パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第23話 反撃

 展開された魔法遮断障壁の中で、圧の魔法が切れるのを待つ。


 突入した時に受け、間を置いて今も同じ魔法を使っている。多分、この魔法は連続使用も出来ないし、連発も出来ないんだろう。これ程の大魔法だ。魔力を練る時間が、ラグを作ってるんだろうな。


 それに、魔法を使っている間に攻撃を仕掛けてくるようには見えない。なら、俺も魔力を溜めさせてもらう……!


 魔力をコンバットナイフに集中させる。プラスして、身体の内側に流れる魔力を練り高めた。


 ミシミシと結界が軋む音が不安を募らせるが……今は、この結界の強度を信じるしかない。


「リエン、もうちょっと粘って! 多分あと五秒くらいだから!」


「へ!? …………あっ、魔法切れました!」


「よしっ、分かったわ、あの魔法の正体!」


 鑑定が終わったか……!


「戦いながらでいい! 教えてくれ!」


 俺は即座に魔法遮断障壁の外に出て、人面百足に向かって走る。


「あいつの魔法は重力属性よ! 強大な魔法だから、持続時間は三〇秒! クールダウンは五分! 基本的に圧力をかける魔法だけど、他にどんな魔法があるか分からないから注意して!」


「重力属性……!?」


 そんな属性聞いたことないぞ……! どうやって凌げば……!


「お二人共、安心してください!」


 っ、リエン……?


「私のアンデッド軍で援護します! 直ぐにコアを見つけるので、お二人は少しでもこやつの足止めを!」


「そうか、頼むぞ!」


 アンデッド軍が飛びかかる。それに乗じて、俺とレアナも胴体へ飛び乗った。


「こんな化け物を足止めって、無茶言ってくれるわ……」


「そう言うな。俺達なら出来るって、信頼してくれたんだろ」


「はいはい。なら、期待に答えなきゃね!」


 レアナが剣に炎を纏わせ、思い切り跳躍した。


「化け物、これでもくらいなさい!」


 更に体に身体強化魔法をかけ、足裏から炎を噴き出すことで推進力を生み出し、体の節目に向かって剣を突き刺した。


 よしっ、効いてる……っ!?


『がああああああああああ!? 痛い痛イいだいいだああああああああああああ!?』


「ぐっ……! こんだけやっても、ほんのちょっとしか……えっ、抜けない!?」


「レアナ、あぶねぇ!」


 レアナの体を抱き上げ、暴れ狂う人面百足から離脱する。そのせいで、レアナの剣を置いてきてしまった。


「あ、ありがとう、助かったわ……」


「礼はいい。それより、レアナのおかげで効きづらいが物理攻撃が通じることが分かった」


 アダマント鉱石は物理攻撃を無効化してる訳じゃない。ただ異常に硬いってのが分かっただけでも、儲けもんだ。


「俺も負けてられねーな!」


 風魔法をナイフに纏わせることで斬れ味をさらに上げて走る。猶予はない、一気にトップスピードへもっていく……!


「ここだ……!」


 暴れ回る胴体が僅かに止まった隙を見逃さず、節目にナイフを突き立てた。


 よしっ、これだけのスピードと斬れ味なら、ナイフも通るぞ!


『キャアアアアアアアーーーーー!? 痛いよぉ! 痛いよ旦那さまああああぁぁあぁあああぁぁぁぁぁああああ!? たすけっ、助けでええぇぇぇああああああああ!!!』


 しまっ、振り落とされ……!?


 不規則な鞭のような動き……! 避けきれない……!?


「エタちゃん!」


 目の前に胴体が迫った瞬間、目の前の景色が変わり、いつの間にかエタの胸の中に抱きかかえられていた。


「ふぅ……間に合いました……」


「……え、あっ、時空間魔法かっ。わりぃ、助かった」


「気にしないでください。私、潰れたカエルのようにぺしゃんこの死体は、好みじゃないので」


 はは……さいですか。


 苦笑いを浮かべると、レアナも時空間魔法で瞬間移動してきた。


「ジオウ、大丈夫!?」


「ああ、何とかな。それで、リエン。レアナも瞬間移動させたってことは、何か分かったか?」


「はい。あ、いえ、正確には憶測ですが……」


 申し訳なさそうにするリエン。


「憶測でもいい。頼む」


「……アンデッド軍の視界を共有して確認しましたが、胴体にコアは見つかりませんでした」


 っ! そんな……あれはゴーレムじゃないのか……!?


 俺とレアナが愕然としていると、リエンが「ですが、」と続ける。


「あの化け物はゴーレムです。なので、どこかにコアがあるはず……そしてまだ確認していないのは、一箇所だけ」


 リエンが指差した先を見る。


 そこには、無表情の女性の仮面が、まとわりつくアンデッド軍へレーザーを放っていた。


「……なるほど、仮面の下にあるかもしれないのね?」


「恐らく……ゴーレムは作るとき、コアは外に出していないといけないという、絶対の決まりがありますから。でもあの化け物は、グレゴリオ・アルケミストの作ったゴーレム。常識は通用しないかも……」


 ……そういう事か。


「なら、あれをひっぺがして確認するしかないな。あそこからレーザーが出るのは分かってるし、俺とレアナで何とかするしかない。リエンのアンデッド軍は陽動。いいな?」


「OK」


「ご武運を」


 目的があるなら、これで闇雲に戦わなくてすむ。


 さあ、反撃だ!

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