【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている
モンスタースポット
モンスター避けの宝石の向こう側に入ると……一気に空気が重くなったような感覚になった。この感じ、アザトースの森と遜色ないな……。
後頭部がチリつく。気を引き締めて行かないと。
逃がさないようにクレアの手首を掴んで、奥へと進む。まだモンスターは出てこない。
「うぅ……怖いよぅ……帰りたいよぅ……」
「安心しろ、俺がいる」
「あんたのせいでここにいるんだけど!? もがっ……!」
ばっ、声がでけぇ……!
慌ててクレアの口を押さえるが、時すでに遅し。近くの草むらが大きく揺らめき、狼型のモンスターが現れた。
「れ、レッドウルフ……!? シルバープレートのモンスターでも、上位の……!」
「こいつが……」
狼型のモンスターは、スピードが速く魔法で捉えるのは難しいってレインさんが言っていた。
だけど、この手のモンスターに有効な魔法も、教えて貰っている。
「《アース・プリズン》」
まずはレッドウルフの周囲を、土属性の捕獲魔法で囲う。
その上で。
「《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》」
滅多打ち!
名付けて、サンドバッグ大作戦!
数秒後、土煙が晴れると、焼け焦げたレッドウルフの残骸が現れた。
「楽勝」
「怖っ!?」
怖くない。これがレインさん直伝だ。
「せっかく来たんだ。俺もサポートに回るから、クレアも一緒に強くなろうぜ」
「来たくて来たんじゃなくて、拉致られたんだけど……!?」
人聞きの悪い。
「言っておくが、俺も俺で強くなるのに必死なんだ。最低限はサポート出来るとは思うが、クレア自身も強くならなきゃ、多分死ぬぞ」
「……分かったわ。あんた、実は鬼の生まれ変わりね! それか悪魔、もしくは鬼畜!」
人聞きの悪い。
ぶーぶー文句を言うクレアを伴って、奥へ進む。
レッドウルフ相手に、魔力量五〇〇の《アース・プリズン》と、魔力量四〇の《ファイアーボール》を十回使ったから、合計で九〇〇も使った。残りは一五〇〇くらい残ってるけど、念の為エーテルを飲んどこう。
ぐびっ。
「おろろろろろろろ」
「流れるように飲んで吐いてんじゃないわよっ! だ、大丈夫!?」
「平気平気。吐きはするけど慣れたから」
「……そんな慣れ方嫌だわ……」
それは俺も思う。
「それで、ギルド長の言ってたモンスターが大量に出てくる場所ってのは、ここから近いのか?」
「もう少し奥に行ったところだと思うけど……っ!」
クレアが身を屈めたのを見て、俺も身を屈める。
「見える? あれがギルド長の言ってた、モンスタースポットよ」
クレアの指さした先にあるのは……何だろう、紫の石……?
「あの紫の石が何だ?」
「モンスタースポット。別名『召喚石』と呼ばれているあれは、自然発生する石よ。あれに人間が触れると、大量のモンスターが異常発生する。置いとくだけでも一定の時間で強力なモンスターが発生するから、見つけたら破壊するのが常識よ」
「危なっ!? そんな危ないもん何で放置してんのかあの人!?」
「モンスタースポットは、放置すればするほど強いモンスターが湧きやすくなる。……つまり……」
……え……いや、まさか……?
「……ギルド長、自分が強いモンスターと戦いたいからって理由で、あれを放置してるんじゃないよな……?」
「…………」
おいクレアこっち向け!? マジか、マジなのかあの人!?
「……因みにあれを放置してどれくらいだ?」
「……い……」
い? 一日? 一週間?
「い……一ヶ月……」
「バカだ! あの人やっぱりバカだ!」
そんなもん俺にやらせるって、あの人の頭の中どうなってんの!?
「だ、大丈夫よっ。一ヶ月くらいなら、出て来てもシルバープレート最強のワイバーンくらいだって言ってたもの。ゼノアの力なら、ワイバーンなら倒せるとも言ってたわ。ギルド長のお墨付きよっ」
「……本当だな? 嘘じゃないな?」
「ギルド長の人の力を見る目は本物だから、間違いないわ」
……ここまで来ちまったんだ。ここで何もせずに帰ったら、それこそギルド長に殺されかねない……。覚悟を決めろ、俺。
「よ、よし。なら火力の高い俺が、高ランクのモンスターを狩る。クレアは低ランクのモンスターを頼めるか?」
「わ、分かったわ。私だってアルフレッド家としての誇りがあるもの。やってやるわ」
クレアも剣を抜いて、覚悟を決めた顔をする。流石、公爵家の娘なだけあり、肝が座ってるな。
俺とクレアは周囲を警戒しながら、モンスタースポットへ近付く。
「よし……触れるぞ」
深呼吸。一、二、三。
「タッチ」
後頭部がチリつく。気を引き締めて行かないと。
逃がさないようにクレアの手首を掴んで、奥へと進む。まだモンスターは出てこない。
「うぅ……怖いよぅ……帰りたいよぅ……」
「安心しろ、俺がいる」
「あんたのせいでここにいるんだけど!? もがっ……!」
ばっ、声がでけぇ……!
