パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第29話 対決②

 迫る剣の腹を掌底でずらす。


 だがそれで体勢を崩すことはなく、左脚を軸に俺の脚を蹴り払って来た。


 軽くジャンプしてそれも躱し、体を回転させて回し蹴りを放つ。


「ぬんっ……!」


「ぐっ!?」


 くそっ、足首を掴まれた……!


「オラァッ!」


 空いている方の脚で掴んでいる手を蹴り上げ、無理矢理引き離した。


 チッ、どんな強さで掴んでやがるんだ。強化してる皮が若干剥けたぞ。


「む?」


 まさか逃げられるとは思わなかったのか、手の感触を確かめるように握って開く。


 瞬時にオートヒールが発動。滲んでいた血が跡形もなく無くなった。ホント、便利な魔法を付与してくれてありがとよ、リエン……!


 今度はこっちからだ……!


「ふっ!」


 《空中歩法エア・ウォーク》を応用し、初速から全力で!


「っ!」


 全力全速の拳。


 それを避けられた・・・・・


「……避けたな?」


「……うむ。どうやら、そのようだ」


 今まで俺の攻撃を全て防ぎ、掴み、動かず対応してきたエンパイオが、初めて避けた。


 それはつまり、俺の攻撃を受けてはならない・・・・・・・・と判断したのだ。


「今の速さ、攻撃……なるほど、なるほど」


「本気を出す気になったか?」


「少し、なっ」


 ゴォッ──!


 剣を振るい、放出されている魔力が倍増する。この圧力、強さ……あの時と同じか……!


「エンパイオ……あの時、本気じゃ無かったのか?」


「否。間違いなく本気だった。だが……進化するのが、貴殿一人と思うなよ」


 元から極まっていた強さが、更に強くなったと……。ふざけんな、なんだそのチート。ずるだずる。ずる過ぎんだろ。


 以前も感じた魔力の奔流。溶鉱炉のようなエネルギーの塊に、背筋が冷たくなるのが分かる。


 だけど……前のように、死を覚悟する程の恐れは感じていない。むしろ、この程度なら何とかなるという謎の自信もある。不思議な万能感だ。


「地帝のエンパイオ。その名に恥じぬ魔法の真髄……見せてやろう」


 力強く足元の地面を蹴る。


「ぐぁっ!?」


 な、んだ……地面に叩き付けられ……!? まさか、重力魔法か!?


「こんのぉ!」


 何とかその場から離脱……!


 が……。


「な、何だこのでっけー柱!?」


 てか、ここ空中!? いつの間に……!


 ……まさかさっきの一瞬で、魔法で岩の柱を作り出したのか! それも、地面に叩き付けられたと錯覚させる威力で!


 高さはおよそ二十メートル。文字通り、地面を俺に叩き付けた訳だ。


「逃れたか。しかし!」


「がっ!?」


 は、柱から横に柱が伸びて……!


 ローブのお陰でダメージは無いけど、発動スピードが早すぎる……!


「ほれ」


 っ! 背後から魔法の気配……!?


 何とか振り向くと、進行方向にいつの間にか二本目の岩の柱が建てられていた。このままじゃぶつかる!


 くそっ! やるしかねぇ!


「来い、アンサラー!」


 魔剣アンサラーを高らかに叫ぶと、俺の懐が僅かに光り輝き──何も持っていない右手に、どこからともなくアンサラーが現れた。


 そして、柱の勢いを利用して……!


「《瞬剣・暴嵐ブラスト》!」


 二つ目の柱を真っ二つに斬り裂いた。


 続いて《空中歩法エア・ウォーク》で横の柱から脱出すると、真下に向かって跳躍し、地面に降り立つ。


「ほう、よく逃れられたな。木っ端程度なら、あれで潰せるのだが……やはり貴殿は面白い」


「そりゃどうも」


 レアナにアンサラーの能力を調べてもらって良かった。でないと、ローブがあるとは言え今の威力で押し潰されたら、ダメージはあっただろうからな。


 魔剣アンサラーの能力その一。


 所有者が念じながらアンサラーの名前を呼ぶと、勝手に鞘から抜けて所有者の手に収まる。本来は何も持っていないと思わせてから奇襲に使う力だが、今はそうも言ってられないしな。


「……良いナイフ、いやダガーだな。魔力で硬化した俺の岩を切り裂くとは」


「あの程度の硬さ、こいつの前じゃ無意味だぞ」


「ふはは。確かにな。なら、数で勝負と行こう」


 来る……!


 魔法発動の気配を察知し、《空中歩法エア・ウォーク》で気配の無い方向へ飛び退く。


 その瞬間、俺を串刺しにするように、四方八方から岩の槍が突き出した。


 込められてる魔力の量も、硬度も桁違いだな……!


「足を止めてて良いのか? 死ぬぞ?」


「おお!?」


 また岩の槍……!


 更に避け、躱し、飛び退く。魔法の発動が早すぎて、避けるのに精一杯だ。


「魔法だけに目を向けるな。俺もいるのを忘れるなよ」


「っ!」


 いつの間に目の前に……! ダメだ、回避が間に合わない……!


 手、足、頭をローブの中に入れ、次の衝撃に耐える。


「むぅんっ!」


 頑張れっ、頑張れローブさん……!


 が……いつまで経っても、思っていた衝撃は来なかった。何だ、どうした……?


「ぐ、ぬ……何という硬さ……! そのローブ、本当に布か……?」


「え?」


 ……ああ、なるほど。物理障壁系の魔法と、物理反射の魔法のお陰でエンパイオの剣戟を防いでくれたのか……。


 リエン、ホントにありがとう。生きて帰れたら労ってやるからな……!

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