【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている
特別許可
「うっ、ううっ……この私が……公爵家アルフレッドの娘が、こんな非人道的扱いを受けるなんて……」
「人聞きの悪いことを言うな」
馬車に揺られて二日。俺とクレアはヨハネの森の近くにある村に来たのだが、さっきからグチグチと煩いな、こいつ。
「ここまで来たんだ。諦めろ」
「頭では諦めてるわよ。ただ私の本能が帰れ帰れ煩いだけ」
それ諦めてないじゃん。
「ねぇ、疲れたわ。今日はこの村で休みましょうよ」
「休めば休むだけ帰るのが遅くなるが、いいのか?」
「……あんた、性格悪いわね……」
「いい性格と言ってくれ」
恨みがましいクレアの視線をスルーして、ヨハネの森へ入る。
ヨハネの森は、アザトースの森に比べて深くなく、日差しも木々に遮られず明るい印象だ。その分モンスターの数も少なく、アイアンからブロンズに上がる際の昇格試験にも使われているらしい。
「ラットコボルト十体の討伐だけど、どうやって十体討伐したのを確認するんだ? まさか、自己申告って訳でもないだろ?」
「当然よ。このプレートは、中に特殊な魔法陣が刻まれていて、そこに個人情報が登録されてるの。悪用出来ないようにね。それに加えて、クエスト情報を保存する魔法陣も刻まれてるわ。モンスターを倒せば、倒したモンスターの魔力を探知して自動加算される。決まった数を倒せば、白く光るって仕組みよ」
へぇ……何とも、便利なもんだったんだな。ただの強さの目印かと思ってた。
「じゃ、クエストの方はサクッと終わらせようぜ」
「そうね。ラットコボルトが湧く場所は有名だから、そこに行きましょ」
クレアが俺の前を歩き、それについて行く。
アザトースの森は高頻度でモンスターが出て来たが、ヨハネの森では殆どモンスターに遭わない。出会ったとしても雑魚のコボルトくらい。不気味なくらい、静かだ。
「なあクレア。モンスターが出て来ないけど、ヨハネの森はこんなもんなのか? アザトースの森では、下手すると十分に一体はモンスターに遭遇したんだけど」
「アザトースの森とヨハネの森を一緒にしないでよ。言っておくけどアザトースの森が異常なだけで、アイアンとブロンズで来る場所は大抵はこんなもんだからね」
えっ、そうなの? そんな所でエーテルを一〇〇本使い切るって、相当大変なんじゃ……。
「心配しなくてもいいわ。事前に、ヨハネの森でもモンスターが大量に湧く場所をギルド長に聞いてきたの。そこに行けば、エーテル一〇〇本も簡単に使い切れるそうよ。大抵は進入禁止なんだけど、特別に許可してくれたのよ」
「お、流石クレア、準備が良いな」
「ふふん。もっと褒め称えなさい」
そのまま和気あいあいと歩くこと暫し。クレアの足が止まった。
「あったわ。あの大きな岩に穴が空いてるでしょ? あそこから、ラットコボルトが一定の感覚で湧き出るの。あ、ほら」
おお、ホントだ……頭がネズミのような形のコボルトが、一気に三体出て来た。
一体は棍棒、一体は斧、一体はボロボロの剣を持っている。コボルトは棍棒だけだから、確かに通常より強そうに見えるな。
「《ファイアーボール》」
《ファイアーボール》を一体のラットコボルトに当てると、爆風と爆熱で残りのラットコボルトも吹き飛んだ。
「おお、お見事ね」
「まあ、ラットコボルト程度なら、こんなもんだろ」
寧ろ、ビーストボアを倒せるのにラットコボルトで手こずるはずがない。
出て来ては倒し、出て来ては倒し……三〇分も経たず、目標の十体を倒すことが出来た。二日も馬車に揺られてたのを考えると、割に合わないような気もするが……そこは考えないようにしよう。
「順当に終わったわね。じゃ、早速ギルド長オススメのスポットに行きましょうか」
「ああ」
またクレアの案内で、森の奥に向かって進む。
……何だか、奥に進むにつれて辺りが薄暗くなってきたな……。
「クレア、こっちで合ってるのか?」
「ええ。この奥はギルド長の命令で、ブロンズプレート以下のハンターは入れないようになってるの。間違いないわ」
……あのギルド長が禁止してるって、相当危険な所なのか……。気を引き締めていこう。
……ん? あれは……モンスター避けの宝石か。これがあるってことは……中のモンスターを、閉じ込めてるみたいだ。
そのモンスター避けの魔石の前に立ち、クレアは顔を真っ青にして振り返ってきた。
「ね、ねえゼノア。ここから先はめっちゃ危険なのよ。ブロンズ以下は入れない……つまり私も入れないの。この意味分かってくれる?」
「ああ。ラッキーだな」
「ちっがうわよ! 帰らせて欲しいって言ってるの! て言うか、許可を貰ってるゼノアはともかくとして、私が入ったらギルド長に怒られちゃうじゃない!」
「拳骨一発で強くなれるなら、安いもんだろ。行くぞ」
