告白されて付き合うことになった美少女がその日のうちに義妹になった件 〜ところで、おっぱいはいつ揉んでいいの?〜

赤金武蔵

第7話 学年主任

 県立土鍋高等学校。


 特段偏差値がめちゃめちゃ高いわけでも、部活動が盛んでもないが、俺や咲良が今後三年間通い続けることになる高校だ。
 特徴があるとすれば、校舎が小高い丘の上にあり、丘の中腹にかなり広い公園があるくらい。
 その公園の周りには桜の木が並んでいて、今年は4月の上旬だと言うのにまだ満開の桜が咲き誇っている。


 だけど、そこを歩く人達は皆上を見上げず……一人の女の子に釘付けになっていた。


「おぉ〜……満開だねぇ、雪和くん。まだまだお花見も楽しめそうだよ♪」
「……ああ……そうだな」


 暖かな風が咲良の髪を弄ぶ。
 靡く髪を押さえながら、咲良は朗らかな笑みを浮かべて俺を見上げた。






 どうしよう、鼻血出そう。






「雪和くん? 鼻を押さえてどうしたの?」
「持病の花粉症だ、気にしないでくれ」


 こんな子が俺の彼女で、義妹いもうとで、ひとつ屋根の下で同棲してるなんて周りの奴は思ってもみないだろうなぁ。ちょっと優越感。


 暖かな風と桜吹雪の中、微笑みを絶やさなかった咲良が急にもにょっとした顔になった。


「咲良、どうかしたのか?」
「え? な、何が?」
「もにょっとした顔してる」
「どんな顔!?」


 もみもみと頬をこねくり回し、キリッとした表情になる咲良。そんな所も子供っぽくて可愛いけど……あ、ほら。またもにょっとなった。
 取り敢えず写真パシャリ。


「えっ!? 何で撮ったの、何で撮ったの!?」
「いや、もにょ顔が可愛くてつい」
「だからもにょ顔って何!?」
「こんな顔」
「……確かにもにょっとしてる……」
「な?」


 口を尖らせてると言うか、緩んだ口を無理に引き締めてると言うか……とにかくもにょっとした感じだ。


「何か考えてたのか?」
「……えっと……これからずっと、雪和くんと一緒にここを歩けると思うと……えへへ、嬉しくて」


 何この子天使?
 照れ笑いをする咲良。だけどハッとした顔になると、直ぐにムッとなった。いや忙しいな。


「で、でも無断で写真撮るのダメッ」
「俺、咲良の全てを写真に収めたい」
「そ、そ、外でそう言うのも禁止! ダメ、恥ずかしい!」
「なら家では?」
「……だめ……いい……うぅ……!」


 咲良は涙目になり、手で顔を覆った。
 や、やべっ。やり過ぎたか……?


「わ、悪い咲良。悪ふざけが過ぎた」
「うぅ〜……」


 さ、咲良……。






「……ばぁっ」






 ……へ?
 子供をあやすようないないいないばあに、つい思考が固まってしまった。


「ぁ……ご、ごめんね、子供っぽかったかな……?」
「……さ、咲良っ。今のもう一回! 動画、動画撮るから!」
「だ、ダメ! 動画はダメダメのダメ!」


 そんな馬鹿な!? あの咲良を動画に収められないだと!?


「頼む!」
「ダメー!」
「あっ、待て逃げるな!」










「「「「「爆発すればいいのに」」」」」


   ◆◆◆


「全くもう、雪和くんったら……」
「ごめんごめん。……お、着いたな」


 結局、校門前まで走ったところで止まった俺達は、そこで並んで校舎を見上げた。
 数年前に立て替えたばかりという真新しい校舎に、隣接する体育館と格技場。
 学校のフェンスの周囲に生える楓の木には、青々とした葉っぱが繁っている。


「うぅ……緊張してきたよ……」
「そう言えば、咲良は新入生代表の挨拶だっけ? 急がなくていいのか?」
「うん。校門の近くに、目立つ人がいるからその人に声を掛ければいいらしいけど……あ」


 ん?
 咲良の視線が向いてる方を見ると……幼女が腕を組んでふんぞり返っていた。
 うちの学校の制服……だけどリボンの色が緑。つまり三年生だ。幼女すぎてコスプレにしか見えないけど。
 俺達と同じ新入生も、何事かとその子を見ながら学校の中に入っていく。


 ……確かに、目立つなぁ。


 咲良が意を決したように、その子に向かって歩いていった。


「あ、あの……」
「はい? ……あっ、もしかして新入生代表ちゃん!?」
「は、はい。時田咲良です」
「あっはー! 噂通り、いや噂以上の美人さんだ! ちんちくりんの私とは大違い! その上でおっぱい大きくて頭いいって……あれ、もしかして喧嘩売ってる?」
「う、売ってません!」


 ……何だこの人。テンションがやけに高い人だな。


「だよねーっ。冗談冗談! ……おろ? 後ろの人は?」


 ロリが俺を見て首を傾げた。ここは咲良の兄として、威厳ある挨拶をせねば。


「初めまして。咲良の兄の、時田雪和です。よろしくお願いします」
「兄妹! 双子か! 礼儀正しいけど似てないね!」


 はっきり言うなぁこの人。
 まあ本当の兄妹じゃないから、事実っちゃ事実だけど。
 ロリは満足気に頷くと、腕に付けてある腕章を見せるように引っ張り、不敵な笑みを浮かべた。


 その腕章に書いてあるのは──『主任』の文字だ。


「じゃあ私からの自己紹介。土鍋高校一年主任・・・・照崎未来てるさきみらいだよ! よろしくね♪」


 ……が、学年主任!? この人が!?
 ……咲良も高校一年生には見えない美貌だけど……この人もある意味で社会人には見えないな……。


「時田兄くん。今失礼なこと考えてなかった?」
「いえ滅相もない。ただ……なんで先生が、高校の制服を着てるのかなーと……」
「可愛いでしょ♪」


 そ、それだけの理由で……って、完全にコスプレじゃねーか。
 照崎先生(?)の自由奔放さに俺も咲良も唖然としてると、先生は咲良の腕に抱き着いた。


「さあ時田妹ちゃん、体育館に案内するよ! あっ、時田兄くんはまずは教室に行くように! じゃっ!」
「あっ。ゆ、雪和くんっ、また後でー!」


 ……行っちまった……嵐のような人だな……。
 ……まあ、今は言われた通りに教室に向かおう。
 校舎前でクラス分けの一覧表を配ってる先生から紙を受け取ると、自分の名前を探した。
 時田、時田、時田……1年1組か。あっ、咲良も一緒じゃん! こりゃ幸先いいな!
 ウキウキ、ルンルン、ランランとテンションが上がってると……。






「どーなつにーちゃん!」






「おっ、と?」


 な、何だ? 脚に何か巻き付いて……。


「……あれ、君は……ドーナッツ屋にいた……?」
「やっぱり、どーなつにーちゃんだ!」


 ニパッと輝かしい笑顔を見せる女の子。
 ドーナッツ屋の前で100円をあげた子が、まるでコアラのように俺の脚にしがみついていた。

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