外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第12話 びえええええええんっ!

   ◆◆◆


「まずいわね。タナトのテンションがだだ下がりよ」


 タナトにアイスを買ってあげた私達は、美味しそうに舐めるタナトを横目に小声で話す。何あのにやけ面可愛い。


「あの男のせいなのだわ」


「処すか? ねえ、処すか?」


「イヴァロン、落ち着いて。奴には潰れた睾丸は二度と修復出来ない呪いを掛けたから」


 エリオラちゃん、さりげなく怖いことするわね……グッジョブ。


「でもタナトのテンションが下がったことには変わりないわ。どうにかして楽しんでもらわなきゃ」


「タナトが楽しむことってなんだ?」


「やっぱり釣りなのだわ?」


「それじやいつも通り。女の子として楽しめること」


「「「「うーーーん……」」」」


 思えば、タナトって本当に釣り以外何もないわね。
 ちょっと聞いてみようかしら?


「タナト、タナトが好きなものって何?」


「釣り」


「以外で」


「そんな! 俺から釣りを取ったら何が残るって言うんだ!」


「「「「『…………』」」」」


「何か言って!?」


 いや、だって……ねえ?
 誤魔化すように苦笑い。タナトも察したのか、えぐえぐ泣き出した。可愛い。


「うぅ〜……! 俺だって釣り以外の取り柄くらい、一つや二つ……」


「例えばなんなのだ?」


「…………」


 いや言えないんかい。


「ま、待て。待ってくれ。今出すから。えっとな。………………………………」


「お兄ちゃん……無理しなくていいのだわ。よしよし」


「ち、違うから! 出てこないわけじゃないからぁ!」


 出てきてないじゃない……。
 どうしたもんかと思っていると、エリオラちゃんがタナトの肩を叩いて女神のような微笑みを見せる


「大丈夫。タナトには釣り以外にもいい所がある」


「……例えば?」






「〇〇〇が腕並み」






「うええええええんっ! どうせ俺は釣りと〇〇〇しか取り柄のないクソザコナメクジなんだああああああ!」


 そ、そこまで言ってないわよ?
 ……確かにアレは凄く大きいけど。
 まあそれは置いといて。


「だ、大丈夫よタナト。私はタナトのいい所知ってるわ」


「ぐすん。た、例えば……?」


 うぐっ。涙目上目遣い可愛い……!
 き、気をしっかり保ちなさい私。まずはタナトの機嫌を治さないと……!


「タナト、よく聞いて」


 私はタナトの肩に手を置き、ぱっと思い付いたことを口走った。






「あなた超絶倫じゃない」






「びえええええええんっ!」


 あ、あら? 私、間違ったかしら?


「ミケ、貴様……」


「ミケちゃん、今のはちょっと……」


「気持ちは分かる。でも今のはない」


『ミケも中々に酷いのじゃ』


 事実を言っただけなのに酷い言われよう。ぐすん。
 と言うかタナト大号泣じゃない。女の子になった反動かしら。凄く涙脆いわね。


「うぅ……ミケのばかぁ……」


 あ、ヤバい。嗜虐心をそそられてヤバい。もっといじめたくなる。
 他の皆もそうなのか、妙にソワソワしてるわ。
 でもダメ。ここでタナトをいじめたら、多分本当に嫌われちゃう。
 それは皆も思ったらしく、少し残念そうにしながらもタナトに話し掛けた。


「そうだ、タナト。可愛いもの見に行こ?」


「ぐすっ……かわいいもの……?」


「うん。ぬこカフェ」


「ぬこカフェ……!」


 エリオラちゃんの提案に、タナトの顔が華やぐ。何この子超可愛い。
 ……よく、男の子の方が男ウケする女の子のことを知ってるって言うけど、あれと同じ原理なのかしら。とにかく可愛い。


 泣き止んだタナトは、エリオラちゃんと手を繋いで歩く。私達もその後に続いた。


「百合ップルなのだわ」


「イーラちゃん、そういうのは止めなさい」


   ◆◆◆


 王都には、国営猫喫茶が三つある。
 そのうちの一つが、『喫茶ぬこカフェ』。世界でも珍しい猫を見ることが出来る猫喫茶た。
 本来なら予約がないと入れない店で、今は確か予約が半年待ちだったはず。私でも来たことがない。


 それでも、エリオラちゃんとイライザちゃんが少し話をしただけで、私達はすんなり入れてもらえた。
 多分、シャウナ様の名前を出したり王族との友好を示すペンダントとかを見せたりしたんでしょうね。じゃないとこんなすんなり入れてもらえないし。


 で、念願のぬこカフェ内はと言うと。


「「「「「おおぉ〜……!」」」」」


 見渡す限りの猫、猫、猫。
 しかも全員可愛い。可愛さが飽和状態になってる。
 タナトも目を輝かせて猫を見ていた。よかった、機嫌は治ったみたいね。
 スタッフからルール説明等を聞いていると、一匹の黒猫がタナトに寄って行った。


「あら、珍しいですね。この子はゴマちゃんっていう女の子で、女性には懐かないんですが……」


「へぇ……」


 あ、タナト嬉しそう。
 ゴマちゃんと呼ばれた黒猫は、タナトの膝に乗ると頬に擦り寄った。


「あはっ。こら、くすぐったいぞ」


「フニャン。グルルルル……」


「あははっ、可愛いなお前」


 …………。
 何だろう。あの黒猫、何となくイライラするわね。
 皆も同じことを思っているのが、じとーってした目でゴマちゃんを見る。すると。


「フフン」


 こいつドヤ顔しやがった……!?
 ジェラッ……!


「ん? 皆、どうしたんだ? 皆も堪能しろよ、可愛いぞ」


「う、む……そうだな。今は猫を楽しもう」


「私、猫喫茶初めてなのだわ!」


「むぅ……あとでタナト、喘がせよ」


「加勢するわ、エリオラちゃん」


『程々にな……』

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