パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第15話 守りたい仲間

「地帝エンパイオと戦ったですって!?」


 夜、休憩地点で、今まで爆睡していたレアナに、昼間のことを話した。


「ああ。とんでもなく強かったぞ」


「何あっけらかんと言ってるの!? 生きて帰ってこれただけでも奇跡じゃない!」


 あー……実際あのままやってたら、間違いなく殺されてたな。あのクロって奴が来なかったら、リエンの使役しているエタがいても、無理だっただろう。


「ホントも〜……無事で良かったわ……」


 安堵からか、俺の手をギュッと握り締めてくる。なんだこいつ、愛おしい奴め。


「……で、でもっ、無謀にも七帝に挑んだのは頂けないわっ! もっと考えて行動しなさいよ!」


「分かってる、分かってる。もう同じような失敗はしないさ」


「……ホントに分かってるんでしょうね? あいつらの強さは異常よ。この世界のバグよバグ。関わるとホントろくな事ないわ」


 ……何か、含みのある言い方だな。どうしたんだ一体?


 だけどリエンは、何かに気付いたようにレアナに聞いた。


「レアナちゃん。帝の誰かと知り合いなの?」


「……私のSランク昇級試験が終わったあと……剣帝が私のところを訪ねてきたのよ」


 なっ、剣帝……!?


 俺とリエンが息を飲む。二〇年前の元七帝ではなく、今代現役の七帝が、レアナに接触したのだ。驚くなという方が無理だ。


「私の戦い方は我流の剣術。魔法は補助に使ってるけど、基本的に剣だけで相手を倒してきたわ。その噂を、剣帝が耳にしたみたいでね」


「……それで、レアナちゃんの所に来たのですね」


「うん。私の戦いっぷりを見たいって言ってね。一回だけ刃を交えたわ」


 当時のことを思い出したのか、身を守るように自分自身の体を抱き締める。


「……私は真剣。剣帝は木剣。もし剣帝が真剣を手にしてたら、私は呼吸する暇も与えられず、ミンチよ」


「ミンチ……」


「地帝も本気じゃないと思うわ。恐らく本気だったら、今頃あんた、外核まで引きずり込まれてるわ」


「外核……」


 外核、地面のずっと下、数千度の熔鉱炉のようなところだよな。確かに、地帝なのにあの時は剣術しか使ってなかった。最後は魔力も全開だったけど、剣術であのレベルなら、地属性魔法の威力は想像を絶する。


 次エンパイオと戦ったら、レアナの言う通り外核に引きずり込まれそうだな……。


 肌が粟立つのを感じる。あんな奴から、どうやってレアナを守れば……。


 絶望。これをそう言わずしてなんと言う。


「……ごめんなさい……」


 っ……レアナ……?


「私がジオウと出会った時、騎士崩れが私を狙った攻撃を仕掛けてきたって言ってたでしょ? 今回のことも、騎士崩れと同じで私を狙ったもの……どっちもジオウに助けられたけど……私のせいで、ジオウを危険に晒した。ごめんなさいっ」


「レアナ……」


 頭を下げるレアナの肩が震えている……。


 それもそうか……どこの誰とも分からない組織に命を狙われてるんだ。怖くないはずがない。


 レアナの実力的には、今の俺を遥かに凌ぐ。だがそれでも、今のレアナは余りにも、年相応に弱々しく見える。


 そんなレアナの肩に手を置き、安心させるように何度も、優しく撫でる。


「安心しろレアナ。お前は大切な仲間だ。仲間を助けるのは当然のことだろ? それにこれくらいの命の危機、俺にとっては危機でも何でもない。【白虎】時代はもっとやばい事に足を突っ込んでたからな。今回も、絶対何とかしてやる」


 前半は本気だが、正直後半は強がりだ。【白虎】にいた時でも、こんな非常事態は少なかった。勿論なかった訳じゃない。その度にそれを乗り越えてきたから、今の俺がある。だから今回も大丈夫だ。


 顔を上げたレアナの目尻から、一筋の涙が流れる。


「……ありがと、ジオウ……」


 ……女の子にこんな顔をされて奮い立たないなんて、男じゃねーよな。やれるか分からんが、やってやるさ。


「あのー、もしもーし。私もいるんですけどー? 仲間外れですか? 組織内いじめはんたーい」


 リエンから不服の声が上がる。だが本気ではなく、ちょっと冗談気味の声に俺もレアナも少し心が楽になった。


「勿論だ。リエンの力も余すことなく頼りにしてるからな」


「リエンも、ありがとう」


「ええ、任せて下さい。レアナちゃんのぴちぴちのお肌は、私が全力で守り抜きますぐへへへへへ」


 うん、ヨダレまみれじゃなかったら、素直に仲間思いの発言って解釈したんだが……こいつが言うとどうもサイコパス感が拭えないんだよなぁ……。


「……ジオウ、私を守ってね」


「任せろ」


「あれ? それ敵からって事ですよね? 私からじゃないですよね? ね、聞いてます? もしもーし」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品