【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている
お願い
「……んっ……ぁれ……?」
お、ようやく目を覚ましたみたいだ。
「お姉さん、大丈夫か?」
「……ひっ……!」
……助けてやったのにその反応は酷くない?
「……ぁ……何だあんたか……」
「何だとは随分な言い草だな」
「ごめんごめん」
お姉さんは起き上がると、自分の体をあちこち確認し始めた。何してるのこの人?
「……おかしい。無防備に寝てたエロ可愛い私の体を前にして、イタズラの一つもしないなんて……」
「……何を心配してるのか分からないけど、お姉さんに毛布を掛けたくらいしか触ってないよ」
「え? ……あ、ありがとう。感謝するわ」
お姉さんは恥ずかしそうにコホンと咳払いをすると、座って背筋を伸ばした。
「改めて、助けてくれてありがとう。助かったわ」
「礼はいらないぞ。助けを求められたら、絶対助けるのが俺の信条なんだ」
「へぇ……カッコイイわね。なら、やっぱりレベルも高いの!? アザトースの森にいるくらいだし!」
アザトースの森? ここの森の名前か?
「高くはないと思う。レベルは10で、職業レベルは2だ」
「……え、10!? 低すぎない!? それ、七歳の子供の平均くらいよ!?」
だって三日前に《魔術師》になったばかりだし……。むしろ、たった三日で七歳の子供くらいに強くなったのを褒めて欲しいくらいだ。
「うぅ……せっかく助けてくれる人を見つけたと思ったのに……」
……そんな落ち込まれると、俺も落ち込むんだけど……。
「それで、お姉さん名前は?」
「……クレアよ。クレア・アルフレッド。クレアって呼び捨てで呼んでちょうだい。私はゼノアって呼ぶから」
! ゼノア……今、ゼノアって呼んでくれた……!?
「も、もう一回言って!」
「え、何いきなりこわ……」
「いいから!」
「……ゼノア?」
お、おお……! 三年間、無能だの無職だのと呼ばれてきたけど、名前で呼ばれるのがこんなに嬉しいことだったなんて……!
「何なの、あんた……」
おい、そんな顔でドン引くな。泣いちゃうだろ。
「……まあ、レベルは低くても《魔術師》であることには代わりない、か……ねぇゼノア。ちょっとお願いが──」
「分かった!」
「──あるんだけど……って早っ!? まだ何も言ってないわよ!?」
「俺を名前で呼んでくれた恩人の頼みごとだ! 全身全霊でお願いを叶える!」
但し俺のやれる範囲でのお願いだけどな!
「は、はは……ど、ども……」
……おかしい。もっと感謝されると思ったのに、めちゃめちゃ引かれてる気がする。
「こ、こほん。話を戻すわ。実は私、ある組織に捕らわれてて、そこから逃げてきたのよ。さっきの奴らは、その組織の人間よ」
「……その組織を潰せばいいのか?」
「違うわ。その組織のボスが、うちの家宝の剣を奪ったの。それを取り返して欲しいのよ」
家宝……? そんなものを持ってるってことは……。
「クレアってお金持ち?」
「……あんた、アルフレッド家の名前を知らないの?」
「知らないけど」
自慢じゃないが、辺境の地にある辺境の村出身だぞ。しかも村での扱いのせいで、内部の情報どころか外部の情報なんて皆無。知らんもんは知らん。
「……ぷっ。あっはっは! そう、私を知らないのね! あっはっはっはっは!」
……なんかいきなり笑い出したんだけど。何この人怖い……。
「ふふふ……ご、ごめんごめん。私のことは気にしないで。ふぅ……じゃあ、そのことを踏まえてお願いするわ。私の家宝を奪い返して」
「おう!」
「……ホント、びっくりするくらい返事が早いわね……でも、ありがとう」
ランランと輝く眩しいくらいの笑み。その笑顔に、少しだけ心臓が高なったのは内緒だ。
「き、気にすんな。……ところで、剣を持ち歩いてたってことは、クレアの【ジョブ】って《剣士》なのか?」
「ええ! 見なさい、この輝かしいステータスを!」
と、自信満々にステータス画面を見せてきた。
ステータス
名前:クレア・アルフレッド
レベル:32
職業:《剣士》
職業レベル:19
物理攻撃力:3080
物理防御力:2800
魔法攻撃力:0
魔法防御力:100
スピード:1900
魔力:0
スキル:なし
「おお! すげー!」
《剣士》だから魔法系のステータスは低いけど、それ以外が軒並み高い!
