外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第16話 いやアウトなのじゃ……

「「「「福袋?」」」」
「そう、福袋なのだわ!」




 イライザ、白部屋を飛び出したと思ったら、そんなものを買いに行ってたのか。
 まあ、昨日から何かウキウキしていたみたいだけど……。




「で、福袋って何?」
「えっ、知らないのだわ!?」
「俺、そんなものとは縁遠い生活をしてるからなぁ」
「世捨て人過ぎるのだわ、お兄ちゃん……」




 それほどでも。
 呆れたようにため息をつくイライザ。ご、ごめん?




「ふふふ……見るがいいのだわ! これが私の買ってきた、福袋なのだわー!」




 そうして取り出してきたのは、五つのでかい麻袋。
 中身は見えないな。何が入ってんだ?




「福袋って言うのは、例えば十万ゴールド相当のアイテムや装備が、五千ゴールドで買えるっていう素晴らしいものなのだわ! 内容によっては、もっと凄く高いものが入ってるのだわ!」
「えっ、そんなことしていいのか? 赤字だろ?」
「当然、お店側も色々と考慮して、本当に赤字にはならないようにはしてるのだわ」




 へぇ! そんな太っ腹な制度があるんだな! 知らなかった!




「因みに私が作った制度なのだわ!」
「イライザちゃん、仕事しすぎじゃないかしら……?」




 言えてる。


 イライザが意気揚々と、俺達に袋を渡した。
 種類が違うのか、袋のガラが若干違うな。




「私とお姉ちゃんとミケちゃんは別のお店だけど、ファッション品なのだわ!」
「ファッション品……おしゃれ?」
「そう、オシャレ! お兄ちゃんにも可愛い姿を見せられるのだわ♪」




 へぇ、ファッション品か。
 確かに華やかな三人には、そういうのが似合うかもな。俺も見てみたい。
 ミケとエリオラは袋を受け取り、中を見た。




「わ、わっ! これタコライザーの限定化粧品詰め合わせじゃない!? これ、普通に買うと数百万ゴールドするわよ!?」
「こっちはグレムランの服。確か一着が五十万ゴールド以上する超高級な服が数着も……」
「全部、一万円ポッキリなのだわ!」
「「イライザ(ちゃん)愛してる!」」
「キャーッ♪」




 二人は喜んでるみたいだ。
 まあ、二人とも女の子だからな。服とか化粧品とか、嬉しいものなんだろう。




「よくそんなもの買えたな。競争率高そうだけど」
「シャウナちゃんにお願いして、取っておいてもらったのだわ」




 王族の職権乱用ここに極まれり。
 キャッキャとはしゃぐ二人。
 そんな二人を、俺の膝の上に座っているイヴァロンは興味なさげな顔で眺めていた。




「ふん、服やら化粧やら……軟弱なものだな。余はそんなものでは喜ばんぞ」
「あ、イヴァは高級お菓子詰め合わせなのだわ」
「おかしー!」




 うんうん、イヴァロンはそのままでいてくれ。
 袋を開けると、なんと王都でも超高級品として知られるお菓子が山のように入っていた。




「ふおおぉぉぉ〜〜〜……! こ、これ、全部いいのか!?」
「うん、いいのだわ。イヴァのために買ってきたんだもの」
「ほほほっ、本当だな!? 欲しいと言われても、分けてやらんからな!」




 分かりやすいなぁこいつは。
 笑顔でお菓子を食べるイヴァロン。
 頭を撫でると、満面の笑みで俺に体を預けてきた。




「むふーっ。しあわせなのだぁ〜……」
「イヴァロン、ちょっとくれよ」
「んえぇ〜……むぅ……タナトには特別だからな。はい、あーんだ」
「あーん。んっ、美味いなこれ!」




 流石王都で有名な高級菓子。
 普通の店で売られてる菓子とは比べ物にならない。




「で、俺には何を買ってきてくれたんだ?」
「お兄ちゃんは今女の子だから、女の子っぽいものにしたのだわ。開けて見て」




 女の子っぽいもの……なんだろうか。
 袋を開け、中を見てみると……。




「……アクセサリー?」
「そう! 世界最高峰のアクセサリー職人、スモモさんの作ったアクセサリーの福袋なのだわ!」




 ネックレス、ペンダント、ピアス、イヤリング、ブレスレット、アングレット、リング等々……男でも女でも使えるような作りのアクセサリーが、数多く入っていた。




「お兄ちゃんって男の子のときも女の子のときも、あんまり着飾らないじゃない? なら、アクセサリーでもって思って……だ、ダメだった、かな……?」
「……いや、めちゃめちゃ嬉しいよ、ありがとうなイライザ」
「! えへへ〜……!」




 正直、皆が何をくれても嬉しい。
 別にお世辞とかじゃなくて本心だ。
 俺のことを考えて買ってくれたもの……嬉しくないわけがない。


 試しにネックレスを付けてみる。
 シルバーのチェーンに、青い宝石が嵌められているシンプルなものだが、それが逆に落ち着いていていいかもしれない。




「どうだ、似合うか?」
「お兄ちゃん可愛い! とっても似合うのだわ!」
「そ、そう言われると……照れるな……」




 鏡でアクセサリーをつけた俺を見る。
 ……うん、いいな。まあ男に戻ったら似合うかは分からないけど……凄くいいと思う。


 こいつは、大切な宝物だな。










「ねえイライザ。あの石って、魔石?」
「流石お姉ちゃん。お兄ちゃんがいつどこにいても分かるようにしたのだわ」
「イライザちゃん、それってストーカーじゃ……」
「昔の人は言ったのだわ。──バレなければ犯罪じゃないと」
『いやアウトなのじゃ……』

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