「その拳骨一発で死んじゃうわよ!? あ、ちょっ、引っ張らないで! 誰かぁ! 誰か助けてーーーーー!!!!」
「人聞きの悪いことを言うな」
馬車に揺られて二日。俺とクレアはヨハネの森の近くにある村に来たのだが、さっきからグチグチと煩いな、こいつ。
「ここまで来たんだ。諦めろ」
「頭では諦めてるわよ。ただ私の本能が帰れ帰れ煩いだけ」
それ諦めてないじゃん。
「ねぇ、疲れたわ。今日はこの村で休みましょうよ」
「休めば休むだけ帰るのが遅くなるが、いいのか?」
「……あんた、性格悪いわね……」
「いい性格と言ってくれ」
恨みがましいクレアの視線をスルーして、ヨハネの森へ入る。
ヨハネの森は、アザトースの森に比べて深くなく、日差しも木々に遮られず明るい印象だ。その分モンスターの数も少なく、アイアンからブロンズに上がる際の昇格試験にも使われているらしい。
「ラットコボルト十体の討伐だけど、どうやって十体討伐したのを確認するんだ? まさか、自己申告って訳でもないだろ?」
「当然よ。このプレートは、中に特殊な魔法陣が刻まれていて、そこに個人情報が登録されてるの。悪用出来ないようにね。それに加えて、クエスト情報を保存する魔法陣も刻まれてるわ。モンスターを倒せば、倒したモンスターの魔力を探知して自動加算される。決まった数を倒せば、白く光るって仕組みよ」
へぇ……何とも、便利なもんだったんだな。ただの強さの目印かと思ってた。
「じゃ、クエストの方はサクッと終わらせようぜ」
「そうね。ラットコボルトが湧く場所は有名だから、そこに行きましょ」
クレアが俺の前を歩き、それについて行く。
アザトースの森は高頻度でモンスターが出て来たが、ヨハネの森では殆どモンスターに遭わない。出会ったとしても雑魚のコボルトくらい。不気味なくらい、静かだ。
「なあクレア。モンスターが出て来ないけど、ヨハネの森はこんなもんなのか? アザトースの森では、下手すると十分に一体はモンスターに遭遇したんだけど」
「アザトースの森とヨハネの森を一緒にしないでよ。言っておくけどアザトースの森が異常なだけで、アイアンとブロンズで来る場所は大抵はこんなもんだからね」
えっ、そうなの? そんな所でエーテルを一〇〇本使い切るって、相当大変なんじゃ……。
「心配しなくてもいいわ。事前に、ヨハネの森でもモンスターが大量に湧く場所をギルド長に聞いてきたの。そこに行けば、エーテル一〇〇本も簡単に使い切れるそうよ。大抵は進入禁止なんだけど、特別に許可してくれたのよ」
「お、流石クレア、準備が良いな」
「ふふん。もっと褒め称えなさい」
そのまま和気あいあいと歩くこと暫し。クレアの足が止まった。
「あったわ。あの大きな岩に穴が空いてるでしょ? あそこから、ラットコボルトが一定の感覚で湧き出るの。あ、ほら」
おお、ホントだ……頭がネズミのような形のコボルトが、一気に三体出て来た。
一体は棍棒、一体は斧、一体はボロボロの剣を持っている。コボルトは棍棒だけだから、確かに通常より強そうに見えるな。
「《ファイアーボール》」
《ファイアーボール》を一体のラットコボルトに当てると、爆風と爆熱で残りのラットコボルトも吹き飛んだ。
「おお、お見事ね」
「まあ、ラットコボルト程度なら、こんなもんだろ」
寧ろ、ビーストボアを倒せるのにラットコボルトで手こずるはずがない。
出て来ては倒し、出て来ては倒し……三〇分も経たず、目標の十体を倒すことが出来た。二日も馬車に揺られてたのを考えると、割に合わないような気もするが……そこは考えないようにしよう。
「順当に終わったわね。じゃ、早速ギルド長オススメのスポットに行きましょうか」
「ああ」
またクレアの案内で、森の奥に向かって進む。
……何だか、奥に進むにつれて辺りが薄暗くなってきたな……。
「クレア、こっちで合ってるのか?」
「ええ。この奥はギルド長の命令で、ブロンズプレート以下のハンターは入れないようになってるの。間違いないわ」
……あのギルド長が禁止してるって、相当危険な所なのか……。気を引き締めていこう。
……ん? あれは……モンスター避けの宝石か。これがあるってことは……中のモンスターを、閉じ込めてるみたいだ。
そのモンスター避けの魔石の前に立ち、クレアは顔を真っ青にして振り返ってきた。
「ね、ねえゼノア。ここから先はめっちゃ危険なのよ。ブロンズ以下は入れない……つまり私も入れないの。この意味分かってくれる?」
「ああ。ラッキーだな」
「ちっがうわよ! 帰らせて欲しいって言ってるの! て言うか、許可を貰ってるゼノアはともかくとして、私が入ったらギルド長に怒られちゃうじゃない!」
「拳骨一発で強くなれるなら、安いもんだろ。行くぞ」
「その拳骨一発で死んじゃうわよ!? あ、ちょっ、引っ張らないで! 誰かぁ! 誰か助けてーーーーー!!!!」
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