんたはリエンの逆鱗に触れた、とだけ言っておこうかしら」


 背後にいるリエンを見る。


 そこには、般若と言われても信じられるほど、怒りの感情で表情筋が歪みまくったリエンがいた。こわっ。


「……あなたは、何も分かっていませんね。自分の操作するアンデッドも、傀儡も、その肉体に愛情を注ぎ、メンテナンスを怠らず、一体一体に全力で向き合って肉体を知り尽くすことで、一〇〇パーセント……いえ、一二〇パーセントの力を引き出すことが出来ます。それを簡単に醜い肉体改造を施し、ただ単に傀儡のスペックを上げただけで、私の上位互換を名乗るなんて……片腹痛いを通り越して、怒りすら感じますね。例えるなら、数万時間という労力と努力のもと生まれた料理に、『こっちの方が美味いから』と言われてマヨネーズをぶっかけられる……そんな虚無にも似た怒り……」


 ああ……何となくその例えは理解出来るかも。


 リエンは自分の胸元にあるホープジュエリーに手を掛けると、ギュッと握り締める。


「ホープジュエリー、魔力解放。全アンデッドへ──同調リンク開始」


 リエンから、紫色の魔力が噴き出す。それが無数の糸となって、アンデッド達に繋がった。


同調リンク終了。さあ、みんな──殲滅の時間ですよ」

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