外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第6話 完全アウトー

「たなとぉ。すりすり、たなとぉ〜」


「たなとがひとりー、たなとがふたりー……たなと増えたぁ〜」


「あひゃひゃひゃひゃ! おにーちゃんが分身してるのだわぁ〜! あひゃひゃひゃひゃ!」


「おいたなと、ここすわれ! きさまには……ヒック、余のかわいさをとことんせっきょーしてやるのだぁ!」


 …………。
 うん、どうしてこうなった。
 真っ赤な顔で俺に擦り寄るエリオラ。
 とろんとした目で俺を数えるミケ。
 爆笑してるイライザ。
 何故か怒り心頭のイヴァロン。
 そしてリビングに散乱する酒瓶。


 はい、お察しの通りですね。皆さん酔っ払ってらっしゃいます。


 何でこうなったのか……それは数時間前に遡る。


   ◆◆◆


「そう言えば、皆って何歳になるの?」


 リビングでのんびりしていると、ミケがそう切り出した。
 確かに、言われてみれば皆何歳なのか正確には知らないな。
 そんなミケの問いに、皆恥ずかしげもなく答えた。


「封印されてた期間を抜くと、私は五百六十五歳」


「私はお姉ちゃんが封印されてからもこっちにいたから、年齢的には千四百八十二歳なのだわ」


「余も封印されていたが、その期間を除けば八百八十三歳なのだ」


 ワォ。魔族の寿命は長いとは聞いたことがあるが、ここまでとは。
 内心驚いていると、エリオラが続けた。


「魔族は、魔力の大きさや力の強さで寿命が変わる。そして若さも。私は人間換算だと、まだ十五歳」


「私は見た目年齢は二十三歳なのだわ。寿命年齢的には……秘密ということで」


「余は今は八歳くらいだが、元の姿は二十七歳くらいだぞ」


 へぇ……強さと若さが比例するって、何だか不思議な感じだ。じゃあこの三人、ほぼ不老不死じゃないか。


「ところでミケ。何でそんなに質問したんだ?」


「うん。実は芸術の都で、お酒の特売やっててね。つい買い込んじゃって」


「どのくらい?」


「……あれ」


 あれ?
 ミケの指さしたところを見ると……何これ、エリオラが入れるくらいの木の箱が五つあるんだけど。


「……はっ!? これ全部!?」


「ハハッ、イエス」


 ハハッじゃないんだよ、ハハッじゃ!


「どーすんだこれ……」


「まあまあ。料理にも使えるけど、どうせなら皆で飲みたいじゃない。ね?」


 いや、でも……うーん。


「そう言えば、お酒ってあまり飲んで来なかった」


「私も融和で忙しかったから飲んでないのだわ」


「余はよく飲んでいたぞ。タナト、飲むのだ!」


「……ま、今日くらい飲むか」


「「「「いえーーーい!」」」」


   ◆◆◆


 という訳。
 で、皆完全に酔っ払い……エリオラとミケは甘え上戸。イライザは笑い上戸。イヴァロンは怒り上戸になった。


「おい皆、飲みすぎだぞ」


「おにーちゃんは飲んでなさすぎなのだわー! あはははは!」


「そうだぞ、たなと! 飲め! 余のさけが飲めんのか!」


 うざ……。
 それに、別に俺も飲んでない訳ではない。
勢いに任せて酒瓶は三本くらい空けてる。
 だけど、俺も思った以上に酒に強いみたいだ。あんま飲まないから知らなかったけど。
 だがこいつら、圧倒的に飲みすぎだ
 一つの箱に酒が二十本。それなのに、既に三箱も空になってる。


「たなとぉ、そーせーじ食べたい」


「ソーセージ? つまみになかったか?」


「ちがう、たなとのぶっとくてながいそーせーじ」


「はいアウトー。完全アウトー」


 エリオラさん、今の発言はアウトすぎてびっくりしてるよ俺。


「あーたなとのそーせーじねー、おおきーわよねー。輪切りにして焼いたらおいしーのかしら?」


「止めてね? 酔った勢いとかじゃなくマジで止めてね?」


 ミケ怖い……その発想怖い……。


「ふーんだ。どーせわたしたちはしょじょなのだわー。ねーいゔぁー?」


「そうなのだ! 部下どもが『今夜デートなんだ〜』やら『今日勝負下着で〜』やら言ってるのをはたからみている余! かわいそーなしょじょなのだー!」


 じったんばったん。おいこら暴れるな、酒が零れただろ!


「ヒヒン?」


「ん? ああ、レニー。うるさくしてごめんな」


「ブルルルルッ」


 レニーは俺らに近付いてくると、床を濡らしている酒に気付き……ペロ。舐めやがった!?


『……はれぇ……? せかいが傾きますぅ……?』


「ちょ、酔うの早すぎないか!?」


『酔うってなんれすかぁ? あ、このお水おいしー』


 水じゃない! 水じゃないからそれ以上飲むな!


「あはははは! レニーしゃべってる! レニーしゃべってるわ!」


『なんですかミケ〜。いまどきの馬はしゃべりますよぉ!』


「すっごー! いまどきの馬すっごー! あははははははは! ほらレニー! レニーももっと飲んで飲んで!」


『おみずおいしー! おみずおいしー!』


 あぁ……酔っ払いが増えていく……。


「たなと! 余のあいてをしろたなと!」


「あーはいはい、後でな」


「いま! いーまー! いまなのだー!」


「待て待て。まずは皆水を飲んでくれ頼むから」


「いまがいいのだぁ! びええええんっ!」


 こいつ今度は泣き出したぞ!? 怒り上戸の次は泣き上戸か!?


「おにーちゃん! わたしもさっさとしょじょをすてたいのだわ! えっちしたいー!」


「ちょ、待っ! ズボンに手を掛けるな!」


「いーぞイライザちゃん! ぎゃくれだー!」


「ミケこの野郎!」


「私もさんせんっ! 姉妹丼!」


「エリオラお前も悪ノリすんな!?」


「うぇぇぇえええん! たなとぉ!」


「ちょっ、ガチ泣きっすかイヴァロンさん!」


『わぁ、たなとさんがいっぱいぃ〜』


「あーもー! いい加減にしろお前らぁぁぁぁぁあああああ!?」

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