【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている
オアイコ
「つ……疲れ、た……」
「もう、モンスタースポットは懲り懲りよ……」
馬車に揺られて二日。その日のうちにモンスタースポットを攻略し、翌日の朝早くに馬車に揺られ、トネルの町に戻ってくることが出来た。
強行軍もいいところだろ、これ……。
げっそりとした顔でハンターギルドに入ると、中の喧騒が一気に静まり、信じられないような目で俺達を見て来た。……何だよ?
「ま、まさか……生きて帰ってきたのか……!?」
「モンスタースポットに送り込まれたって噂だったが……」
「噂でしかなかった、とか……?」
「いやでも、ギルド長が言ってたのを誰かが聞いたって……」
「じゃあ、モンスタースポットを攻略したのか……!?」
「そんな馬鹿な……」
ああ、俺達のことが噂になってるのか……。
まあいいや。さっさと受付を終わらせて、ゆっくり休もう。
クレアの後について行き、受付の前に来る。
「すみません、依頼完了の手続きをお願いします」
「あ、はい。ではプレートをお預かりします」
クレアがブロンズプレートを渡すのを見て、俺も自分のプレートを受付に出した。
そのプレートを机の上の魔法陣のような場所に起き、何か複雑そうな操作をする。
「……はい、ラットコボルト十体の討伐を確認し……んっ!?」
え、何。何で目を見張ってるの?
「す、すみません。機器の故障みたいで……今新しいの持ってきますねっ」
おいおい、しっかりしてくれよ……。
「お、お待たせしました。それでは……は……? こ、これは……故障じゃ、ない……!?」
……さっきから、何をそんなに目を白黒させてるんだ?
「く、クレアさん……討伐数コボルト五〇、ラットコボルト四二、ビーストボア十八、ゼットビー十二、レッドウルフ三……!?」
へぇ……本当に、討伐したモンスターと討伐数が分かるのか。すげーな。
「ゼノアさん……討伐数コボルト七三、ラットコボルト八七、ビーストボア四九、ゼットビー三五、レッドウルフ三六……ワイバーン三!?」
おおっ、思ったより倒してるな。そりゃ、これだけ倒せば俺のレベルも大幅に上がるか。
「……私、頑張ったのね……」
「ああ。俺達は、乗り越えたんだ。……ごめんな、クレア。正直ここまできついとは思わなくて、巻き込んじまって……」
「……いいのよ、もう。強くなれたんですもの……」
いや、もうホント……ちょっと反省するレベル。
クレアと乾いた笑い声を出してると、受付の女の人は慌てたように身振り手振りを混じえて話す。
「あ、あのですねっ、お二人が戻られたら、ギルド長室へ通すように言われているのですが……」
「……それ、今じゃないとダメっすか……?」
取り敢えず今はすぐ寝たい。今寝たい。なんならここでいいから寝させて欲しい……。
疲れという感情以外の全てを失った俺の眼差し──恐らくクレアもだろう──に見つめられ、受付嬢は涙目になってドン引いた。
「で、ですがっ、ギルド長の言伝なので……」
「……分かったっす。クレア、行こう」
「んえぇ〜……シャワー浴びたい、ご飯食べたい、ベッドでゴロゴロしたい〜……」
「目先の快楽を優先して後で殺されるか、もう少し我慢して後で極楽に行くか……俺なら後者を選ぶ」
「……その言い方、卑怯だわ……」
俺だって今すぐぐーたらしたいんだ。我慢してくれよ。
受付嬢の案内で、ギルド長室へと歩いていく。この廊下は、ピッグを無自覚でぶちのめした時以来だ。
廊下を曲がり、曲がり……着いた一番奥の部屋。プレートに汚い文字で『ギルド長室』と刻まれている。
「ギルド長、クレアさんとゼノアさんをお連れしました」
「おっ、来たな! 入れ入れ!」
あぁ……元気なお声だこと……。
部屋の中に、クレア、俺の順番で入ると、ギルド長は酒瓶を手に目を輝かせて椅子に座っていた。
「よく戻った!」
「よく戻ったって……あんたがモンスタースポットなんてもの押し付けて来たんじゃないっすか……」
「別に押し付けてはないぞ。ゼノアのレベルや力を鑑みて、エーテル一〇〇個を使い切れる場所を提案しただけだ。別に行くよう強制したわけじゃない」
……え? 強制して、ない……?
「オレがやったのは、エーテル一〇〇個の準備と、使い切るまで帰ってくるなって言っただけ。効率よく使い切るのにモンスタースポットの場所は教えたが、行けとは言ってないぞ」
クレアの方を見ると、「あ……」って感じで固まっていた。
「……クレアさん?」
「あ、あれぇ……?」
あれぇじゃないよ、あれぇじゃ!?
ジトーっとした目でクレアを睨むと、思いっきり顔を背けた。おい、こっち向け馬鹿。
「まあいいじゃねーか。そのおかげでレベルも上がって、エーテルにも慣れたろ。それに見たところ、クレア嬢もモンスタースポットに巻き込んだんだろ。クレア嬢から漂う雰囲気が、並のブロンズプレートじゃねーからな」
「……まあ、今回お前にも苦労かけたのは俺だし、オアイコってことにしてやる」
ホッと胸を撫で下ろすクレアを横目に、ギルド長に目を向ける。
「それで、そんな事のために俺達を呼んだんじゃないっすよね?」
「察しがいいな」
ギルド長が机の上に置いたあった紙を、俺とクレアに一枚ずつ渡した。
……何だ、これ? 昇、級……?
「クレア嬢、ゼノア。お前達には、オレの一存でシルバープレートの昇級試験を受けてもらう。異論は試験が終わった後に認める」
…………へ?
