パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第11話 力こそパワー(♀)

 ──レアナside──


「んー……広いわね」


 私とリエン、それとリエンの使役している二百七十体のアンデッドが、深夜の広大な砂漠を見つめている。


 気温は-10度。アンデッドマジシャンの張ってくれている結界がなかったら、今頃布ダルマになるくらいの寒さだ。


 私達の目的は、ダイヤモンドタートルの背中に実ると言われている金剛桃だ。皮がダイヤモンドで出来ていて、中には熟成された実と果汁がたっぷり詰まっているんだとか。


「こんな広くて見つけられるのかしら? ダイヤモンドタートルって、超超超希少種でしょ?」


「はい。シュユさんが、スーパーハニービーよりこっちに多くの人員を割いたのは、恐らく見つけるのが困難だからだと思います」


「しかもいるのは砂の中……困難どころじゃないわね」


 はぁ……まさか、この歳になって砂遊びするとは思わなかったわ。


「さっさと探しましょう。作戦通り、リエンはここでアンデッドの操作。護衛はセラ。私とアンデッドはダイヤモンドタートルの捜索。私の護衛はエタ。これで良いわね?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ、行くわよ」


 合図と共に、砂漠に向かってアンデッドが散り散りになった。


 至る所で魔法を使って砂が掘り起こされる。パワーに自信のあるアンデッドは、砂埃を撒き散らして吹き飛ばしている。


 私は高速で移動しつつ、《鑑定眼》の力の一つ、《千里眼》を使って砂の中を見ていく。


 だけど見つかるのは、普通のロックタートルや全く関係ない魔物。それに無数の人間の白骨だけ。リエンに言ったら大興奮の光景だろう。絶対言わないけど。


「……中々いないわね……」


「それに、見つけたとしても金剛桃が実ってないといけませんし、かなり難易度は高いですよ」


「それもそうね」


 アンデッド達とは少し離れ、周囲には私とエタしかいなくなった。


 私はこの辺にしようかしら。


 拳を上げ、


「よっ!」


 振り下ろす。


 ゴォッ──!!!!!


 拳が砂に触れる前に・・・・・・・・・、衝撃と共に砂埃が立ち上った。


「我ながら、やっぱり凄まじい威力ね」


 まだ半分くらいしか力を込めてないのに……これも、ジオウの《縁下》のスキルレベルが上がったおかげよね。


 砂埃が消えると、直径五メートル、深さ十メートル程の大穴が空いていた。


 だけど……残念、ここにはいなさそうね。


「うーん。ロックタートルは簡単に見つかるんですけどねぇ……ダイヤモンドタートルはまだ見つからないです」


 エタリエンが現状を報告してくれた。


「超超超希少種何だし、そんな簡単に見つけられるものじゃないでしょ」


 むしろそんな簡単に見つける奴がいたら、それはもう強運とか悪運とか、そんなレベルの運じゃないと思う。


「ダイヤモンドタートルって、砂の中に潜ってるのよね?」


「はい。深さまでは分からないですが、外に出てくる事はなく、砂の中を這いずって生きているそうです」


「なら、私は深さの方で探ってみようかしら」


「……あの、何を?」


 何をって、言葉の通りよ。


 穴に飛び降りて、《千里眼》で周囲を見る。


 この辺りにはいなさそうね。それなら!


「ほっ!」


 ドッッッッッパァッッッ!!!!!


 さっきより力を込めてぶん殴る。今度は深さ三〇メートルまで掘れたかしら。


「……力こそパワーを地で行く人ですね……」


「馬鹿にしてる?」


「褒めてます褒めてます」


 じゃあ目を合わせなさいよ、ガッツリ目を逸らしてるじゃないのコラ。


 合計四〇メートルの砂の下。でも周りから砂が落ちてきてるから、長居は出来ないわね。


「うーん……やっぱりいないわね。もっと深くかしら?」


「あの、これ以上深くなったら地上に出るのも難しいのでは?」


「そこはエタの魔法を頼りにしてるわよ」


「あ、やっぱりちゃんと考えてたんですね。脳までパワーに侵されてるんじゃないかと心配だったんです」


「あんたやっぱ馬鹿にしてるでしょ」


 ──────────


 それから一時間。掘っては移動し、掘っては移動しを続けたが、未だにダイヤモンドタートルは見つからず……。


「あぅ……髪の毛に砂が絡まるわ……」


「ゴワゴワしますねぇ……」


 シャワー浴びたい。お風呂入りたい。ゴロゴロしたい……ジオウ、何してるのかなぁ……。


 っ、ダメダメっ。弱気になるんじゃないわ、レアナ。ジオウに頼まれたんだもの。最後までやりきるわよっ!


 ……でも、見つからなすぎじゃない? こっちは二百七十二人で探し回ってるのよ? しかも大分荒っぽい手段で。


 《千里眼》も範囲は限られるし、しかも遠くになればなるほど精度は落ちる。それでも半径五〇メートルの範囲にも引っかからないって、どう考えても普通じゃない。


「シュユの間違いじゃなければ、別に冬眠中とかそんな事ないわよね?」


「そんなことはないと思いますけど……今、館のアンデッドメイドを通じてダイヤモンドタートルについて調べてますので、もう少しお待ちください」


 シュユ曰く、ダイヤモンドタートルは今の時期一番活発に動くらしい。だから簡単に見つかるって言ってたのに……。


「なんかイライラしてきたわ」


「ど、どうどう……あっ」


 この辺全部吹き飛ばそうと考えていると、エタリエンが声を上げた。


「分かりましたよ、ダイヤモンドタートルの詳細。深さ二〇メートル付近に生息していて、金剛で出来た体は光を屈折させ、姿を消すそうです。それに魔法やそれに準ずる力を反射するので、探知や索敵は効果無いとのこと」


「え、それじゃあ……」


「《千里眼》、無意味ですね」


 …………(イラッ)。






 二時間後。砂漠を全てひっくり返す勢いで力の限りを振るい、無事に(?)ダイヤモンドタートルを発見。金剛桃を手に入れることが出来た。


 数日後、ギルドの方から『砂漠の地形が変わったことの原因究明と調査』を依頼されたのは、また別の話だ。

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