パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第1話 エルフは高級種族

 アルケミストの大洋館を攻略し、早一週間が経った。


 ダンジョンから普通の家屋に戻った大洋館は、おどろおどろしい雰囲気は何処へやら。今ではリエンのアンデッド軍のおかげで、汚れた外壁や館の中はキレイさっぱり掃除されていた。


 かく言う俺とレアナは協力して、今は大洋館の周りを囲うように結界を貼っている。


 貼っている魔法は、光中級魔法の《光学迷彩カモフラージュ》だが、単純に貼るだけでは効果は絶対じゃない。光属性が付与されている杭を複数箇所に打ち付けることで、効果を上げることが出来る。


 数は全部で三〇箇所。そのために、レアナのパワーで杭を打ち付けてもらってる所だ。


「ふぅ……それにしても、でっかい杭ね。私より大きいじゃない」


「魔法の効果を上げる杭は、でかければでかい程、数が多ければ多い程良いとされてるんだ。流石にここまで用意するのは大変だったけど、外からの侵入を防ぐためなら、これくらいやらないとな」


「ふーん。はい、これでおーわりっと」


 片手で軽々と持ち上げ、それを一発で地面に突き刺した。


 ユニークスキル《縁下》のレベルが上がったからか、レアナのパワーは前とは比べ物にならないほど上がっている。本人は、既にパワーアップしたことを気にもしていないが、傍から見るとどうしても一瞬たじろぐな……。


「よ、よし。じゃあ……《光学迷彩カモフラージュ》」


 杭の一つに魔法を掛けると、刻まれているルーン文字が白く光った。それと連動して、他の杭の文字も白く光り出す。


 大洋館をぐるっと囲うように刺さっている杭同士が魔力の線で繋がり、半球状の《光学迷彩カモフラージュ》を作り出した。


「これで、外からは見えないだろ。物理遮断障壁と魔法遮断障壁は、リエンに任せよう」


「もし、守護森林を抜けて来た奴がいて、ここまで辿り着いたらどうするの?」


「それもしっかり対策済みだ」


 リエンに頼んで、地中深くに方向を迷わせるルーン文字を掘ってもらっている。俺達以外がこの草原に来た場合、絶対にここに辿り着かないように。


「お疲れさん、レアナ。お茶にしようか」


「私チョコレットが食べたいわ」


「はいはい」


 レアナを伴って、館に戻る。


 館の中を簡単に紹介すると、玄関ホールの一階には部屋が六つ。二階には四つの、合計十個の部屋がある。


 その中の一つは、レーゼン王国のレアナの部屋に。もう一つは、ボナト村に買い取った家に、エタの時空間魔法で繋げている。他にもまだまだ繋げる予定だが、今はまだ手付かずだ。


 最奥の部屋以外に道中におよそ五〇の部屋があるが、それも綺麗に清掃しただけで使い道はこれから考えるところだ。


 最奥の部屋をギルドマスターである俺の執務室とし、その近くをリエンの事務室にした。レアナは基本的に稼ぎ頭として、外で依頼をこなしているから自室はいらないとの事。


 と言っても、依頼以外は殆ど俺かリエンの所にいて、資料整理を手伝ってくれている。実際書類仕事なんてやった事ないから、意外と細やかなことに気づくレアナには助かっている。


 まあ、まだ依頼も無いし、書類と言ってもレアナの外部での仕事の確認だけど。


 アルケミストの大洋館攻略の報酬は、金貨五〇〇〇枚。それとこの大洋館の占有権だ。


 プラスして、グレゴリオ市にこの館にあった錬金術の資料を金貨八〇〇〇枚で売りつけた。これでも安いと泣いて喜ばれたが、そんなに凄いものだったのか……。


 レアナもちょくちょく依頼や個人依頼をこなし、今このギルドにある金は、金貨が約一五〇〇〇枚。まだ他のギルドに比べても、全然少額だ。


 そろそろ次の手を打つか……。


 リエンとレアナを執務室に呼び、ソファーに腰をかけて作戦会議を行う。


「レアナのおかげで、貴族やミヤビ大商会からの依頼が絶えない。金払いも良いし、一度俺も会ったが好感の持てる相手だった。だけどそれだけに頼ってもいられない。よって、他にも金づる……もとい、資金源を確保しようと思う」


「それは良いけど、私達の存在は極秘よ? 下手に宣伝は出来ないわ」


 レアナの言う通りだ。【虚ろう者】の戦力が国内外に知れ渡れば、絶対それを狙ってやってくる奴らが出てくる。


 だけど俺達も万能じゃないし、下手をすればボロ雑巾のように使われる可能性もある。


「リエン。この中じゃお前が一番世の中のことについて知ってるだろ? 何かいい案はないか?」


「そうですねぇ……今この世界に、ギルドの無い都市は無いです。だから、そこ以外の都市を狙い目にすればいいと思います」


 ……ギルドの無い都市は無いのに、それ以外の都市って、どういう事だ?


 俺とレアナが首を傾げていると、エタを操作して一冊の本を持ってきた。


「私の記憶が正しければ、確か亜人族の里や集落には、ギルドは無かったはずです。中でも閉鎖的で有名なエルフ族。外には頼らず、もし集落が壊滅しても、それは運命だから逆らわない。仕方ないと割り切っている、後ろ向き全力疾走な種族です」


 毒舌が凄いな……。


 パラパラと本を開くと、エルフ族に付いて詳しく書かれているページを開いた。


 だが……詳しくと言っても、どこに住んでるとかは書かれてないな。


「集落の場所とかは分からないのか?」


「ええ……彼らの集落は、痕跡も何も残さず、目にも見えない……言うなれば、【虚ろう者】の上位互換的な組織なので、場所の特定が出来ないんです」


 なるほど……それで、閉鎖的で外部との関わりが無いのか。


 だが、エルフ族のその後ろ向き全力疾走の性格には、入り込む余地はありそうだ。見付けるのは至難だが、もしそこにギルドの出入り口を繋げられたら、エルフ族からの依頼も独占出来るだろう。


 頭の中で画策していると、リエンが困ったようにため息をついた。


「ジオウさん。もう一度言いますが、エルフ族はそこにいたという痕跡を残さないんです。もし死体が、いえ、耳の一つでもあれば、金貨数十万枚で買い取る貴族もいるくらいです。酷い場合は、家の全てを投げ打ってでも欲しがる人もいます。……この意味、分かりますか?」


「え? ……珍しい?」


「頭に超が十個くらい付く、伝説級に珍しい種族って事です」


 そんなにか!?


 愕然としていると、レアナが「あれ?」っと声を上げた。


「でもリエン、エルフのアンデッド従えてなかった?」


「はい、いますよ。まあ手に入れるために、冒険者時代のお金は全部投げ打ちましたが……」


 失った金額を思い出したのか、遠い目をしている。


 そう。俺は、エルフに対してそこまで珍しさを覚えていなかった。理由としては、昔からリエンのアンデッド軍にいたから。


 ……それにしても、だからリエンはあんなボロ小屋に住んでたのか……昔から知ってる仲とは言え、死体一つにどんだけ本気なんだ、こいつ……。


「……なら、それを売ってた業者に聞けば、どこで手に入れたか分かるんじゃないか?」


「当時私も、どこで手に入れたか聞きました。ですが、その業者も偶然流れてきたものを持っていただけで、詳しい出処は分からないそうです」


 エルフのアンデッドはいるのに、それより先の情報はない、か……。


「……とりあえず、エルフをここに呼んでくれ。他にもヒントがあるかもしれない」


「分かりました」

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