慌ててクレアの口を押さえるが、時すでに遅し。近くの草むらが大きく揺らめき、狼型のモンスターが現れた。
「れ、レッドウルフ……!? シルバープレートのモンスターでも、上位の……!」
「こいつが……」
狼型のモンスターは、スピードが速く魔法で捉えるのは難しいってレインさんが言っていた。
だけど、この手のモンスターに有効な魔法も、教えて貰っている。
「《アース・プリズン》」
まずはレッドウルフの周囲を、土属性の捕獲魔法で囲う。
その上で。
「《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》《ファイアーボール》」
滅多打ち!
名付けて、サンドバッグ大作戦!
数秒後、土煙が晴れると、焼け焦げたレッドウルフの残骸が現れた。
「楽勝」
「怖っ!?」
怖くない。これがレインさん直伝だ。
「せっかく来たんだ。俺もサポートに回るから、クレアも一緒に強くなろうぜ」
「来たくて来たんじゃなくて、拉致られたんだけど……!?」
人聞きの悪い。
「言っておくが、俺も俺で強くなるのに必死なんだ。最低限はサポート出来るとは思うが、クレア自身も強くならなきゃ、多分死ぬぞ」
「……分かったわ。あんた、実は鬼の生まれ変わりね! それか悪魔、もしくは鬼畜!」
人聞きの悪い。
ぶーぶー文句を言うクレアを伴って、奥へ進む。
レッドウルフ相手に、魔力量五〇〇の《アース・プリズン》と、魔力量四〇の《ファイアーボール》を十回使ったから、合計で九〇〇も使った。残りは一五〇〇くらい残ってるけど、念の為エーテルを飲んどこう。
ぐびっ。
「おろろろろろろろ」
「流れるように飲んで吐いてんじゃないわよっ! だ、大丈夫!?」
「平気平気。吐きはするけど慣れたから」
「……そんな慣れ方嫌だわ……」
それは俺も思う。
「それで、ギルド長の言ってたモンスターが大量に出てくる場所ってのは、ここから近いのか?」
「もう少し奥に行ったところだと思うけど……っ!」
クレアが身を屈めたのを見て、俺も身を屈める。
「見える? あれがギルド長の言ってた、モンスタースポットよ」
クレアの指さした先にあるのは……何だろう、紫の石……?
「あの紫の石が何だ?」
「モンスタースポット。別名『召喚石』と呼ばれているあれは、自然発生する石よ。あれに人間が触れると、大量のモンスターが異常発生する。置いとくだけでも一定の時間で強力なモンスターが発生するから、見つけたら破壊するのが常識よ」
「危なっ!? そんな危ないもん何で放置してんのかあの人!?」
「モンスタースポットは、放置すればするほど強いモンスターが湧きやすくなる。……つまり……」
……え……いや、まさか……?
「……ギルド長、自分が強いモンスターと戦いたいからって理由で、あれを放置してるんじゃないよな……?」
「…………」
おいクレアこっち向け!? マジか、マジなのかあの人!?
「……因みにあれを放置してどれくらいだ?」
「……い……」
い? 一日? 一週間?
「い……一ヶ月……」
「バカだ! あの人やっぱりバカだ!」
そんなもん俺にやらせるって、あの人の頭の中どうなってんの!?
「だ、大丈夫よっ。一ヶ月くらいなら、出て来てもシルバープレート最強のワイバーンくらいだって言ってたもの。ゼノアの力なら、ワイバーンなら倒せるとも言ってたわ。ギルド長のお墨付きよっ」
「……本当だな? 嘘じゃないな?」
「ギルド長の人の力を見る目は本物だから、間違いないわ」
……ここまで来ちまったんだ。ここで何もせずに帰ったら、それこそギルド長に殺されかねない……。覚悟を決めろ、俺。
「よ、よし。なら火力の高い俺が、高ランクのモンスターを狩る。クレアは低ランクのモンスターを頼めるか?」
「わ、分かったわ。私だってアルフレッド家としての誇りがあるもの。やってやるわ」
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