「もう、モンスタースポットは懲り懲りよ……」
馬車に揺られて二日。その日のうちにモンスタースポットを攻略し、翌日の朝早くに馬車に揺られ、トネルの町に戻ってくることが出来た。
強行軍もいいところだろ、これ……。
げっそりとした顔でハンターギルドに入ると、中の喧騒が一気に静まり、信じられないような目で俺達を見て来た。……何だよ?
「ま、まさか……生きて帰ってきたのか……!?」
「モンスタースポットに送り込まれたって噂だったが……」
「噂でしかなかった、とか……?」
「いやでも、ギルド長が言ってたのを誰かが聞いたって……」
「じゃあ、モンスタースポットを攻略したのか……!?」
「そんな馬鹿な……」
ああ、俺達のことが噂になってるのか……。
まあいいや。さっさと受付を終わらせて、ゆっくり休もう。
クレアの後について行き、受付の前に来る。
「すみません、依頼完了の手続きをお願いします」
「あ、はい。ではプレートをお預かりします」
クレアがブロンズプレートを渡すのを見て、俺も自分のプレートを受付に出した。
そのプレートを机の上の魔法陣のような場所に起き、何か複雑そうな操作をする。
「……はい、ラットコボルト十体の討伐を確認し……んっ!?」
え、何。何で目を見張ってるの?
「す、すみません。機器の故障みたいで……今新しいの持ってきますねっ」
おいおい、しっかりしてくれよ……。
「お、お待たせしました。それでは……は……? こ、これは……故障じゃ、ない……!?」
……さっきから、何をそんなに目を白黒させてるんだ?
「く、クレアさん……討伐数コボルト五〇、ラットコボルト四二、ビーストボア十八、ゼットビー十二、レッドウルフ三……!?」
へぇ……本当に、討伐したモンスターと討伐数が分かるのか。すげーな。
「ゼノアさん……討伐数コボルト七三、ラットコボルト八七、ビーストボア四九、ゼットビー三五、レッドウルフ三六……ワイバーン三!?」
おおっ、思ったより倒してるな。そりゃ、これだけ倒せば俺のレベルも大幅に上がるか。
「……私、頑張ったのね……」
「ああ。俺達は、乗り越えたんだ。……ごめんな、クレア。正直ここまできついとは思わなくて、巻き込んじまって……」
「……いいのよ、もう。強くなれたんですもの……」
いや、もうホント……ちょっと反省するレベル。
クレアと乾いた笑い声を出してると、受付の女の人は慌てたように身振り手振りを混じえて話す。
「あ、あのですねっ、お二人が戻られたら、ギルド長室へ通すように言われているのですが……」
「……それ、今じゃないとダメっすか……?」
取り敢えず今はすぐ寝たい。今寝たい。なんならここでいいから寝させて欲しい……。
疲れという感情以外の全てを失った俺の眼差し──恐らくクレアもだろう──に見つめられ、受付嬢は涙目になってドン引いた。
「で、ですがっ、ギルド長の言伝なので……」
「……分かったっす。クレア、行こう」
「んえぇ〜……シャワー浴びたい、ご飯食べたい、ベッドでゴロゴロしたい〜……」
「目先の快楽を優先して後で殺されるか、もう少し我慢して後で極楽に行くか……俺なら後者を選ぶ」
「……その言い方、卑怯だわ……」
俺だって今すぐぐーたらしたいんだ。我慢してくれよ。
受付嬢の案内で、ギルド長室へと歩いていく。この廊下は、ピッグを無自覚でぶちのめした時以来だ。
廊下を曲がり、曲がり……着いた一番奥の部屋。プレートに汚い文字で『ギルド長室』と刻まれている。
「ギルド長、クレアさんとゼノアさんをお連れしました」
「おっ、来たな! 入れ入れ!」
あぁ……元気なお声だこと……。
部屋の中に、クレア、俺の順番で入ると、ギルド長は酒瓶を手に目を輝かせて椅子に座っていた。
「よく戻った!」
「よく戻ったって……あんたがモンスタースポットなんてもの押し付けて来たんじゃないっすか……」
「別に押し付けてはないぞ。ゼノアのレベルや力を鑑みて、エーテル一〇〇個を使い切れる場所を提案しただけだ。別に行くよう強制したわけじゃない」
……え? 強制して、ない……?
「オレがやったのは、エーテル一〇〇個の準備と、使い切るまで帰ってくるなって言っただけ。効率よく使い切るのにモンスタースポットの場所は教えたが、行けとは言ってないぞ」
クレアの方を見ると、「あ……」って感じで固まっていた。
「……クレアさん?」
「あ、あれぇ……?」
あれぇじゃないよ、あれぇじゃ!?
ジトーっとした目でクレアを睨むと、思いっきり顔を背けた。おい、こっち向け馬鹿。
「まあいいじゃねーか。そのおかげでレベルも上がって、エーテルにも慣れたろ。それに見たところ、クレア嬢もモンスタースポットに巻き込んだんだろ。クレア嬢から漂う雰囲気が、並のブロンズプレートじゃねーからな」
「……まあ、今回お前にも苦労かけたのは俺だし、オアイコってことにしてやる」
ホッと胸を撫で下ろすクレアを横目に、ギルド長に目を向ける。
「それで、そんな事のために俺達を呼んだんじゃないっすよね?」
「察しがいいな」
ギルド長が机の上に置いたあった紙を、俺とクレアに一枚ずつ渡した。
……何だ、これ? 昇、級……?
「クレア嬢、ゼノア。お前達には、オレの一存でシルバープレートの昇級試験を受けてもらう。異論は試験が終わった後に認める」
…………へ?
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