外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第1話 恥ずかしすぎるのだわ……

   ◆◆◆




 久々に浮遊馬車で移動すること数日。
 俺はようやく男に戻り、思う存分釣りを満喫していた。
 やっぱり、釣りの感覚からして男の体の方が合ってるな。


 そんな俺の膝の上に座り、クッキーを食べているイヴァロンも嬉しそうにしている。




「うむ、何だかんだ座り心地は今の方がいいのだ。この程よいふにふに感、たまらないのだ」
「ふにふに感言うな」




 え、俺ふにふにしてる?
 太らないよう気をつけてたつもりだったんだけど。
 ……ちょっと痩せようかな。


 脇腹つまみ。
 ……痩せよう。しょぼん。


 若干落ち込んでると、御者席の方でミケとエリオラが何か話してる声が聞こえた。




「ミケ。今回はどこ行くの?」
「色々と悩んだけど、イライザちゃんに縁のある場所に行こうと思って」
「イライザに縁のある……?」




 うん? イライザ?
 この時代、イライザに縁のある場所なんてごまんとあるけど。


 キッチンに立つイライザを見る。




「たびたび〜♪ おかおか〜♪ 旅のお供に最適なジュース〜♪ タ〜ビオ〜カ〜♪」




 変な歌を歌ってた。
 何その歌……。


 俺の視線に気付いたのか、ニコッと笑いかけてきた。




「お兄ちゃん、どうしたのだわ?」
「いや、イライザの縁のある場所に行くらしくて」
「……この世界に私の縁のない場所はないと思うんだけど……」




 言えてるな。


 チラッと外を見る。
 そこには、渡り鳥の群れが編隊飛行で空を飛んでいた。


 場所は標高千五百メートル。
 俺たちが今いるのは、文字通り空だ。


 空を飛べるレニーに、浮遊馬車ならではの組み合わせ。
 むしろ今まで思い付かなかったのが不思議なくらいだ。


 イライザはタビオカミルクティーなるものを持って、俺の隣に座った。




「んーっ、もちゅもちゅなのだわっ」




 ……そのカエルの卵っぽいのが、か?
 俺には分からんが……イライザが幸せならそれでオーケーです。




「あ、見えて来たわよ、皆」
「おー。おっきい」




 ミケの声に、エリオラも感嘆の声を上げる。
 俺も釣り竿を起き、御者席へ向かう。


 すると、山々の間に見えてきたのは巨大な銅像だった。
 しかもあの顔、どこかで見たことがあるような……。




「何なのだあれは。イライザの銅像か?」
「え、私?」
「言われてみれば、イライザっぽいな」
「おーっ、でっかいのだ!」




 いや、でかいなんてもんじゃない。


 俺達が今いる場所が標高千五百メートル。
 だけどあの銅像は、低く見積もっても千メートルのでかさはある。


 そんなイライザの銅像が、右手に本。左手に珠を持っている。
 珠には雷の紋様が刻まれている。恐らく紫電を表しているんだろうな。




「あれがイライザちゃんの功績を称えて作られた建物よ」
「……建物? 銅像じゃなくて?」
「ええ。あの中にはイライザちゃんの縁のある品々が展示されてるの。イライザ記念館。それがあの建物の名前よ」




 へぇ、そんなものまで作られてるのか。
 改めてイライザって、本当に凄い奴だな。




「右手の本が、イライザちゃんの聡明さを。左手の珠が、イライザちゃんの強さを表しているらしいの」
「うぅ、恥ずかしいのだわ……!」




 本人からしてみれば、そんなものを作られたらたまったもんじゃない、か。


 顔を真っ赤にして恥ずかしがってるイライザの頭を撫で、再度イライザ記念館を見る。
 人気の観光スポットなのか分からないけど、ここからでも人がごった返してるのが分かるな。




「さあ皆、そろそろ降りるわよ」




 ミケがレニーを操り、標高が下がっていく。
 流石に記念館の近くには降りれないから、少し離れた場所に着地。


 そこから進むこと十分くらいで、ようやくイライザ記念館までやって来た。




「こうして見ると、本当にでかいな……」
「記念館の最上階は展望台になってるみたい。そこは後にして、まずは中をじっくり回りましょうか」
「うぅ、恥ずかしい……恥ずかしすぎるのだわ……」
「イーラたん、よしよし」
「恥ずかしがることないのだ。余も自分の銅像を作ったとき、誇らしかったぞ」




 イヴァロン、お前自分の銅像なんか作らせてたのか……ちょっと引く。


 記念館の前にはイライザ饅頭、電撃ステーキ、ビリビリジュース、激辛ラーメソなどの屋台が並び。
 イライザなりきりコスプレ施設、電撃体験施設、イライザビリビリ足湯施設もある。


 これは、何と言うか……。




「恥ずかしすぎるのだわあああぁぁぁ!!」




 ですよね!


 顔を真っ赤にして蹲ってしまったイライザ。
 それに気付いた他の観光客が、イライザを見て目を輝かせた。




「あら? あなた、それ自前のコスプレ? 凄くクオリティ高いわねぇ〜!」
「細部まで拘ってるわね……」
「顔もイライザ様そっくりじゃない!」
「ままー、わたしもあれがいいー」
「こらっ。すみません……」


「あぅ……あぅ……あぅ……」




 あ、まずいっ。イライザがパニクってる。




「あーすみません。この子恥ずかしがり屋で。あ、すみません通してくださーい」
「ひゃわっ……!?」




 蹲るイライザをお姫様抱っこし、急いで記念館の中に入っていった。


 イライザ人気、とんでもないな。

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