「ドヤァ、ドヤァ〜、ド〜ヤァ〜〜」
「ごめんウザい」
「うざ……!?」
うん、今のはウザい。
でも……職業レベル、低くない?
「クレア。この職業レベルなんだけどさ……クレア?」
え、何で落ち込んでんのこの人。
「ウザいって……ウザいって、初めて言われた……」
いじいじ、いじいじ。クレア、打たれ弱いな。
「そんなことより」
「そんなことより!?」
「クレア、この職業レベルって奴がレベルより低いけど、これって上がりづらいもんなのか?」
「え? ああ、職業レベルは、いわゆる【ジョブ】の熟練度よ。マックスは確か三〇だったかしら。真面目にこつこつやって行けば、早ければ二〇歳になるころには三〇レベルになるはずだけど。……そんなことも知らないの?」
「ま、まあ色々あって……」
でも、なるほど、熟練度か……ビーストボアを十体倒してレベルが上がったのは、偶然だったんだな。
つまり、魔法を使えば使うほど熟練度が上がっていくってことか。
残魔力量と、魔法の種類によって、撃てる魔法の回数は変わる。魔力量の少ない魔法を撃ちまくるのがいいのか、魔力量の多い魔法をどかんと撃つのがいいのか……色々考えないとな。
「考えごとは終わった?」
「……ああ。大丈夫だ」
「そう。なら早速行きましょう!」
「もうか? もう少し休んでた方が……」
「善は急げよ! こうしてる間にも、あのクソ野郎にうちの家宝を使われてると考えただけで身の毛がよだつわ!」
そんなに大切な剣なのか……それなら、早く取り返してやらないとなっ。
焚き火に水魔法の《ウォーターボール》を掛けて鎮火。火を着けるのも、火を消すのもこれだけで出来るって、本当に便利だな。これからは便利魔法と呼ばせてもらおう。
「準備完了だ。案内してくれ」
「ん、こっちよ!」
お、ようやく目を覚ましたみたいだ。
「お姉さん、大丈夫か?」
「……ひっ……!」
……助けてやったのにその反応は酷くない?
「……ぁ……何だあんたか……」
「何だとは随分な言い草だな」
「ごめんごめん」
お姉さんは起き上がると、自分の体をあちこち確認し始めた。何してるのこの人?
「……おかしい。無防備に寝てたエロ可愛い私の体を前にして、イタズラの一つもしないなんて……」
「……何を心配してるのか分からないけど、お姉さんに毛布を掛けたくらいしか触ってないよ」
「え? ……あ、ありがとう。感謝するわ」
お姉さんは恥ずかしそうにコホンと咳払いをすると、座って背筋を伸ばした。
「改めて、助けてくれてありがとう。助かったわ」
「礼はいらないぞ。助けを求められたら、絶対助けるのが俺の信条なんだ」
「へぇ……カッコイイわね。なら、やっぱりレベルも高いの!? アザトースの森にいるくらいだし!」
アザトースの森? ここの森の名前か?
「高くはないと思う。レベルは10で、職業レベルは2だ」
「……え、10!? 低すぎない!? それ、七歳の子供の平均くらいよ!?」
だって三日前に《魔術師》になったばかりだし……。むしろ、たった三日で七歳の子供くらいに強くなったのを褒めて欲しいくらいだ。
「うぅ……せっかく助けてくれる人を見つけたと思ったのに……」
……そんな落ち込まれると、俺も落ち込むんだけど……。
「それで、お姉さん名前は?」
「……クレアよ。クレア・アルフレッド。クレアって呼び捨てで呼んでちょうだい。私はゼノアって呼ぶから」
! ゼノア……今、ゼノアって呼んでくれた……!?
「も、もう一回言って!」
「え、何いきなりこわ……」
「いいから!」
「……ゼノア?」
お、おお……! 三年間、無能だの無職だのと呼ばれてきたけど、名前で呼ばれるのがこんなに嬉しいことだったなんて……!
