パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第10話 目指すはSランクダンジョン

 全員落ち着かせて、俺のベッドにリエン、椅子にレアナを座らせる。


 リエンはレアナを恍惚の表情で見ているが、レアナは明らかにリエンを警戒している。まあ、第一印象が絶望的に悪いから仕方ないか。


「えー、まずレアナに紹介しよう。こいつはリエン。俺の旧友で、仲間に引き入れた。仲良くしてやってくれ」


「リエン・アカードです。リエンと呼び捨てにしてくださって構いません。職業はネクロマンサー。性癖は死体愛好ネクロフィリア。趣味は死体収集です。よろしくお願いしますね」


「…………よ、よろしく……」


 うんうん。分かるぞーそのドン引きする気持ち。俺、今でもドン引きするもん。


「因みに、さっきの体が欲しいってのは死体で、という意味だ。分かるか?」


「……あー、うん。この人がド変態だってことは分かったわ」


「今はそれだけで十分だ」


 俺は慣れたもんだが、リエンの性格と趣味は完全にアブノーマルだ。少しずつ理解していってくれれば問題ない。


「で、次にリエン。こいつはレアナ・ラーテンだ。俺の隠しスキルを解放させてくれた恩人だから、勝手に手を出すなよ」


 リエンに圧をかけると、肩を竦めてにこやかに笑った。本当に分かってるのか分からねーな……。


「レアナ・ラーテンよ。レアナって呼んでちょうだい。職業は魔法剣士って言ったところかしら。よろしく」


「はい、レアナちゃんですね。よろしくお願いします」


 よし、これでお互いに自己紹介を終えたって事で……。


「それじゃあ、近況報告だ。まずはレアナの方から頼む」


「……分かったわ。さっきも言ったけど、レーゼン王国に着いてから二週間ちょっとで、CランクからSランクに昇格したわ」


 レアナは、指に嵌めている白金プラチナで出来ている指輪と、ギルドカードを見せてきた。間違いなく『S』と大きく書かれている。


「驚いた……Sランクなんて、なろうと思ってなれるもんじゃないだろ?」


「ええ。ギルマスは勿論、南支部に所属しているSランク冒険者の承認を得て、初めて昇格試験が受けられる。それをクリアすれば、Sランクになれるわ」


 つまりレアナは、この二週間で他のSランク冒険者に認めさせるほど依頼を受けまくったってことか……。


「すまなかったな、レアナ。大変だったろ?」


「何も問題ないわ。むしろ、Aランクまでの依頼なら、全部三時間以内にこなせたもの。全然疲れてないし、むしろ楽な方だったわ」


「三時間? そんな近くにAランクの依頼があったのか?」


「いえ? 馬車だと一日以上掛かる場所よ。走ったら一時間で着いた時は、流石にびっくりしたけど」


 いや馬車で一日掛かる場所に一時間って、どんだけパワーアップしてんのこの子?


 目を凝らしてみると、確かに約三週間前より強くなっている。《縁下》のおかげもあると思うが、それでもこんな短時間でSランクなんてな……元の才能の違いか。


「Sランクの依頼も複数受けて来たわ。これ、少ししかないけど、ギルド運営の足しにしてちょうだい」


 と、鞄から大量の金貨の入った袋を取り出してきた。重さで言えば、約二〇キロくらいだろうか。


「いやいや、これはお前が稼いだんだから、取っておけよ」


「ふふん。私はあんたの下で、もっと稼がせてもらうから良いのよ。先行投資だと思いなさい」


「……何から何まで悪いな」


 そういうことなら、ありがたく使わせてもらおう。


「それと上客が付いたわ。私個人に、優先的に依頼を回してくれる貴族が二つと、ミヤビ大商会がね」


「本当か!? よくやったぞレアナ!」


 しかも相手が貴族と、有名なミヤビ大商会ってことは、相当金払いも良いはずだこりゃ幸先がいいな!


「そ、それ程でもないわよ。ジオウの《縁下》のおかげでもあるし、そんなに褒めないで」


 とか言いつつ、顔赤くして髪の毛モフモフしてるぞ。可愛い奴め。


 それを見てか、リエンも恍惚とした表情でレアナを見つめる。気持ちは分かるが、その脳内で垂れ流しにしてるグロ注意の妄想を止めろ。


「わ、私の方は以上っ。そっちはどう?」


 っと、そうだな。


 リエンの使役している死体に時空間魔法を使える死体がいることを話し、それを使って人のいない場所に拠点を作ることを話した。


 レアナは感心したように頷くと、「それなら……」と地図を取り出した。


「私の依頼で、Sランクダンジョン踏破の依頼があったの。まだ受けてはないけど、もし討伐出来れば、そのダンジョンは好きにしていいとのことよ。壊すもよし、住むもよしってね」


「住む? ダンジョンに?」


 本来、ダンジョンは攻略すれば自然消滅するはずだ。そこに住めるってことは……。


「自然発生型のダンジョンではなく、居住空間がそのままダンジョンになる稀なケース、ですね。この辺で確か近いのは──」


「「アルケミストの大洋館」」


 リエンとレアナが、同時に一つの場所を指さす。


 レアナは恥ずかしそうにぷいっとそっぽを向くが、リエンは愛でるようにレアナを見つめた。


「アルケミストの大洋館か……昔、大錬金術師のグレゴリオ・アルケミストが住んでた洋館だったな。今はダンジョン化し、誰も中に踏み入れなくなったと聞くが……Sランクダンジョンになってたのか」


「え、ええ。錬金術の研究のためか、建物も異様に大きいわ。それに半径五キロに渡って討伐ランクAの魔物がうろついている。人から隠れるにはうってつけでしょ?」


「そうだな……俺はそこでいいと思う」


「私も構いません」


 俺とリエンが賛成すると、レアナが椅子から立ち上がって腰に手を当てた。


「なら決まりね! パパッと片付けてくるわ!」


「待て待て待て」


 今にも飛び出そうとするレアナを引き止める。


「どうせ俺達の物になるんだ。なら一緒に行って、三人で片付けた方が手っ取り早いだろ? な、リエン」


「はいっ。私も二〇〇体の部下で援護しますよ」


「……あ、ありがと。正直ちょっと不安だったから、助かるわ」


 レアナは髪をモフモフし、恥ずかしそうに俯く。


 それが何となく庇護欲をくすぐり、俺とリエンが揃ってレアナの頭を撫でた。


「や、止めなさいよ恥ずかしい……!」


「いや、可愛くて」


「かわっ……もう!」


 そっぽの向き方が年相応で、また微笑ましくなるなぁ……。


 ニコニコと和んでいると、レアナが「あ」と何かを思い出したように呟いた。


「そう言えば、【白虎】なんだけど──」

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