告白されて付き合うことになった美少女がその日のうちに義妹になった件 〜ところで、おっぱいはいつ揉んでいいの?〜

赤金武蔵

第6話 恋する乙女

「雪和くん、準備出来たー?」


 軽いノック。その後すぐに、咲良の綺麗な声が聞こえてきた。


「ああ、もうちょい……!」


 くそっ、中学ん時は学ランだったから、ネクタイの締め方とか分かんねーよ……!
 スマホで締め方を確認するけど、いまいちよく分からん。何だこれ、何でこここうなってんの?


「雪和くん、入ってもいい?」
「え? あ、ああ。いいよ」


 咲良が扉を開けると、ひょこっと顔を覗かせた。


「もしかして雪和くん。ネクタイの結び方分からない?」
「ぅ……そ、そんな、こと……はい、分からないです」


 鏡に映ってる自分の顔がちょっと赤みを帯びる。うぅ、この歳になってネクタイ結べないって、恥ずい……!
 もたもたと苦戦していると、咲良が扉を大きく開いて中に入ってきた。


「────っ」


 う……ぉ……これは……。


 白く、ノリのついたブレザーに、学年色の鮮やかな赤いリボン。
 淡い桃色のチェック柄のスカート。
 高校指定の黒いソックスには、ワンポイントで桜の刺繍が施されている。


 端的に言って……似合いまくっていて、思考が吹き飛ぶレベル。
 流石県内一可愛い制服と呼ばれている土鍋高校の制服……何だこの可愛さ。どうなってんのそれ。同じ人類とは思えないんだけど……。


 咲良の可愛さに唖然としていると、頬を染めて顔を俯かせた。


「ゆ、雪和くん……そ、そんなに見られると……」
「……ぁっ。ご、ごめんっ」


 そ、そうだよなっ。そんなにじっと見つめたら流石に失礼、だよな。
 俺もそっと目を逸らすと、咲良は3回深呼吸して意を決したように拳を小さく握った。


「ゆ、雪和、くん。……その、えっと……」
「……咲良?」
「え……と……その……な、なら……なら……」


 チラッ、チラッと俺を見ては目を伏せる咲良。ど、どうしたんだ……?


「えっと……ゆ、雪和くんっ。わ、私が……ネクタイ、結んであげようか……?」


 ……ネクタイを?


「え、出来るの?」
「う、うんっ。念の為というか、将来のためというか……ね、ネクタイの結び方、練習してて……」
「そ、そうかっ。なら頼めるか?」
「ま、任せて……!」


 咲良が俺の前に立つと、そっとネクタイに手を掛けた。


 フワッ──。


 ぁ……すげぇ、いい匂い……何だこの花のような安らぐ香りは……。
 すぐ目の前に、真剣な顔でネクタイを結ぶ咲良がいる……なんだよこれ幸せすぎて爆発しそう……!


「ん、しょっと……はいっ、出来たよ」


 鏡の前に立たされると……おおっ、完璧に結ばれてる! 流石咲良、何でも出来るな!


「あ、ありがとう咲良。助かったよ」
「ううん。これくらい何ともないよ」
「……ん? 所で、将来の為ってどういう……?」
「あ、それはね、将来の旦那さ……ま……に……」


 …………え、今、なんて……?
 硬直する俺と咲良。
 次の瞬間、互いに瞬間湯沸かし器の如く顔が真っ赤になった。


「なっ、なななななな何でもない! まだっ、何でもないから!」
「そ、そうだなっ。そうだよな……!」


 そ、それは流石にまだ早すぎると言うか時期尚早と言うか……!


「と、とにかく助かった。ありがとう」
「う、ううん。これくらい……これくらい……あうぅぅぅぅ……!」


 えっ、咲良!? 急にうずくまってどうしたんだ!?


「むりぃ……むりぃ……雪和くんカッコよすぎむりぃ……!」
「……え、あの……そんなリアクションされると、俺も照れるんだが……」
「そ、そうだよねっ。でも……」


 うっ……上目遣い咲良やば……!


「ぁぅ……ね、ねえっ……ぜ、ぜ、ぜ、是非とも……是非ともお写真を……お写真を下さいまし……!」
「しゃ、写真……? それくらい、いいけど……」
「ありがとうございます雪和様!」


 雪和様!? 咲良、キャラ崩壊し過ぎじゃない!?
 プルプルと震える手でスマホを操作する。が、余りにも震えすぎていて全く上手くいっていない。


「さ、咲良。どうせこれからずっと見れるんだから、そんなに慌てなくても……」
「何言ってるの!? 新鮮でフレッシュで初心うぶな雪和くんは今しかいないんだよ!? これはもう永久保存版なんだよ!」
「……さ、さいで……」


 たまに思うが、咲良って興奮しすぎると押しが強すぎるような……。
 咲良がぎこちない手付きでスマホを操作していると、開いている扉から春香さんが顔を覗かせた。


「二人共、準備出来たかしら? あらっ、雪くん似合ってるわね、カッコイイわよ!」
「あ、ありがとう、春香さん」


 逆にそんな真っ直ぐカッコイイって言われると、それはそれで照れる……。


「……咲良、どうしたの?」
「お、お母さん。雪和くんを写真に撮ろうとしてて……」
「それなら、家の前で撮ってあげるわよ。二人のツーショット」


 …………。


 えっ。


「「ツーショット!?」」






「はーい二人共、もっと近くに寄って寄って!」
「お、お母さんっ、もういいから、早く写真撮ってよ……!」
「ダメダメ! せっかく二人のハレの日なんだから、ちゃんと撮らなきゃ!」


 よ、寄ってって……これ以上寄ったら、肩が触れて……!


「むぅ……ほら咲良も、雪くんもっ」


 春香さんが咲良の肩と俺の肩を掴んで、グイッと引き寄せる。
 触れ合う俺と咲良の肩。
 俺より頭一つ分小さいから肩と肩というより、腕と肩だが……それでも、咲良の華奢な肩の感触が伝わってくる……!


「あうあうあう……」
「…………っ」


 震える咲良の肩。
 それを感じた途端、すっと俺の気持ちが落ち着いたのが分かった。


「咲良」
「っ……雪和くん……?」
「今はこんな感じだけど……少しずつ、進んでいこうな。……お互いに」
「……うん、そうだね」


 俺を見上げる咲良が、花のように儚げに笑う。
 それを見て、俺も自然と笑顔が浮かぶと──。


 パシャッ──。


「「あっ」」


 い、今、春香さん……!?


「……うん、うまく撮れたわよ。緊張もしてなくて、二人共いい笑顔ね」


 ……まあ、うまく撮れたなら、それでいいか。


「じゃあ咲良のスマホに写真送っておくから、咲良は雪くんに送ってね」
「わ、分かった、ありがとっ! 雪和くん、学校行こ!」
「あ、ああ。じゃあ春香さん、行ってきます」
「あっ、雪くん待って」


 春香さんは俺に近付いてくると、スマホの画面をそっと見せてきた。
 そこに写っていたのは……全世界の人を虜にするような、咲良の笑顔だった。


「あの子、少なからず君のこと想ってるみたい。……咲良のこと、よろしくお願いします」
「──はい。任せてください」


 俺達のことがバレてるのか、それともバレていないのかは分からない。
 それでも、よろしくと言われたなら……男として、そう言うしかないよな。


「雪和くーん!」
「おーう! じゃ、春香さん、行ってきます!」


 再度春香さんに挨拶をすると、小さく会釈をして咲良の所に走っていった。






「ふふ。恋する乙女ねぇ……我が娘ながら、いい顔してるわ」

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