「何なの、あんた……」
おい、そんな顔でドン引くな。泣いちゃうだろ。
「……まあ、レベルは低くても《魔術師》であることには代わりない、か……ねぇゼノア。ちょっとお願いが──」
「分かった!」
「──あるんだけど……って早っ!? まだ何も言ってないわよ!?」
「俺を名前で呼んでくれた恩人の頼みごとだ! 全身全霊でお願いを叶える!」
但し俺のやれる範囲でのお願いだけどな!
「は、はは……ど、ども……」
……おかしい。もっと感謝されると思ったのに、めちゃめちゃ引かれてる気がする。
「こ、こほん。話を戻すわ。実は私、ある組織に捕らわれてて、そこから逃げてきたのよ。さっきの奴らは、その組織の人間よ」
「……その組織を潰せばいいのか?」
「違うわ。その組織のボスが、うちの家宝の剣を奪ったの。それを取り返して欲しいのよ」
家宝……? そんなものを持ってるってことは……。
「クレアってお金持ち?」
「……あんた、アルフレッド家の名前を知らないの?」
「知らないけど」
自慢じゃないが、辺境の地にある辺境の村出身だぞ。しかも村での扱いのせいで、内部の情報どころか外部の情報なんて皆無。知らんもんは知らん。
「……ぷっ。あっはっは! そう、私を知らないのね! あっはっはっはっは!」
……なんかいきなり笑い出したんだけど。何この人怖い……。
「ふふふ……ご、ごめんごめん。私のことは気にしないで。ふぅ……じゃあ、そのことを踏まえてお願いするわ。私の家宝を奪い返して」
「おう!」
「……ホント、びっくりするくらい返事が早いわね……でも、ありがとう」
ランランと輝く眩しいくらいの笑み。その笑顔に、少しだけ心臓が高なったのは内緒だ。
「き、気にすんな。……ところで、剣を持ち歩いてたってことは、クレアの【ジョブ】って《剣士》なのか?」
「ええ! 見なさい、この輝かしいステータスを!」
と、自信満々にステータス画面を見せてきた。
ステータス
名前:クレア・アルフレッド
レベル:32
職業:《剣士》
職業レベル:19
物理攻撃力:3080
物理防御力:2800
魔法攻撃力:0
魔法防御力:100
スピード:1900
魔力:0
スキル:なし
「おお! すげー!」
《剣士》だから魔法系のステータスは低いけど、それ以外が軒並み高い!
「ドヤァ、ドヤァ〜、ド〜ヤァ〜〜」
「ごめんウザい」
「うざ……!?」
うん、今のはウザい。
でも……職業レベル、低くない?
「クレア。この職業レベルなんだけどさ……クレア?」
え、何で落ち込んでんのこの人。
「ウザいって……ウザいって、初めて言われた……」
いじいじ、いじいじ。クレア、打たれ弱いな。
「そんなことより」
「そんなことより!?」
「クレア、この職業レベルって奴がレベルより低いけど、これって上がりづらいもんなのか?」
「え? ああ、職業レベルは、いわゆる【ジョブ】の熟練度よ。マックスは確か三〇だったかしら。真面目にこつこつやって行けば、早ければ二〇歳になるころには三〇レベルになるはずだけど。……そんなことも知らないの?」
「ま、まあ色々あって……」
でも、なるほど、熟練度か……ビーストボアを十体倒してレベルが上がったのは、偶然だったんだな。
つまり、魔法を使えば使うほど熟練度が上がっていくってことか。
残魔力量と、魔法の種類によって、撃てる魔法の回数は変わる。魔力量の少ない魔法を撃ちまくるのがいいのか、魔力量の多い魔法をどかんと撃つのがいいのか……色々考えないとな。
「考えごとは終わった?」
「……ああ。大丈夫だ」
「そう。なら早速行きましょう!」
「もうか? もう少し休んでた方が……」
「善は急げよ! こうしてる間にも、あのクソ野郎にうちの家宝を使われてると考えただけで身の毛がよだつわ!」
そんなに大切な剣なのか……それなら、早く取り返してやらないとなっ。
焚き火に水魔法の《ウォーターボール》を掛けて鎮火。火を着けるのも、火を消すのもこれだけで出来るって、本当に便利だな。これからは便利魔法と呼ばせてもらおう。
「準備完了だ。案内してくれ」
「ん、こっちよ!」
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